2015年1月22日

『臆病者のための億万長者入門』 橘 玲(著) その4



p.121
資産運用の肝は分散投資だと、どの入門書にも書いてある。どんな優良銘柄でも、一銘柄に全財産を投資するのは愚の骨頂だ。
その通りです。

p.124
資産運用において、「よく知っている」ことにはほとんど意味がない。ベテランの投資家なら、大きな成功は「よくわからず適当に買った株」からもたらされることを知っているはずだ。
同意。
私が保有しているETFも、「よく知っている」会社の株に投資したいという人が買うには抵抗があるに違いありません。たとえばVTIを買うと、間接的に米国株式3772銘柄を分散保有することになるわけですが、そのうち「よく知っている」会社なんて何社あるでしょう。大部分の会社は名前すら聞いたことがないはずです。

p.127
日本の株式市場の時価総額は、中国市場(上海+深?)にも抜かれ、世界3位に後退した。しかしホームバイアスを増長させるさまざまな要因によって、日本の投資家の多くは、世界の株式市場の6%強しかない日本市場という「カゴ」にタマゴのすべてを盛りつづけているのだ。
ホームバイアスは日本人だけでなく人類共通の思考の癖なんですが、自国市場が小さい国民ほどそのリスクが際立ってしまいます。たとえばアメリカ人ならば、米国市場という「カゴ」にタマゴのすべてを盛りつづけたとしても世界の株式市場の35%をカバーしているので、はるかにリスクが小さいでしょう。

いずれにせよ、住んでいる場所、よく行く馴染みの国などの地理的しがらみから完全に離れて、衛星軌道上から地球を眺める視点が重要です。

p.129-130
ヒトの脳は、「損すること」をものすごく嫌うようにできている。そしてこのことが、資産運用の判断を歪める大きな原因になる。
(中略)
この問題の真っ当な回答は、認知の歪みを修正して、損と得を同じように評価することだ。
その通りです。
これ以外にどんな答があるのだろうかと思います。

p.131
だがこの方法は、不可能とはいわないまでも、私たち凡人にはきわめて難しい。
(中略)
ヒトが得よりも損を強く意識するのは、長い進化の過程のなかで脳がそのように作られているからだ。
認知の歪みを修正することがそんなに難しいことでしょうか。

長い進化の過程で形成された認知の歪みのわかりやすい例として、次のような錯視パターンが有名です。
MLadjusts.jpg

この図を見て、「上の線分より下の線分の方が長い」と、脳が感じるままに答える現代人は少ないでしょう。なぜなら、それが錯視であることを「知っている」からです。人類は知ることによってさまざまな認知の歪みを修正してきた実績があります。

利得に鈍感で損失に敏感な認知の歪みもそのうちの一つであり、錯視と違ってまだ多くの人に知られていない段階だから修正が難しいと勘違いされているような気がします。
ただの錯視とは異なり、修正後は修正前よりかなり経済合理的に振る舞うことができそうです。「凡人」には修正できないと諦めてしまうのではなく、その凡人から脱するためにはどうすればいいのか考え続けることが重要だと思います。

(つづく)

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