2009年4月3日

『だまされないための年金・医療・介護入門』



非常にわかりやすい社会保障問題の入門書で、だまされない自信がある人にもお勧めしたい良書です。

まずは、
わが国が今後迎える少子高齢化は、社会保障財政にとってまさに戦慄すべき意味を持っています。現在でさえ改革に次ぐ改革で国民の社会保障に対する不満は高まり、「もうそろそろ負担増はいい加減最後にしてほしい」と思っているわけですが、実は、今までの負担増などほんの序の口にすぎないのです。今までと同じような負担増(もしくは給付減)を求める改革を繰り返すのであれば、今後は、今までよりも、もっとハイペースかつ大規模な改革を行わざるをえず、しかもその危機的状況はなんと2070年を越えるまで続くことになるのです。
いずれにせよ、現在、与党や、政府の社会保障国民会議が検討している「高福祉・高負担か、それとも、低福祉・低負担か」などという選択肢は幻想にすぎず、そもそも存在していないことは明らかです。私たちが直面しているのは、「低福祉・高負担か、それとも、中福祉・超高負担か」という選択肢なのです。
という現実がはっきりと示されています。人口動態に合わない社会保障制度を存続させようとして、今の若者だけでなく、まだ生まれてもいない世代の未来までも真っ暗にしているのが、この国の悲しい現実です。
少子化対策で社会保障問題が解決するという主張は幻想にすぎません。私たちには、少子高齢化社会と正面から向き合い、少子高齢化とともに生きるしか選択肢はないと、私は思います。少子高齢化を山登りにたとえるならば、この険しい山を避けて迂回するルートはありません。どのようにして山を上りきるか、その方法を必死に知恵を絞って考え抜くしか道がないのです。
いま少子化をくい止めることができたとしても、社会保障問題への効果が出始めるのは30年後ということですから、このような覚悟を決めることが重要だと思います。まあ、そもそも既存の社会保障制度の維持に都合のよい人口分布を人為的に作り出そうという発想自体が本末転倒なのですが。

本書の結論は
① 社会保障制度のすべてを積立方式にすべきである
② 現在の賦課方式からでも十分に積立方式への移行がスムーズに可能である
③ 積立方式への移行をなるべく早く行うことこそが、少子高齢化による悲惨な未来を避ける唯一の道である
となります。
基本的に賛成ですが②についてはやや疑問で、どうしても今の現役世代(20代~50代)が貧乏くじを引くことになるので、スムーズに実行できて政治的にも支持される方法を考案するには相当知恵を絞る必要がありそうです。賦課方式を続けることによる負の遺産が大きくなればなるほど、そのような方法を見つけることがより困難になるという意味で、③の結論が導かれます。

やはり諸悪の根源は賦課方式です。現行制度をそのように設計してしまった政治家、持続可能性を無視してその場しのぎの改革もどきを繰り返してきた政治家の大罪であり、そのような政治家を支持した国民の大罪でもあります。

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