2016年10月15日

誰がどんな価格を提示しようと自由

netgeekさんの記事より。
テレビ朝日とサイバーエージェントが共同出資してサービス展開を行っているAbemaTVがとんでもない募集を出して…
netgeek.biz
タレントにはお金を払っているのだから時給数百円ぐらいはケチらずに出すべきであろう。

ケンタッキーの骨でキングギドラを完成させた作品が有名になったのは今年9月のこと。その後、テレビ局がこの通称「ケ…
netgeek.biz
14年かかって身につけた技術を持つプロレベルの職人に対して2週間で1万円の報酬はひどすぎる。

どちらの事例も、提示された条件が気に入らないなら断るなり、応募しなければいいだけの話なのに、何を横からゴチャゴチャ言っているのかと…。特に後者などは、条件をオファーされた本人でもない第三者が、外野からヤジを飛ばして勝手に「炎上」だと騒いでいる姿には違和感しかありません。

彼らが提示した条件がひどすぎると思うのであれば、自分がスタッフを募集したり、職人さんに仕事を発注したりするときに、ひどすぎない報酬とやらを提示すればよいのでは?

「その報酬は(自分から見れば)安すぎる」というような、人それぞれに異なる価値判断を持ち出してきて、その報酬で仕事をオファーすること自体が悪いことのように主張するのは無理があります。

誰がどんな契約条件を提示しようと自由ですし、相手方の意思に反して契約を強制することはできない以上、その行為に善も悪もありません。誰からも合意を得られなかった案件は、ただひっそりと市場から姿を消していくだけのことです。わざわざ外野からヤジなど飛ばす必要はありません。

え? ただのヤジなんだからスルーすればよい? 確かに…。
しかし、こういうヤジがいつしか大合唱となって当事者が萎縮してしまったり、最悪の場合は政府に規制しろとか言い出しかねない国民性なので心配です。例えば最低賃金規制のような、契約自由の原則をぶち壊す悪法が当たり前のように支持されている国では…。

関連記事:
選挙で意志は示された、というような言辞に惑わされないこと。選挙はパッケージ単位で選ぶ抱き合わせ商法だ。袋の中に不良品が入っているの知っていても他のものを取るために仕方なく買うのだ。その上で個別の不良品に文句をいうのは当然の権利だ。これは選挙とは関係ないことだと知って欲しい。 — ...
yumin4.blogspot.jp

2016年10月8日

「もったいなくて○○できない」の罠

正吉さんのブログより。
仙台に住んでるSさんから、「もうすぐ50歳」「今までさんざん我慢して給料上げてきたから今さらもったいないくてサラリーマン辞められない」「この先これ以上お金をもらえる仕事があると思えない」「だから辞めたいけど辞められない」
www.iwannabefree.info
なるほど、仕事が楽しくないのに会社を辞めない理由って、いろいろあるもんですね。自分が辞めるときは全く考えなかったことばかりなので興味深いです。
「この先これ以上お金をもらえる仕事があると思えない」
確かにこの理由はしっかり未来の方向を見たものなので合理的です。リタイアするにはまだお金が足りない状態ならば、最も効率よくお金を稼げる今の仕事を辞めない方が、結果的には早くリタイアできるでしょう。

「今までさんざん我慢して給料上げてきたから今さらもったいなくてサラリーマン辞められない」
問題はこちらです。
おそらく年功序列賃金の傾斜が険しく50代になっても給料が下がらずノンワーキングリッチになれる職場なのでしょうけど、今までさんざん安月給や激務を我慢してきたのはサンクコスト(埋没費用)です。現在から未来に向かってする意思決定に、過去に払ったサンクコストは一切考慮すべきではありません。少しでもサンクコストのことを考慮に入れた瞬間に、その意思決定の合理性は失われます。

参考記事:
ja.wikipedia.org
この中の「例1:つまらない映画を見続けるべきか」に当てはめるなら、「今までさんざん我慢して給料上げてきたから今さらもったいなくてサラリーマン辞められない」という考え方は、「1800円も払ったのだし、既に1時間以上我慢してつまらない映画を見たのだから、今さらもったいなくて途中退出できない」みたいな話になります。

「もったいない」という感情を大事にすることは日常生活でコストを節約するのに役立つことも多い反面、それが過去の事象と結びついてしまうと、人はいとも簡単にサンクコストの罠にハマってしまいます。サンクコストに限らず、行動経済学の知見は知識として知っていなければ人は誰でもそう行動してしまう、という性質のものです。予め知識を身に着け、ここぞという場面では直感や感情に流されずに時間をかけて思考することが重要だと思います。

関連記事:
昨日の記事 の続きです。 サブプライムローン問題に端を発した金融危機を契機に、市場に任せることをやめ、国による統制を強めるべきだという意見がよく聞かれます。国というものが神のような存在で、市場の欠陥をすべて解決してくれるとすれば大歓迎ですが、残念ながら国も市場や企業と同じく強欲で...
yumin4.blogspot.jp

2016年10月2日

仮想通貨は投資の対象になるか?

cubさんのブログより。
ども、日本一、仮想通貨に詳しいインデックス投資家を目指してるcubです。
新しい業界や世界が出来るとそれと同じく新しい業界用語が出てきます。
ビットコインの世界もまさしくそうで、ブロックチャーンな...
www.cubmaga.com
cubさんの意見に概ね同意です。

そもそも通貨とは何のために存在するのかと言えば、決済のためです。モノやサービスとの交換手段として便利だから人々に広く使われているのであり、通貨それ自体に何らかの利益を生み出すメカニズムが備わっているわけではありません。通貨と通貨を交換しあうだけのFXが投資ではなくゼロサムゲームだと言われるのもこのためです。

そして、この性質は日本銀行券や米ドル紙幣のような現物通貨だけでなく、ビットコインなどの仮想通貨にも当てはまると思います。株式や債券のようにプラスの実質リターンが期待できる金融資産とは全くの別物であり、したがって投資の対象になり得ると考えたことはありません。

一方、ビットコインなどの仮想通貨を決済手段として見た場合、世界中どこでも通用するグローバル通貨になれる可能性を秘めていると思います。原則国別に発行されたローカル通貨しか通用しない現状では、国が変わるたびに通貨を両替する手間とコストがかかりますが、グローバル通貨で決済可能になればその問題も過去のものになるでしょう。

「1年で200倍!」みたいな怪しい投機の対象としてではなく、人々の暮らしを豊かにする便利な道具として、グローバルな仮想通貨が健全に普及していくことを期待しています。