以前読んだ『クラウド・コンピューティング』では、あくまでも1ユーザーの視点から、「全体的に目新しい要素は少なく、やはりバズワードにすぎないのかなという印象です。」という暢気な感想を書きました。
しかしユーザーから見てサービスの価格がタダ同然にまで安くなっていくありがたい変化は、本書のようにビジネスの視点から見ると、まさに「衝撃」と呼ぶにふさわしい変化でもあることがよくわかりました。
いずれにしろ、クラウド・コンピューティング時代の主役はあくまで「サービス」である。ユーザーはプロバイダと事前に合意したサービスレベルが維持されている限り、そのサービスがどのような技術や製品を使って提供されているかを知る必要はない。サービスプロバイダは、サービスレベルを維持できる範囲でできるだけ安価なハードウェアや無料のソフトウェアを使おうとするでしょうから、今まで比較的高価な製品を売ってきたベンダー、SIerなどに向けられる需要が激減していくと思われます。Windowsという高価なOSが過去のものになる日も遠くないかもしれません。
われわれが日々利用している水道や電力などの公益サービスがどこのメーカーの機械、設備を使って供給されているかを気にする人はほとんどいない。同じように、クラウド・コンピューティングが普及したといえる時代になれば、どのベンダーの製品を使ってサービスが提供されているかということは誰も気にしなくなるはずだ。
筆者はクラウド・コンピューティング時代の到来が、IT業界に地殻変動ともいえる大きな変化をもたらすことになると確信している。このパラダイムシフトに対応できない企業はクラウド・コンピューティングが拓く新たな時代に生き残ることは難しくなるということを、改めて強調しておきたい。昔は花形だったITで飯を食っていくのは非常に大変な時代になることは間違いなさそうです。IT業界への就職や転職を検討している人は読んでおくべき一冊だと思います。