ここで本書のメッセージをあらためて繰り返しておきます。この中でかろうじて同意できるのは(2)だけで、(1)と(3)は疑問ですね。
(1)日本の財政がたとえ破綻に向かっているとしても、当分は金融資産は普通預金で持っていればいい。
(2)日本の財政が破綻したとしても、手近にある金融商品だけで資産のかなりの部分を守ることができる。
(3)たとえ「海外投資」をする必要があるとしても、ネット銀行の外貨預金でじゅうぶんだ。
(1)がダメな理由としては、インフレ下の「金融抑圧」政策によって銀行預金の実質金利が長期間マイナスになったりすると、預金者はけっこうなインフレ税を払うことになるからです。「インフレになれば金利が上昇する」という法則が成り立つには市場メカニズムが正常に機能している前提が必要ですが、日本の銀行が金融庁の言いなりになっている様子を見ていると、預金金利が市場原理ではなく政府の意図に基づいて決まるとしても全く不思議ではありません。
関連記事:
Kotaroさんのブログより。 定期預金でセミリタイア後のインフレは怖くない インフレになって、「預金金利 soutai40.com インフレ対策として「1年ものの定期預金」はアリだと思う。 私も7年前に書いた記事では、それに近い考えでした。(関連記事: 預金のインフレ抵抗力 ...
橘玲さんのツイートより。 インフレ税で財政赤字を処理するのは、経済学的には最適解なのでしょうが、外貨(Bitcoin)の保有などで富裕層はかんたんに回避できるので、経済格差をさらに広げることなると個人的には思います。 — 橘 玲 (@ak_tch) 2017年7月10日 天文学...
それから、「当分は」普通預金でいいと言われても、その時期がいつ終わるか、終わったのかを認識することが難しいことも挙げられます。この点については既にアマゾンのレビューでわかりやすく指摘してくれている人がいたので、以下に引用します。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1DO996R7B0ZGO/
橘氏によれば破滅は特に「国債ベアは資産を溶かしていくだけ」のところ、その後実際に起ったことを見事に予言しているのが凄いと思います。たとえば2013年当時に日本国債ベアファンドの有力候補だったJGBSは、右肩下がりにじりじりと値を下げた末に、2016年には運用中止になってしまいました。長期投資家としてはこういう長続きしない金融商品が一番困ります。
・「第一ステージ」(国債下落、金利上昇)
・「第二ステージ」(円安、インフレ、国家債務膨張)
・「第三ステージ」(国債デフォルト、IMF管理下入り)
と、一定の時間をかけ順を追って進むといいます。故に各ステージに入ってから行動を起こせば良いと書かれていますが、「今日第二ステージに入りました!」と誰かが教えてくれるわけでもない。「第二ステージ」に入ったように思われたものの、事態は進行せず長期間膠着したり、徐々に金利が戻すということも当然あり得ます。
目下のギリシアを見ても分かるように、来月どうなっているかもよくわからず、流動的に事態が動く中で、一体何を基準に「今日第二ステージに入ったから国債ベアを買う日だ!」と判断するというのでしょう。事態が先へ進まないまま、ずるずると時間が経てば国債ベアは資産を溶かしていくだけです。
もちろん「保険」か「宝くじ」と考えれば、確かにそれもアリかもしれませんが、「保険」にしては「保険料」は高く「保証」は薄い。資産防衛としての機能はそれほど期待できないと思います。「宝くじ」であれば、そもそも単なるギャンブルで、資産防衛でも資産運用でもないはずです。
結局、P159に書かれている世界株インデックス投信やETFをドルコスト法でコツコツ積み上げていくシンプルな手法が一番良いのではないのか?という予てから持っている暫定結論が変わることはありませんでした。
いつか来る国債暴落に備えるにしても、それにピンポイントに賭けるような金融商品に、予兆を正確に捉えてベストなタイミングで投資する、みたいな手法は非常にマニアックで上級者向けだと思います。腕に覚えがある人以外は真似しないほうがいいでしょう。
参考記事:
(つづく?)
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