2017年3月29日

インデックス投資の面白さは節約の面白さに似ている

夢見る父さんさんのブログより。
 ちょっと前にインデックス投資家は投資家かみたいな話しがでて、個人的には何でもかまわないのだけど、インデックス投資は面白くないという結構ありがちな意見がでていました。僕の場合、インデックスに限らず投資の面白さというのが分かりません。  参加しました。下のボタンを励みのために押して頂ければ幸いです。...
yumemirutosan.blog.fc2.com
ちょっと前にインデックス投資家は投資家かみたいな話しがでて、個人的には何でもかまわないのだけど、インデックス投資は面白くないという結構ありがちな意見がでていました。
そういう話があったことを水瀬さんのブログで知って驚きました。投資家の定義については辞書に載っている通り、で終わる話だと思います。

他方、インデックス投資が「面白い」か否かというテーマなら、ひとそれぞれの嗜好や感性の違いによって答が分散するはずです。確かに、インデックス投資家自身も含めて「面白くない」と答える人が多数派になりそうですが。

用語の定義の問題と個人の嗜好の問題を混同するから、話が明後日の方向へ向かうのではないでしょうか。

僕の場合、インデックスに限らず投資の面白さというのが分かりません。
私の場合だと、そもそも投資は一定の目的を達成するための手段にすぎないので、面白いか否かという切り口で捉えたことが今までは無かった、というのが正直なところです。

この機会にインデックス投資の面白さについて初めて考えてみました。

私がインデックス投資を選択している最大の理由は、効率的市場仮説の下では他の投資家を出し抜いて市場平均を上回るリターンをあげ続けるのは難しく、仮にそれができたとしても割に合わないと思うからです。

たとえば学校の期末試験なら、時間をかけてしっかり勉強すれば学年平均以上の点数を取る可能性は非常に高くなりますし、遊び呆けて全く勉強していない人が平均点を取れるなんてことはまず起こりません。

ところが株式投資の場合は全く異なります。市場が非常に効率的で僅かな歪みしかないので、じっくり時間をかけて銘柄の取捨選択を行ってもそれに見合った期待リターンの上昇はないし、普段から遊び呆けている人でもインデックスファンドを買うだけで平均点を取れてしまいます。このような金融市場特有の法則を抜け目なく利用している点が、インデックス投資の面白さだと私は思います。

今では当たり前のように誰もが利用していますが、インデックスファンドは世紀の大発明です。「人生の限られた時間を投資に費やすことなく、ほんの僅かな信託報酬を払えば平均点が取れる」ことのありがたさは計り知れません。学生時代、試験勉強に毎度うんざりしていた(もっと遊びたかった)私からすると、夢のような「お得感」があります。超お買い得。今風に言うと、コスパ良すぎ。

このあたりの感覚は、節約術において効用を下げずにコストを下げる方法が見つかった時の面白さにも通じるものがあると思います。インデックス投資の場合は、効用(期待リターン)を下げることなく、時間や労力を大幅に節約できるのが魅力です。節約術の中でもこれほど効果の高い方法は他に見たことがありません。

2017年3月26日

日経BPの記事「資産1億円ぽっちでリタイアする人の末路」が酷すぎる件

日経BPより。
「1億円程度の資産で引退すると苦境に立たされかねない」と指摘する専門家がいる。本当に安全に引退するには結局、いくらの資金が必要で、どのようなポートフォリオを組むべきなのか。
business.nikkeibp.co.jp
既に多くのブログで取り上げられている大人気の記事です。

それもそのはず、書いてあることがハチャメチャすぎて、ツッコミどころ満載だからです。私は日経BPの会員登録をしていないので2ページまでしか読めませんでしたが、もうそれだけでお腹いっぱい。

いきなり最初の質問で
「1億円程度では、余裕のあるアーリーリタイアは難しい」とのことですが、にわかには信じられません。まず、「仮に今、手元に1億円があり、そのカネを元手に投資商品を購入し、その分配金や配当だけで暮らせ」と言われたら、資産運用のプロとしてどういうポートフォリオを組むか、提示してもらえますか。
「分配金や配当だけで暮らせ」などという無理矢理な条件で縛り上げたポートフォリオの提示を要求していることからして、既に狂気の沙汰なんですが。手元に1億円あるなら、インカムゲインなど追求せずにそれを取り崩して暮らしたって全然構わないんですよ。この質問自体にツッコんでいる人はいなかった気がするので、一応ツッコんでおきます。

玉川:分かりました。まずは1億円のうち3000万円はVXXのショートに使います。
玉川:何もなければ、“理論的には確実”に価値は減衰し、価格は下落して行きます。
投資の世界で「確実」なんて言葉を使う人は、ものすごく怪しいと思います。
リーマンショック級の暴落が来れば恐怖指数は3倍に跳ね上がり、VXXショートなんて一瞬で溶けるのでは? 確率は低いものの、現にリスクを取っているのにどこが「理論的には確実」なのかさっぱり分かりません。

こんなハチャメチャな回答をする玉川陽介氏って一体何者なんでしょう。「手持ち200万円から始める! 低リスク・高利回りの不動産投資」
「勝者1%の超富裕層に学ぶ「海外投資」7つの方法」
「勝ち続ける個人投資家のニュースの読み方」

見るからに怪しいタイトルの著書が並んでいて、いかにもぶっ飛んだことを言いそうな人だろうなと、妙に納得してしまいました。投資のことをまだあまり知らない人がこういう本に手を出すと、その怪しさに気付かないかもしれず、大変危険です。

それから、早期リタイアやそれに必要な資産運用について学ぶなら、日経の記事なんかよりもそれらを実践している個人ブログが山ほどあるので、そちらを読む方がよほど有益です。前回とりあげた年金の記事もウソばっか書いてるし、日経の記事は信用に値しません。

2017年3月15日

団塊世代が国民年金保険料を多めに払った、って本当?

同じ日経の記事より。
 20歳になると年金制度の対象になりますが、国民年金保険料の納付率は6割強にとどまります。厚生労働省の「国民年金被保険者実態調査」によると、滞納理由で多いのは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という回答です。保険料は年間で20万円に迫り…
style.nikkei.com
年金財政には年金積立金という存在もあります。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用し百数十兆円にも上ります。この一部も年金給付に使っています。金額が積み上がったのは「団塊世代が保険料を多めに払ったためで、これがないと現役世代の保険料はもっと上がっていた」との見方があります。
「団塊世代が保険料を多めに払った」とか書いてありますが、人口が多い世代が払う保険料の総額が多くなるのは当然すぎますので、一人あたりの保険料負担も多めだったと言いたいのでしょうか? では、どの世代と比べて「多め」なのか書いてくれても良さそうなものですが…。

気になって少し調べてみたのですが、過去55年間の国民年金保険料とインフレ率の変遷を見る限りでは、ごく最近(2011年~2014年)の例外を除いて、インフレ調整後の保険料の上昇率は常にプラスだったという事実がわかりました。つまり、保険料負担は過去55年間ほぼ一本調子に増え続けてきたということです。

したがって、団塊世代だけでなくどの世代においても、年上世代よりは多めに払っているし、年下世代よりは少なめに払っていることになります。「保険料を多めに払っている」というのは、むしろ現役世代の方から団塊世代に向かって言うべきセリフであって、日経の記事のように団塊世代が現役世代に向かってドヤるためのセリフではありません。

参考までに、調べたデータを置いておきます。
当初の月額100円は現在の物価に換算してもたったの444円です。現在の保険料と比較して、負担の格差が35倍以上というとんでもないレベルに拡大していることがお分かりいただけるかと思います。

保険料を納付する月分月額物価指数月額(現在価値)保険料上昇率(実質)
昭和36年4月~昭和41年12月\10022.5\444?
昭和42年1月~昭和43年12月\20027.4\72964.2%
昭和44年1月~昭和45年6月\25029.7\84115.3%
昭和45年7月~昭和47年6月\45033.9\1,32657.7%
昭和47年7月~昭和48年12月\55039.6\1,3884.6%
昭和49年1月~昭和49年12月\90049.2\1,82731.7%
昭和50年1月~昭和51年3月\1,10055\1,9989.3%
昭和51年4月~昭和52年3月\1,40060.2\2,32316.3%
昭和52年4月~昭和53年3月\2,20065\3,38145.5%
昭和53年4月~昭和54年3月\2,73067.5\4,04019.5%
昭和54年4月~昭和55年3月\3,30069.9\4,71616.7%
昭和55年4月~昭和56年3月\3,77075.5\4,9885.8%
昭和56年4月~昭和57年3月\4,50079.2\5,67613.8%
昭和57年4月~昭和58年3月\5,22081.3\6,41413.0%
昭和58年4月~昭和59年3月\5,83082.8\7,0349.7%
昭和59年4月~昭和60年3月\6,22084.7\7,3364.3%
昭和60年4月~昭和61年3月\6,74086.4\7,7936.2%
昭和61年4月~昭和62年3月\7,10086.7\8,1815.0%
昭和62年4月~昭和63年3月\7,40086.6\8,5364.3%
昭和63年4月~平成元年3月\7,70087\8,8423.6%
平成元年4月~平成2年3月\8,00089\8,9801.6%
平成2年4月~平成3年3月\8,40091.7\9,1511.9%
平成3年4月~平成4年3月\9,00094.8\9,4843.6%
平成4年4月~平成5年3月\9,70096.3\10,0636.1%
平成5年4月~平成6年3月\10,50097.4\10,7707.0%
平成6年4月~平成7年3月\11,10097.9\11,3275.2%
平成7年4月~平成8年3月\11,70097.6\11,9765.7%
平成8年4月~平成9年3月\12,30097.6\12,5905.1%
平成9年4月~平成10年3月\12,80099.2\12,8902.4%
平成10年4月~平成11年3月\13,30099.9\13,3003.2%
平成11年4月~平成12年3月\13,30099.5\13,3530.4%
平成12年4月~平成13年3月\13,30098.6\13,4750.9%
平成13年4月~平成14年3月\13,30097.7\13,5990.9%
平成14年4月~平成15年3月\13,30096.6\13,7541.1%
平成15年4月~平成16年3月\13,30096.3\13,7970.3%
平成16年4月~平成17年3月\13,30096.3\13,7970.0%
平成17年4月~平成18年3月\13,58095.9\14,1462.5%
平成18年4月~平成19年3月\13,86096.2\14,3931.7%
平成19年4月~平成20年3月\14,10096.3\14,6271.6%
平成20年4月~平成21年3月\14,41097.8\14,7190.6%
平成21年4月~平成22年3月\14,66096.4\15,1923.2%
平成22年4月~平成23年3月\15,10095.6\15,7793.9%
平成23年4月~平成24年3月\15,02095.4\15,728-0.3%
平成24年4月~平成25年3月\14,98095.4\15,687-0.3%
平成25年4月~平成26年3月\15,04095.8\15,6840.0%
平成26年4月~平成27年3月\15,25099\15,389-1.9%
平成27年4月~平成28年3月\15,590100\15,5741.2%
平成28年4月~平成29年3月\16,26099.9\16,2604.4%



2017年3月14日

国民年金はすべての世代で払い損はない、って本当?

日経の記事より。
 20歳になると年金制度の対象になりますが、国民年金保険料の納付率は6割強にとどまります。厚生労働省の「国民年金被保険者実態調査」によると、滞納理由で多いのは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という回答です。保険料は年間で20万円に迫り…
style.nikkei.com
厚生労働省は14年の財政検証に基づき、年金の世代間の給付と負担の差を試算しています。様々な経済状況下で各年齢の人が平均余命まで生きたと仮定し、満額払った保険料に対して受け取る年金の総額を出しました。「国民年金はすべての世代で保険料の払い損はないという結果でした。半分が税金で支払われているからです」とみずほ総合研究所の堀江奈保子上席主任研究員は指摘しています。
厚生年金は労使折半だからお得という誤解とよく似た話で、加入者が直接負担する保険料しか計算に入れていないことが誤りなのです。「半分が税金で支払われているから」その分は計算に入れなくていいのですか? そんなわけないでしょう。その税金は誰が払っているのでしょうか…。

さらに国民年金の場合は国庫負担のうちのざっくり半分は国債で将来世代へ先送りしているので、先行世代がその分だけ得をするのは当たり前とも言えます。もし仮に税負担も含めて試算した結果が「すべての世代で払い損はない」だったとしても、ここで言う「すべての世代」とは、先送りされた借金を負担せずに逃げ切れる世代だけを指しています。「将来世代も含めて払い損になることはない」とは一言も言っていないわけです。逃げ切りラインがどこになるかの予想は難しく、自分が将来世代の方に含まれない保証などどこにもありません。

このように、負担を見えにくくして先送りする一方で受益は見えやすく強調することで、誰もが得をするような錯覚へ誘導するのは、公営制度設計における常套手段です。厚労省の試算が結論ありきなのは当然として、民間企業の「上席主任研究員」ともあろうお方がそれを知らないはずはなく、何らかの意図があって全力で年金制度をヨイショしているようにしか見えません。

将来世代をも巻き込む莫大な税負担がなければ支えきれないような欠陥制度を、何とかして擁護しようと必死で屁理屈をこねくり回すのは、そろそろやめにしましょう。

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p.206-207 国民年金は、所得にかかわらず60歳まで定額を積立て、65歳から定額の年金を受け取る。こうしたシンプルな仕組みのため、国民年金の加入者は電卓を叩くだけで損得を計算できる。 (中略) 現在の制度がこのまま継続するならば、男性は払った掛け金の1.4倍、女性は2.1倍...
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