著者のような医者こそ本当の名医として評価されるべきだ、という感想を持ちました。
病気は次の3つのカテゴリーに分けられます。
カテゴリー1 医者がかかわってもかかわらなくても治癒する病気
カテゴリー2 医者がかかわることによってはじめて治癒にいたる病気
カテゴリー3 医者がかかわってもかかわらなくても治癒に至らない病気
医者が日常診療で遭遇する疾患の70%~95%が、カテゴリー1にあたるそうです。そして、医療業界にとっては、そのような患者は薄利多売に貢献する「おいしい患者」なのだとか。
最近よく聞くようになった「メタボ」も、カテゴリー1の代表選手です。
メタボリックシンドロームを一言で言うと、ただの食べすぎ、運動不足で、それ以上でもそれ以下でもありません。
メタボは病気の範疇にすら入らないのかもしれません。
こういう生活習慣を改善しないまま医者に何とかしてもらおうと考えることは、かえって事態を悪化させるようです。
特に薬については、
薬を処方するということは、すなわち毒を盛るということです。
このように、基本的には毒であることが繰り返し強調されています。薬が効くということは、「毒をもって毒を制す」ことにほかならないわけです。
医者ができることは、ただ、患者さんが治るきっかけを作るだけです。
適切なきっかけを作ってあげ、あとは患者さんの自己治癒力が病気を治すのです。
(中略)
風邪をひいて、不要な解熱剤を用いたり、抗生物質をのんだりすると、自分で治す力が著明に妨げられます。そのあげくが、治りが遅くなったり、治りが悪くなったりしてしまうのです。医者が余計なことをしないほうが、風邪はずっと治りがいいのです。
ちょっと風邪の症状が出ただけで医者にかかったり、早めに風邪薬を飲んだりする人がいますが、やめたほうが良さそうです。
要するに現在の診療報酬システムでは、できるだけ毒を少なくして治癒へ導こうとする医師の努力は報われることがなく、何も考えないでただただ毒をたくさん投与した医師が報われるという非常におかしなシステムなのです。しかも毒性のある薬の処方が多いほど、多く点数加算されるのです。
医者の言いなりになって薬を飲むべきでない理由がよくわかりました。
とは言え、報われない努力はしないという医者たちを責める気にはなれません。患者のためにならない医療行為にインセンティブを与えるという歪んだ設計の制度下で、経済合理的に行動しているだけですからね。医者も現行の国民皆保険制度における社会主義的な価格統制の犠牲者と言えるでしょう。
健康にいいと言われたら何でも取り入れ実践する人たちを、世間では健康オタクと呼びますが、意外にも、慢性疾患で相談に見える方には、健康オタクが多いのです。
まあこれは、健康オタクほどすぐ医者に相談したがる傾向があるのかもしれないので、健康オタクと健康の逆相関については何とも言えないと思いますね。
非常にシンプルですが、「自分のやりたいことをやる」「嫌なことはできるだけやらないように工夫する」「あまり我慢をしない」、これが意外にも自己治癒力を高める強力な手段なのだということを、数多くのがん患者さんやがんサバイバーの方たちから教わりました。
これはそれほど意外ではありませんでした。「病は気から」とよく言われていますし。
衰えを感じる年になってからの我慢、忍耐、根性、がんばり、競争などはすべて身体には悪く作用します。また、義理、約束、責任感、義務なども同じく、自己治癒力を低下させます。
本書で「衰えを感じる年」とは、40歳以降のことです。「40歳を過ぎたら~」のような記述が随所に出てきます。若い時には何歳で衰えを感じるかなんてあまり想像できませんでしたが、今は40歳で分ける意味というのが実感としてよくわかります。
肉体的には明らかに下り坂という現実は冷酷でも、そのような歳になって、上に列挙されたストレス要因からは離れているという事実をポジティブに捉えたいと思います。
少し極端な言い方になりますが、病院の中だけで医者と会っている限り、みなさんにとって有用なことは何もないと思います。医者が患者と本音でつき合えるほどの余裕を持つことを、病院という舞台は執拗に拒むのだということを、みなさんにはぜひ知っていただきたいのです。
なぜそうなってしまうのかは、本書を読めばよくわかります。
主治医は「薬をしっかりとのまなくてはいけない」と言うが、親しい医者に相談してみたら「ここだけの話だけど、この薬は確かに効果は抜群だけど、のみ続けるとがんになる可能性がけっこう高いので、どちらかといえば服用は勧めない」と言われたというのです。ちなみにこの場合、主治医も親しい医者も、いずれも某国立大学病院の教授です。
ここだけの話にしないでほしいと、いつも思います。
初めて聞く人にはショッキングですが、こういう話はわりとよく見聞きします。
本当に親しい間柄でないと本音で物を言ってはいけないのが、この業界の不文律のようです。近親者に医者がいてくれたらいいのにと思いました。
我々も、本音でものが言えない医者の言いなりになるのではなく、それなりの付き合い方に変えていかなければならないでしょう。
参考記事:
お金学 9割の病気は自分で治せる(岡本裕著)