2011年7月27日

『ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド』 山崎 元 (著), 水瀬ケンイチ (著)



いろいろな投資系ブログで話題になっていたので読んでみた本です。図書館でも人気になっていて、すっかり周回遅れになってしまいましたが。

著者お二人の紹介記事はこちら。
山崎元氏と私の共著、「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」が本日から正式に発売になります。ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド (朝日新書)山崎 元 水瀬ケンイチ 朝日新聞出版 2010-12-10売り上げランキング : 81Amazonで詳しく見る楽天ブックスで詳しく見る by G-Tools内容をご紹介します。目次は以下のとおり。序章  人はどのようにしてインデックス投資家になるか     ~水瀬ケンイチの投...
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詳しくは、「理論編」で述べたが、「市場が効率的だから、インデックス運用がいい」のではない。「市場が効率的であってもなくても、インデックス運用は有利」なのだ。
そうなんですよね。
その理由は本書p.38「インデックス運用が負けない理由」に詳しく書いてありますが、一言でまとめるなら、世の中のアクティブ運用全体のリターンも(市場平均-コスト)になるからです。

因みに、市場が効率的でないと成立しないのは、「市場価格は常に適正なのだから売買のタイミングを気にする必要はない」という命題の方だと思います。
私もわりと最近まで両者を混同していたような気がします。

アクティブファンドの手数料について。
はっきり言って「暴利」です。(中略)
そもそも、信託報酬が1.5%という段階で、運用商品として「論外」でしょう。検討する必要がない、と断言します。
同感です。
しかも、国内のアクティブファンドに至っては、手数料が下がるどころか昔より高くなっているようです。それでも買う人がいるから商売が成り立っているのでしょうけど。

新聞、雑誌などのマネー関係の特集記事では、「分からないことがあれば、金融機関の担当者にしっかり訊いて解決しましょう」「自分の納得が行くまで、金融機関の窓口で相談してみましょう」といった内容が結論になっている場合がしばしばありますが、これは鴨が漁師の家を訪ねるくらいの間抜けで危険な行為です。
特にお金を持っている年配の方ほど、そういった旧メディアの記事を鵜呑みにしそうで危なっかしいんですよね。その根底には、自分で苦労して情報を集めなくても、専門家(新聞記者や金融機関)に任せておけば正しい情報だけを教えてくれるだろうという、ある種の依存的なメンタリティが共通してあるように思います。

資金の使途別にそれに適した運用方法や運用商品があるというのは、運用商品を売る側がふりまいている、マーケティングのためのフィクション(作り話)です。医療保険、学資保険、個人年金、といったお金の使途を謳った商品の大半は検討する価値さえない代物です(特に、医療保険が不利でしょう)。
肝に銘じておきましょう。

水瀬 山崎さんの言葉で、「運用という作業は、基本的に持っていることであり、売り買いではない」というのがありましたが、実際私もインデックス投資を8年続けてみて、まさにそのとおりだと思います。
山崎 売り買いすることが、投資であり運用だという思い込みを持っている人は多いですね。(後略)
ほんとその通りですね。インデックス運用云々よりも、このポイントこそが「ほったらかし投資術」の肝かもしれません。

株を「やる」という表現が広く浸透しているのも、こういった誤解の表れだと思います。「株やってるんですか?」と聞かれるたびに、「やってるんじゃなくて持ってるだけです」と正直に答えても、「?」顔をする人がほとんどです。

参考記事:
インデックス投資の分野では誰もが認めるNo1ブロガーの水瀬ケンイチさんと、あの山崎元さんの共著「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」が昨日発売になりました。おめでとうございます!
www.lay-up.net
共著者の水瀬さんに本を頂きましたので、早速読ませていただきました! 基本的な構成は、山崎元さんの投資理論、個人投資家:水瀬さんから見た投資、そしてインデックスファンドのファンドマネジャーとの対
kaeru.orio.jp
山崎元氏、水瀬ケンイチ氏共著である『ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド』を読みました。水瀬さん、本をいただきありがとうございます。さて、読んでみての感想です。(知っている人が書いた&いただいた本だと甘口評価をしたくなりますが、そうはできな
www.tsurao.com
週末に『ほったらかし投資術-インデックス運用実践ガイド』(朝日新書)を読みました。 著者は経済評論家の山崎元さんと、梅屋敷商店街ランダムウォーカーというブログを書いている、インデックスブロガーの水瀬ケンイチさんのお二人。 コンパクトな新書サイズながら、インデックス投資に関する...
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以前の記事「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」を予約 からしばらく経過しましたが先週末あたりで読み終えました読み終えてしばらく経過していましたが改めて読み返してみるとつくづく良く内容が練られたバランスの良い仕上がりに気付きます今回は読んだ感想ですほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド (朝日新書)posted with amazlet at 10.12.21山崎 元 水瀬ケンイチ 朝日新聞出版 売り上げランキング:...
toyop.net
こんにちは。インデックス投資アドバイザーの カン・チュンド です。今、話題の本「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」を読了しました。ズバリ、この本には【ふたつの河】が流れています。ひとつは水瀬さんパート。こちらは初心者向けのガイダンス → 実践といった流れです。もう一方の山崎さんパートは、すでにインデックス運用を実践している人に理論的な裏付けを与えてくれる骨太なテキスト、といった印象です。本...
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「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」(山崎元さん、水瀬ケンイチさん共著)を読みました。水瀬ケンイチさんは、ご存じの通りブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」を書かれている方です。(本ブログ左サイドバーにもリンク有)今回は、本は図書館で借りることが多い私が、(事前情報から)価値があると踏んでめずらしく購入しました。以下に読み終えた感想を書きます。...
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アルファブロガーの水瀬ケンイチ氏と経済評論家の
norafp.seesaa.net


2011年7月17日

『そこまで言うか!』 勝間 和代 (著), 堀江 貴文 (著), 西村 博之 (著)



何がきっかけで借りたのかも覚えてないのですが、読んでみたら意外に面白い本でした。
特にひろゆき氏の考え方に共感するところが多くありました。

西村 お金を使うの、ダメなんですよ。嫌いなんですよ。
堀江 なんで?
西村 使った分、稼がないといけないから。缶ジュースも金持ちが飲むものだと思っているから、買わないんです。
まあ、たしかに自販機の缶ジュースは高いので私もめったに飲みませんけどね。
庶民から見れば、ひろゆき氏は金持ちの方に属するんじゃないかと思うのですが、いつまでもこのような金銭感覚を維持しているのがユニークです。いまだにワンルームに住んでいるそうですし。

勝間 無収入生存年数というものがありまして、今と同じ生活を、収入がパタッと途絶えたときに何年間できるのかを計算すると……。
堀江 何年間、生活できるんですか?
勝間 今はまだ20年ぐらいかな……。
あら、これは意外…。あれだけ多くの本を売りまくって印税稼いでも、まだリタイア可能な資産を持っていないなんて。もしかして、稼ぎが増えたときに調子に乗って生活レベルを上げすぎたんじゃないでしょうか。

堀江氏がローンで1200万円のフェラーリを買ったという話にも、
西村 借金してものを買うって、ぜいたくだと思いますけどね。金利だけで年間36万円とか損するわけじゃないですか。
という感想を述べています。これが真っ当な感覚だよなあと。
堀江氏や勝間氏の金銭感覚は、良い意味でも悪い意味でも一般庶民とズレているような気がしました。

2011年7月7日

『半値になっても儲かる「つみたて投資」』 星野 泰平 (著)



いろいろな投資系ブログで話題になっていたので読んでみた本です。

本書の「つみたて投資」とは、ドル・コスト平均法のことです。定額購入法とも言うらしいですが、いずれの用語も本書には出てきません。

まず、「半値になっても儲かる」というのは誤解を招きそうなタイトルです。
半値になるまでの値動きが「下がってから上がる」というV字型(レ字型)になっている場合にのみ利益が出る可能性がある、というだけのことなので。

また、半値になっても儲かる「つみたて投資」 【 カウンターゲーム 】で指摘されているように、「半値になっても儲かる」場合があるということは、「倍値になっても損する」場合もあるということです。p.52の上がってから下がって元値に戻るケースで損をするという説明から、このような可能性を類推できる読者なら問題ないのですが、初心者ならその可能性に気付かないかもしれません。

「儲かる・損する」というのは、一部の慣れている人を除いて、大きな「精神的ストレス」がかかるのです。
(中略)
相場の上下に一喜一憂しないで済む「ストレス抑制効果」は、通常の投資にはない、つみたて投資の大きな魅力です。
そもそも論になりますが、自分のお金をリスクに晒すことに慣れることができず、いつまでも「精神的ストレス」を感じるタイプの人は、投資には向いていないと思います。そういう人はつみたて投資ではなく、つみたて貯金で十分ではないでしょうか。

というのは、つみたて投資であっても20年、30年と続けていくうちに、それまでにコツコツ積み立ててきた自分のお金はすべてリスクに晒されているからです。その頃には相場が大きく下落すると、資産の評価額もガクッと下がるようになるはずです。そのたびに給料の何か月分、何年分が飛んでいったとかいちいち換算して悲しむようでは、投資は無理なんじゃないかと。

つみたて投資は一括投資に比べて、必ずしも投資効率がよいとは限りません。ただ、ストレスが少なく抜群の「安心感」があります。
言い換えれば、「安心感」を得るためには幾らかのコストがかかるということです。

ではそのコストはどの程度かというと、本書p.189のグラフが参考になります。1990年~2010年のデータで検証した結果、アセットアロケーションごとに微妙な違いはありますが、一括投資のリターンはつみたて投資の約1.5~2倍程度のようです。120万円の投資元本だとリターンに25万円~45万円程度の差がつきます。目先の「安心感」を得るためのコストにしては、ずいぶん高いなと感じます。

一括投資も選択できる状況で「安心感」のためにわざわざつみたて投資を選択するのは、十分な蓄えがあるのに高額の生命保険に加入するようなもので、まったく経済合理性がない、というのが本書の検証結果から導かれた私の結論です。

老後に備えていくら貯めればいいのかについては、将来の年金減額も織り込んだ上で
3000万円あれば十分、少なくとも2000万円は準備しておいた方がよいと思います。
と述べています。
もっとたくさん必要だと言って不安を煽るFPなどもいる中で、地に足の着いた現実的な予測には好感が持てます。

第10章は著者自身の証券マンとしての体験記なのですが、非常にユニークで波乱万丈です。
ニスコ入社時には親類に借金までして自社株を大量に購入するなど、リスクの集中も甚だしく、予想通り
なんで、こんな会社の株を大量に買ってしまったのだろう……。
と嘆く結果になります。
投資家として最もやってはいけないことを教えてくれる貴重な体験記だと思いました。

参考記事:
半値になっても損しない投資法 :投資十八番(FC2時代)
半値になっても儲かる「つみたて投資」 ノマドライフ2.0  年収300万円からの資産形成/ウェブリブログ
のらブログ: 思考実験としてのつみたて投資
半値になっても儲かる「つみたて投資」 - インデックス投資日記@川崎
[ 半値になっても儲かる「積み立て投資」メモ ] by 矢向町のインデックス投資家