インフレ税で財政赤字を処理するのは、経済学的には最適解なのでしょうが、外貨(Bitcoin)の保有などで富裕層はかんたんに回避できるので、経済格差をさらに広げることなると個人的には思います。
— 橘 玲 (@ak_tch) 2017年7月10日
天文学的な数字まで膨れ上がった政府の財政赤字を、大増税や大規模な歳出削減で処理するのは政治的に実現困難な茨の道であるのに対し、インフレ税で処理するなら遥かに簡単ですからね。あえて困難な道を選択するより楽な方へ流れる可能性は十分に考えられます。
念のためですがインフレ税とは。
インフレ税とは、実際に税金が課税されるわけではないものの、インフレーション(インフレ)の進行によって民間が保有する貨幣価値が実質的に目減りして、実質的に民間から政府への所得移転が起こることをいいます。日本は長い間デフレが続いたので、インフレ税なんて他人事のように思っている日本人が大多数かもしれません。しかしそれなりの資産を持っている人なら、もしインフレ税が具現化したら自分がいま持っている資産の購買力がどの程度目減りするのか、机上の計算をしておいて損はないと思います。
たとえば来年から毎年10%のインフレが進行していくと仮定します。10年後の物価は2.59倍になります。コンビニやマクドナルドの100円コーヒーが260円になり、ファミレスのワンコインランチが1280円とかになる世界です。これでも「ハイパーインフレ」と呼ばれるようなものに比べれば随分マイルドなインフレです。
日本円でタンス預金している場合、その購買力は1/2.59=0.39倍に目減りします。10年で61%のインフレ税納付。
日本円の定期預金で運用する場合、たとえば1年定期預金の金利がインフレ率に完璧に追従して10%だったとしましょう。複利運用で10年後には2.16倍になりますが、その購買力は2.16/2.59=0.83倍に目減りしています。10年で17%のインフレ税納付。
政府の金融抑圧政策により名目金利がインフレ率よりも低く、5%に誘導された場合。複利運用で10年後には1.48倍になりますが、その購買力は1.48/2.59=0.57倍に目減りしています。10年間で43%のインフレ税納付。
変動金利で比較的インフレに強いと言われる個人向け国債で運用する場合。金融抑圧がなく長期金利がインフレ率に追従したとしても個人向け国債の利率は6.6%にしかなりません。複利運用で10年後には1.67倍になりますが、その購買力は1.67/2.59=0.65倍に目減りしています。10年間で35%のインフレ税納付。利率の計算式が基準金利x0.66に変わって以来、個人向け国債も決して「インフレに強い」金融商品とは言えなくなっていることに注意が必要です。
このように、日本円の現金やそれに近い形の「無リスク資産」には、額面割れをするような価格変動リスクがない安定性と引き換えに、その購買力がじわじわと削られていくリスクがそれなりにあることがわかります。
株式などのリスク資産に付随する価格変動リスクと、無リスク資産に付随するインフレリスクはトレードオフの関係にあり、両者のいいとこ取りをしてどちらのリスクも無くすといったフリーランチはありません。自分がどちらのリスクをどの程度取ることができるかに応じて、適切な資産配分を決めるしかないと思います。
ちなみに私はリスク資産の方に95%以上配分しています。現金、預金は当面必要な分だけしか保有していません。無職無収入のリタイア生活者としては、数年に一度の○○ショックで名目資産残高が暴落するリスクよりも、インフレによって資産の購買力が目減りするリスクが具現化することの方が被害甚大だと思っているからです。
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