2011年3月19日

『人生に失敗する18の錯覚 行動経済学から学ぶ想像力の正しい使い方』 加藤 英明 (著), 岡田 克彦 (著) その3



昨日の記事の続きです。

時間割引率の罠のところに出てきた、2歳~4歳の子供を被験者にした「マシュマロ実験」の話がとても面白いです。

目の前にある1個のマシュマロを今すぐ食べてしまうか、しばらく待ってマシュマロをもう1個手に入れるかの選択肢を与えられた子供たち。生まれつき時間割引率の高い子供は、すぐに食べられない未来のマシュマロの価値を低く評価するので前者を選択し、時間割引率の低い子供は後者を選択します。

これだけだと何の意味があるのかわからない実験ですが、面白いのは彼らの二十数年後を追跡調査していること。
時間割引率の高い子供は、将来において、収入も低く、家庭生活も充実していないのです。時間割引率の低い子供と高い子供を比較すると、収入、社会的地位、家庭生活のすべての面において、明らかに前者が優っているということなのです。
ここからひとつの結論が導けます。人生において成功するためには、時間割引率が低くないといけないのです。つまり、将来の楽しみのために、現在我慢するという態度がとても重要だということです。
それだけでなく、この実験結果は、我々が持っている時間割引率の違いは先天的なもので、後天的に修正されることは少ないことも示しているように思います。生まれつき我慢強い性格の人は、親が与えてくれた遺伝子に感謝しましょう。


競馬が大好きなYさんという友人に、累計では競馬をやって儲かっているか聞くと、こう言います。
「そういうことを考えながらやっているのではない。僕は馬が好きなんだよ。それに、ハイリスク・ハイリターンが博打というものだからね。そのうちドーンと返ってくるよ。実はね、絶対勝つ方法を見つけたんだ……」
この言葉の中にはいろいろな種類のバイアスや錯覚が含まれています。
×ハイリスク・ハイリターン
○ハイリスク・マイナスリターン

馬が好きだからやっているというのは「後悔回避」バイアスで、損失を正当化するための言い訳です。

必勝法を見つけたというのは「ギャンブラーの誤り」:
何か決まったパターンがあるかのように錯覚しているだけなのです。


本物のハイリスク・ハイリターンとは、リスクに見合ったプラスの期待値をもつプラスサムゲームのことです。ゼロサムゲームの代表とも言えるFXは、どんなにレバレッジをかけてハイリスクにしても、決してハイリターンにはなりません。
世の中にある投資で、先に示したようなプラスサムの投資は本当に少ないのです。株式投資は、そのような世知辛き世の中に、唯一プラスサムを約束してくれる投資なわけですから、正しく理解し、正しく対峙してほしいと願います。
投資対象がプラスサムかどうかに着目することは確かに重要なポイントですが、株式投資がプラスサムを「約束」はちょっと言い過ぎかもしれません。

人間は、あるがままの自然現象をあるがままに認識するのがとても苦手なようです。自分に都合のよい解釈をしてしまい、勝手な理屈を考えて、そこに多額の資金を投じてしまうのですから。
(中略)
あるがままに認識できない人間は、プラスサムゲームの株式市場でも、余計なことをやってしまって、せっかくのプラスサムを台なしにしている人が多いようです。
(中略)
相場で一儲けしてやろうと、先行きの予想などしながら無駄な売買をするのはやめてください。多くの学者が株式市場を検証し、その動きがランダムであることは既に証明されています。
(中略)
株式市場に対峙するには、株式市場が構造的にプラスサムゲームだということを認識し、資産運用を株式市場で行うと決めたら、余分な売買は繰り返さないことです。
インデックス投資家にとっては釈迦に説法でしょうが、人間が陥りやすい様々な錯覚について学んだ後に読むと、より一層の説得力がありました。

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