2018年4月30日

海外投資はしなくてもいい? その3

前回の続きです。
そしてこれは強調しておきますが、資産運用に成功する黄金律は、「金融機関が熱心に勧誘するウマそうな話はすべて無視する」ことです。
同意。
ただ、資産運用に「成功する」黄金律と言うよりは「失敗しない」ための鉄則かなと思います。イロハのイですね。

一度この鉄則を知ってしまえば、その1で述べたような「ろくでもない金融商品を薦められるまま買う」カモネギ投資家からは、めでたく卒業となります。以後は自分の頭でしっかり考え、好きなだけ海外投資をすれば良いと思います。もちろん、自分の頭で考えた結果、普通預金一本でいいと思ったのならそれもあり。

日本人は、リスクに対してあまりにも無防備です。この国には、「国家破産」のリスクを過大に見積もって、自分がだまされるリスクのほうが大きくなってしまったひとがたくさんいます。
確かにそういう人も少なくはないのでしょうが、逆に国家破産のリスクを過小に見積もって何の備えもしていない日本人の方が、その何倍も多くいるような気がします。彼らは民間人に騙されるリスクには敏感かもしれませんが、国家に騙されるリスクにはなぜか鈍感だったりします。

参考ツイート:
投資の世界は自己責任ですから、だまされてすべてを失ったとしても、誰も助けてくれないばかりか同情すらしてもらえません。
かと言って、何の備えもしないまま国家破産が到来し、国家権力によってすべてを奪われたとしても、誰も助けてくれないのは同じですよね。もちろん財産権を侵害した政府が悪いのだから自己責任ではないけれど、どんなにそれを訴えたところで救済されることは無いでしょう。投資しないと決めることも含めて、自己選択の結果はすべて自分に降りかかってきます。決して「投資の世界」だけが特別なわけではないと思います。

それと同時に、日本人はあまりにも「合理性」を軽視しています。
(中略)
もちろん合理性は幸福な人生を約束しませんが、その一方で、(ギャンブルで一発当てるようなことを別にすれば)市場では合理的な行動からしか富がもたらされないことも確かです。
同意。
だからこそ、橘氏には従来通り、合理主義を貫徹する本を書いてほしかったと思うわけです。合理的な行動ができない一般大衆に向かって「海外投資はしなくてもいい」みたいな投げやりなメッセージを発する本ではなくて。

2018年4月25日

海外投資はしなくてもいい? その2

前回の続きです。
ここで本書のメッセージをあらためて繰り返しておきます。

(1)日本の財政がたとえ破綻に向かっているとしても、当分は金融資産は普通預金で持っていればいい。
(2)日本の財政が破綻したとしても、手近にある金融商品だけで資産のかなりの部分を守ることができる。
(3)たとえ「海外投資」をする必要があるとしても、ネット銀行の外貨預金でじゅうぶんだ。
この中でかろうじて同意できるのは(2)だけで、(1)と(3)は疑問ですね。

(1)がダメな理由としては、インフレ下の「金融抑圧」政策によって銀行預金の実質金利が長期間マイナスになったりすると、預金者はけっこうなインフレ税を払うことになるからです。「インフレになれば金利が上昇する」という法則が成り立つには市場メカニズムが正常に機能している前提が必要ですが、日本の銀行が金融庁の言いなりになっている様子を見ていると、預金金利が市場原理ではなく政府の意図に基づいて決まるとしても全く不思議ではありません。

関連記事:
Kotaroさんのブログより。 定期預金でセミリタイア後のインフレは怖くない インフレになって、「預金金利 soutai40.com インフレ対策として「1年ものの定期預金」はアリだと思う。 私も7年前に書いた記事では、それに近い考えでした。(関連記事:  預金のインフレ抵抗力 ...
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橘玲さんのツイートより。 インフレ税で財政赤字を処理するのは、経済学的には最適解なのでしょうが、外貨(Bitcoin)の保有などで富裕層はかんたんに回避できるので、経済格差をさらに広げることなると個人的には思います。 — 橘 玲 (@ak_tch) 2017年7月10日 天文学...
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それから、「当分は」普通預金でいいと言われても、その時期がいつ終わるか、終わったのかを認識することが難しいことも挙げられます。この点については既にアマゾンのレビューでわかりやすく指摘してくれている人がいたので、以下に引用します。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1DO996R7B0ZGO/
橘氏によれば破滅は

・「第一ステージ」(国債下落、金利上昇)
・「第二ステージ」(円安、インフレ、国家債務膨張)
・「第三ステージ」(国債デフォルト、IMF管理下入り)

と、一定の時間をかけ順を追って進むといいます。故に各ステージに入ってから行動を起こせば良いと書かれていますが、「今日第二ステージに入りました!」と誰かが教えてくれるわけでもない。「第二ステージ」に入ったように思われたものの、事態は進行せず長期間膠着したり、徐々に金利が戻すということも当然あり得ます。

目下のギリシアを見ても分かるように、来月どうなっているかもよくわからず、流動的に事態が動く中で、一体何を基準に「今日第二ステージに入ったから国債ベアを買う日だ!」と判断するというのでしょう。事態が先へ進まないまま、ずるずると時間が経てば国債ベアは資産を溶かしていくだけです。

もちろん「保険」か「宝くじ」と考えれば、確かにそれもアリかもしれませんが、「保険」にしては「保険料」は高く「保証」は薄い。資産防衛としての機能はそれほど期待できないと思います。「宝くじ」であれば、そもそも単なるギャンブルで、資産防衛でも資産運用でもないはずです。

結局、P159に書かれている世界株インデックス投信やETFをドルコスト法でコツコツ積み上げていくシンプルな手法が一番良いのではないのか?という予てから持っている暫定結論が変わることはありませんでした。
特に「国債ベアは資産を溶かしていくだけ」のところ、その後実際に起ったことを見事に予言しているのが凄いと思います。たとえば2013年当時に日本国債ベアファンドの有力候補だったJGBSは、右肩下がりにじりじりと値を下げた末に、2016年には運用中止になってしまいました。長期投資家としてはこういう長続きしない金融商品が一番困ります。



いつか来る国債暴落に備えるにしても、それにピンポイントに賭けるような金融商品に、予兆を正確に捉えてベストなタイミングで投資する、みたいな手法は非常にマニアックで上級者向けだと思います。腕に覚えがある人以外は真似しないほうがいいでしょう。

参考記事:

(つづく?)

2018年4月20日

海外投資はしなくてもいい? その1

橘玲公式サイトより。
ほとんどのひとは、「高金利の通貨は得だ」とか、「毎月分配は高配当のほうがいい」とか、「これまで儲かっていたのだからこれからも儲かるはずだ」とかの、ファイナンス理論的にはなんの意味もない(というか完全に間違っている)知識によって投資の判断をしているのです。
わかります。
知識の質も量も、人によってかなりの格差があるのは事実です。

こうして私は、「海外投資はしなくてもいい」という本を書かざるを得なくなりました。
なるほど、ここまで読んでやっと彼の真意がわかりました。
要約すると、

「(君たちはリテラシーが低すぎて、どうせろくでもない金融商品を薦められるまま買うことになるのだから)海外投資はしなくてもいい」

と言っているのです。この前提条件が隠れたままだと、正直何言ってるのかサッパリわかりませんでしたが、これなら別に間違ってはいません。

逆に言えば、自分で優れた金融商品を選び取るリテラシーを備えた投資家は、「海外投資はしなくてもいい」なんて言葉を額面通りに捉えてはいけません。それなりにリスク許容度があって既に国内投資をしている投資家ならば、投資対象を全世界に広げる海外投資はポートフォリオの最適化につながります。

(つづく)

関連記事:
前回の続きです。 衰退国家の日本で最後に生き残るのは「一握りの投資家」だけと知れ=鈴木傾城 | ページ 2 / 3 | マネーボイス 日本は手遅れだ。どんな名政治家が出てきても、どんな提言が為されても、どんな少子化対策が実行されても「遅すぎる」ということに気付かなければならない。...
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2018年4月16日

自己防衛おじさんの発言が正論すぎる件



この男性の動画キャプチャーや似顔絵が一時期ツイッターにもよく流れてきました。どれもネタキャラ的な扱いだったので興味は湧きませんでしたが、J-CASTニュースの直撃インタビュー記事を読んでガラッと印象が変わりました。

テレビの街頭インタビューで口にした一言がきっかけで、インターネット上で一躍「時の人」となった男性がいる。2018年3月初旬から注目を集めたこの男性は、ネットで「自己防衛の人」「自己防衛おじさん」などと呼ばれている。きっかけは、JR新橋駅のSL広場で行われた報道番組のインタビューで、年金問題について、「お金いっぱい欲しいんだったらさぁ。年金あてにしちゃダメじゃない?自己防衛。投資。
www.j-cast.com
「だって、皆うっすら分かっていますよね。今の年金システム、この先もうダメになるって。じゃあ、我々自身が考えて、どうしたらそれだけに頼らずに生きていけるかを考えるっていうのが大事でしょ。それが、『自己防衛』です。投資もそうだし、日本脱出もあくまで手段の一つということ」
特にここ、100%同意。
動画では最初の言葉が「お金いっぱい欲しいんだったらさぁ」から始まっているので、なにやら軽薄で胡散臭いイメージが先行しがちでしたが、インタビューで掘り下げられた彼の考えを読んでいくと正論すぎてぐうの音も出ません。変な先入観を抱いてすみませんでしたと平謝りしたいですね。

今後の年金受難時代においては、何らかの自己防衛手段を持っておくことの重要性はどんどん増してゆくことでしょう。特に若い世代ほど自己防衛する人としない人の差が顕著になるのではないかと。そこにまだ気付いていない多くの日本人に少しでも気付きの機会を与えた彼の功績は大きいと思います。

関連記事:
吊ら男さんのブログより。 年金不信から「年金保険料払わないで生活保護でもいいや」という選択肢は悪手 : 吊られた男の投資ブログ (インデックス投資) 老齢年金と比べて生活保護費が魅力的に見えることもある年金財政の先行きは怪しい2004年に自・公連立政権(特に公明党)が「年金100...
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日経の記事より。 国民年金は誰が負担? 半分は税金、保険料未納なら損|マネー研究所|NIKKEI STYLE  20歳になると年金制度の対象になりますが、国民年金保険料の納付率は6割強にとどまります。厚生労働省の「国民年金被保険者実態調査」によると、滞納理由で多いのは「保険料が高...
yumin4.blogspot.jp
70歳は「ほぼ現役」65歳「完全現役」…自民PTが案(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース 70歳までを「ほぼ現役世代」とし、この年齢まで働ける社会にすべきだ――。65歳以上 - Yahoo!ニュース(朝日新聞デジタル) headlines.yahoo.co.jp このよ...
yumin4.blogspot.jp

参考ツイート:

2018年4月10日

暗号通貨の「海外送金」って何だろう?

今度は財務省が何やら奇妙なことを言い出したようです。
152: 2018/04/05(木) 08:22:40.13 ID:NE3bk68w財務省は、ずさんな管理が問題視される仮想通貨を使った海外送金のルールを整備する。3千万円相当分超の支払いを当局に報告する基準を明確にする。 これ昨日の日経ニュースなんだけどバイナンス使ってる俺らはどうなるんだ?
coinmatomesokuho.blog.jp

法定通貨の場合は、100万円を超える海外送金を税務署に報告する義務があることは既によく知られていますが、暗号通貨の場合にも同様の義務を課したいらしいです。

このニュースを見たとき、「暗号通貨の海外送金?なにそれ?」と思いました。

財務省の役人たちは、暗号通貨のアドレスも法定通貨の銀行口座と同じようなものだと考えているのでしょうか? 確かに、取引所の管理下にあるアドレスについては銀行口座とよく似ています。国内取引所のアドレスは国内口座、海外取引所のアドレスは海外口座とみなす、ここまでは簡単です。しかし暗号通貨の場合、取引所の管理下にないアドレスを誰でも無数に生成できます。国内取引所で円を暗号通貨に替え、取引所の管理下にないアドレスへ送金した場合、これが海外送金か否かどうやって判別しますか?

インターネット上に広く分散されたブロックチェーンによって記録される暗号通貨のアドレスには、そもそも国籍などありません。したがって、暗号通貨の送金に国内も海外もないのです。

13: 2018/04/05(木) 13:58:12.24 ID:fXXiTur8
金融庁は知ってか知らずか、仮想通貨、暗号通貨の特性を無視して、意図的に既存の金融商品と同じように扱おうとしてるよね。ズレてるんだよなあ
159: 2018/04/05(木) 11:11:37.20 ID:ftX4IGk/
英数字の羅列でしかないアドレスでどうやって海外とか判別するのか
一度本人確認の無い取引所を経由してしまえば追跡は完全に不可能
一連のトンチンカンな規制報道を見てると、金融庁の役人も記者も何一つ理解できてないな
今回は金融庁じゃなくて財務省ですが、まったく同感。
インターネットやブロックチェーンなどの技術革新によってボーダレス化が進んでいるのに、役人たちの発想は30年前から何一つ変わらずドメスティックなままで、規制の上にさらなる規制を上塗りして事業者や消費者を混乱に陥れるばかりです。もう見慣れた光景ではありますが、こういうとき逆に無駄な規制を廃止するという方向の発想が一切でてこないのが、もう絶望的だと思います。

関連記事:
こんなニュースが話題になっています。 金融庁、海外の仮想通貨取引所「Binance」に対し警告 金融庁は3月23日、香港の仮想通貨取引所「Binance」(バイナンス)に対し、日本居住者を相手方として無登録状態で仮想通貨交換業を行っているとして警告を発表した。 www.itme...
yumin4.blogspot.jp

2018年4月5日

人生をRPGに喩えるなら

namake_taio (@NamakeTaio) さんのツイートより。

人生をRPGに喩えるのは面白いですね。

早期リタイアして無職な人は、まだゲームをクリアしてないのに冒険や狩りをやめて勇者から遊び人に転職し、町中でのんびりしてる感じのプレーヤーでしょうか。町の外に出るとしても安全地帯をウロウロするだけみたいな。

ゲームでは町で何もしないとHPもMPもゴールドも減りませんが、リアルの場合は労働しなくても時間が経てば自然にHPが減るので定期的に回復(食事、睡眠)しないと死んでしまいます。死んだときに「しんでしまうとは なにごとだ!」とか言いながらも優しく蘇生してくれる王様は勿論いません。運が悪いと事故や病気でHPがゼロになってゲームが早期終了することもあります。

ホイミ(自炊)が使える人はMPを消費してHPを回復すれば節約になります。そのMPもタダではないので、最終的には宿屋で回復する必要があります。そのたびに貯めていたゴールドが減っていきます。ゴールドが減るペースは宿代(生活コスト)次第なので、ゴールドの残高と自分のレベル(年齢)に合わせて適正な宿代の町を選ぶ眼も大事になってきます。

そしてリアルRPGの最大の特徴は、開始からある程度のレベルまではゲームと同様に主人公も成長を続けますが、それ以降は少しずつ主人公の能力が衰えていくこと。一部「かしこさ」のような能力は衰える時期が遅めだったりしますが、最大HPはもちろんのこと、「ちから」「すばやさ」などのステータスも、レベル25あたりで成長が止まり、以後はレベルアップするたびに減っていくことに…。そしてレベル90あたりに達すると最大HPがついにゼロになってゲームは強制終了します。

主人公の能力が時間の経過とともにゼロに向かって減少していく。なんという恐ろしい仕様でしょうか。クソゲー? 言えてます。でもこのゲームの仕様は誰にも変えられません。

もしこんな仕様のRPGが本当にあったなら、今までのように主人公がレベル99まで成長を続けるRPGとは、プレースタイルが全然違ってくるかもしれませんね。ボスを討伐するのが目的なら、能力のピークに合わせて計画的にやらないと苦労することになりそう。

参考ツイート: