2016年10月8日

「もったいなくて○○できない」の罠

正吉さんのブログより。
仙台に住んでるSさんから、「もうすぐ50歳」「今までさんざん我慢して給料上げてきたから今さらもったいないくてサラリーマン辞められない」「この先これ以上お金をもらえる仕事があると思えない」「だから辞めたいけど辞められない」
www.iwannabefree.info
なるほど、仕事が楽しくないのに会社を辞めない理由って、いろいろあるもんですね。自分が辞めるときは全く考えなかったことばかりなので興味深いです。
「この先これ以上お金をもらえる仕事があると思えない」
確かにこの理由はしっかり未来の方向を見たものなので合理的です。リタイアするにはまだお金が足りない状態ならば、最も効率よくお金を稼げる今の仕事を辞めない方が、結果的には早くリタイアできるでしょう。

「今までさんざん我慢して給料上げてきたから今さらもったいなくてサラリーマン辞められない」
問題はこちらです。
おそらく年功序列賃金の傾斜が険しく50代になっても給料が下がらずノンワーキングリッチになれる職場なのでしょうけど、今までさんざん安月給や激務を我慢してきたのはサンクコスト(埋没費用)です。現在から未来に向かってする意思決定に、過去に払ったサンクコストは一切考慮すべきではありません。少しでもサンクコストのことを考慮に入れた瞬間に、その意思決定の合理性は失われます。

参考記事:
ja.wikipedia.org
この中の「例1:つまらない映画を見続けるべきか」に当てはめるなら、「今までさんざん我慢して給料上げてきたから今さらもったいなくてサラリーマン辞められない」という考え方は、「1800円も払ったのだし、既に1時間以上我慢してつまらない映画を見たのだから、今さらもったいなくて途中退出できない」みたいな話になります。

「もったいない」という感情を大事にすることは日常生活でコストを節約するのに役立つことも多い反面、それが過去の事象と結びついてしまうと、人はいとも簡単にサンクコストの罠にハマってしまいます。サンクコストに限らず、行動経済学の知見は知識として知っていなければ人は誰でもそう行動してしまう、という性質のものです。予め知識を身に着け、ここぞという場面では直感や感情に流されずに時間をかけて思考することが重要だと思います。

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