2009年4月15日

『食品の迷信』



ここ数年、食の安全に関するメディアの報道と、それを鵜呑みにする消費者たちには漠然とした違和感をもっていましたが、本書を読んでその違和感の原因がはっきりしました。日本に蔓延するフードファディズムです。
 フードファディズム(Food Faddism)という言葉をご存知でしょうか。
 ある特定の食品さえ食べていれば健康になるとか、逆に、特定の食品を食べると健康被害が起こるといった、科学的な根拠に基づかない極端な思考を指す言葉です。
(中略)
 どうでしょう。まさに現在の日本人の多くがフードファディズムに陥っているといえるのではないでしょうか。

特にテレビからの偏狭な情報によって多くの消費者に刷り込まれているイメージの多くは、科学的根拠のない 「迷信」 であると説きます。

本当の常識は次のようなものです。
・アメリカに輸入される食品の違反率は、中国産よりも日本産の方が高い
・中国産ウナギの安全基準は世界トップクラス
・国産表示ウナギの8割は外国産
・食品衛生法の残留基準値は、実際に健康被害が生じる値よりはるかに低く設定されているので、基準値の2倍、3倍はおろか、100倍の数値が出てもなんら人体に影響はないケースも珍しくない
・賞味期限の設定も厳格すぎるため、たとえば90日もつ食品を30日で捨てているケースもある
・天然ものよりも養殖もののほうが安全
・無農薬栽培でも使用してよい農薬が30種類もある
・残留農薬や食品添加物に含まれるよりもはるかに多量の発がん性物質が、日常的に摂取する天然食品にも含まれている

意外に感じることがいくつもあるのではないでしょうか。私も含めて、そういう人は多かれ少なかれテレビの悪影響を受けています。あらためて、テレビというメディアの恐ろしさを実感しました。

2009年4月3日

『だまされないための年金・医療・介護入門』



非常にわかりやすい社会保障問題の入門書で、だまされない自信がある人にもお勧めしたい良書です。

まずは、
わが国が今後迎える少子高齢化は、社会保障財政にとってまさに戦慄すべき意味を持っています。現在でさえ改革に次ぐ改革で国民の社会保障に対する不満は高まり、「もうそろそろ負担増はいい加減最後にしてほしい」と思っているわけですが、実は、今までの負担増などほんの序の口にすぎないのです。今までと同じような負担増(もしくは給付減)を求める改革を繰り返すのであれば、今後は、今までよりも、もっとハイペースかつ大規模な改革を行わざるをえず、しかもその危機的状況はなんと2070年を越えるまで続くことになるのです。
いずれにせよ、現在、与党や、政府の社会保障国民会議が検討している「高福祉・高負担か、それとも、低福祉・低負担か」などという選択肢は幻想にすぎず、そもそも存在していないことは明らかです。私たちが直面しているのは、「低福祉・高負担か、それとも、中福祉・超高負担か」という選択肢なのです。
という現実がはっきりと示されています。人口動態に合わない社会保障制度を存続させようとして、今の若者だけでなく、まだ生まれてもいない世代の未来までも真っ暗にしているのが、この国の悲しい現実です。
少子化対策で社会保障問題が解決するという主張は幻想にすぎません。私たちには、少子高齢化社会と正面から向き合い、少子高齢化とともに生きるしか選択肢はないと、私は思います。少子高齢化を山登りにたとえるならば、この険しい山を避けて迂回するルートはありません。どのようにして山を上りきるか、その方法を必死に知恵を絞って考え抜くしか道がないのです。
いま少子化をくい止めることができたとしても、社会保障問題への効果が出始めるのは30年後ということですから、このような覚悟を決めることが重要だと思います。まあ、そもそも既存の社会保障制度の維持に都合のよい人口分布を人為的に作り出そうという発想自体が本末転倒なのですが。

本書の結論は
① 社会保障制度のすべてを積立方式にすべきである
② 現在の賦課方式からでも十分に積立方式への移行がスムーズに可能である
③ 積立方式への移行をなるべく早く行うことこそが、少子高齢化による悲惨な未来を避ける唯一の道である
となります。
基本的に賛成ですが②についてはやや疑問で、どうしても今の現役世代(20代~50代)が貧乏くじを引くことになるので、スムーズに実行できて政治的にも支持される方法を考案するには相当知恵を絞る必要がありそうです。賦課方式を続けることによる負の遺産が大きくなればなるほど、そのような方法を見つけることがより困難になるという意味で、③の結論が導かれます。

やはり諸悪の根源は賦課方式です。現行制度をそのように設計してしまった政治家、持続可能性を無視してその場しのぎの改革もどきを繰り返してきた政治家の大罪であり、そのような政治家を支持した国民の大罪でもあります。

2009年4月1日

『「信用偏差値」―あなたを格付けする 』



『「信用力」格差社会』と同著者、同時期の出版で、内容も一部重複、という不思議な本です。

前著と重複していない内容のうち、電子マネーの話はほとんど予備知識がなかったので参考になりました。著者の
信用情報の一本化によって、今後日本のカード業界、カード社会は大きく変質していくことが予想される。それとともに、今関心の的となっている電子マネーがこの輪から外れていき、キャッシュレス社会はクレジットカードが主役となって、その信用機能がリードするようになるだろう。
という予想に反して、日本ではクレジットカードがこれ以上普及しない代わりに、電子マネーが主流になっていくのではないかという印象を受けました。

ただ、今の電子マネーって、いろいろあるようなので少し調べてみたのですけど、どれもいまいち使う気になれないです。やっぱり、
現在の電子マネーはほとんどがフェリカのために、コスト高になっている。世界標準ではなく日本独自規格に近いために量産効果を発揮できず、世界標準のタイプA、タイプBに比べると割高になるのだ。例えばフェリカの読取機は十万円するのに、タイプAなら一万円以下で設置できるとも聞く。
これが諸悪の根源でしょうね。

クレジットカードについては前著と同様に、
この信用格差社会では、メインカードは絶対にプレミアムカードを持つべきであり、これはとくに強調しておきたい点だ。
と主張していますが、これにはまったく同意できないです。クレジットカードは現金よりも便利でお得な決済の道具にすぎないので、実質を伴わない「プレミアム」に余分な金を払うのは馬鹿げていると思います。