2011年3月18日

『人生に失敗する18の錯覚 行動経済学から学ぶ想像力の正しい使い方』 加藤 英明 (著), 岡田 克彦 (著) その2



昨日の記事の続きです。

サブプライムローン問題に端を発した金融危機を契機に、市場に任せることをやめ、国による統制を強めるべきだという意見がよく聞かれます。国というものが神のような存在で、市場の欠陥をすべて解決してくれるとすれば大歓迎ですが、残念ながら国も市場や企業と同じく強欲で、非合理な人間によって運営されていることを忘れてはいけません。
頭のいい人達がやっているから大丈夫ですって? 頭のいい人ほど、より巧妙にその強欲さを隠しながら、自分たちの利益を追求するものです。
(中略)
お役人たちはわれわれの税金を無駄に遣い、とても公僕とはいえないような生態をさらけだしています。今や国は我々の生活を脅かす、信頼できない存在になってしまったといってもよいでしょう。
その通りだと思います。
政府の失敗でよくあるのが、公共事業などにおける「埋没費用の罠」(サンクコスト効果)を利用した事例です。
最近の例でいえば、「かんぽの宿問題」。毎年、50億円の赤字を垂れ流すかんぽの宿の価値は、たとえ1兆円を使って建てられたものであっても、ゼロに限りなく近いかもしれません。それを入札で売却しようとした日本郵政に対して、オリックスグループが約109億円で落札したところ、鳩山邦夫元総務大臣が横ヤリを入れたという問題です。
このニュースが流れたとき、国民の税金で建てた不動産を二束三文で買い叩くオリックスはけしからん企業で、それを阻止した鳩山邦夫は国民のヒーローだと感じた人は、見事に埋没費用の罠にハマっています。
既に使ったお金は現在の価値とは無縁な埋没費用(sunk cost、サンクコスト)であることは、経済学のイロハです。
(中略)
かんぽの宿にどれだけのコストをかけていたとしても、それは現在の価値とはまったく無関係ですから、1兆円が100億円になってもなんら不思議はないのです。
毎年50億円もの赤字を我々の税金から払わなくて済むのだったら、たとえタダでも貰ってくれる企業がいればありがたい話です。そんなものに109億円もの値段をつけてくれたオリックスグループの方こそ、国民のヒーローです。逆に国民に大きな損害を与えた鳩山邦夫の行いは、ほとんど犯罪に近いと思います。
残念なことに民主党政権になって、かんぽの宿は売却しないことで赤字を温存する決定がなされてしまいました。入札の問題かどうか結局わからないまま、国民の負担だけが増えていくことになります。
まったくとんでもない話です。
市場で解決できることにいちいち政府が介入すると、こういう訳のわからない結果になるという悪い見本ですね。

参考記事: 金融日記:かんぽの宿は鳩山邦夫総務相に買ってもらうのはどうだろうか?

(続く?)

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