2017年8月30日

勝ち馬を当てる「一握りの投資家」を目指す必要はない

前回の続きです。
日本は手遅れだ。どんな名政治家が出てきても、どんな提言が為されても、どんな少子化対策が実行されても「遅すぎる」ということに気付かなければならない。
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日本の株式市場は今もバブル期の日経平均3万8915円を追い抜いたことが一度もないのだが、そんな不甲斐ない状況を尻目にニューヨーク株式市場は現在、市場空前の最高値に達しているのである。

誰がどう見ても勝ち馬はニューヨーク株式市場である。
過去そうだった、あるいは現在そうだからといって、未来のニューヨーク株式市場も同様であるとは限りません。市場の楽観的な予測を裏切るような経済成長にとどまった場合、株式投資のリターンは従来より低くなることもあります。逆に、日本経済の未来が明るくないことは現在の株価に織り込み済みなので、市場の悲観的な予測よりも高い経済成長を達成すると、株式投資のリターンは従来より高くなることもあります。

結局のところ、現代の十分に効率的な株式市場においては、どの国の市場に投資してもリスクが同程度なら期待リターンも同程度になるはずです、理論上は。未来の「勝ち馬」を当てようとして誰もが知り得る情報をかき集めたところで、期待リターンが上昇するわけではないのです。

長期で資産を膨らませることを考えているのであれば、さっさと日本の株式市場から資金を引き揚げて、勝ち馬が勢揃いしているニューヨークの株式市場に持っていくべきなのである。
NYSEを通じて、たとえば世界株式ETFであるVTを買えと言っているんであれば同意。

でもそれはVTが「勝ち馬」だからではありません。未来の勝ち馬など誰にも予測できませんし予測する必要もありません。日本の株式市場で日本株式に集中投資している人にとっては、VTへの投資はリスクの分散になりポートフォリオの最適化が進む、ただそれだけの理由です。

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全レースで勝ち馬を当て続ける「一握りの投資家」が最高のリターンを得られるのは事実ですが、だからといってそれ以外の投資家が生き残れないことにはなりません。記事のタイトル煽りすぎ。

勝ち馬を当てようとせずに全レースで全馬券を買うインデックス投資家でも生き残れる可能性が高いのが、数あるギャンブルの中で「期待リターンがプラスである」という稀有な特性を持つ株式投資の利点です。胴元がテラ銭をかっさらっていく競馬や、ゼロサムゲームのFXのようなギャンブルとは本質的に別物なのです。

日本円ベースの資産など持ってはいけない。貯金であれ株式であれ不動産であれ、いかなる形であっても日本円ベースの資産を持たないのが正解だ。
「日本円ベースの資産を持たない」って日本に住む日本人にとっては難易度が高すぎるし、そもそもそんなふうに投資対象を国別に区切って狭めていく行為はポートフォリオの分散効果を下げるだけで、良いことは一つもないと思います。

ある資産が持つ性質は、その資産がどの通貨(モノサシ)をベースに価値を表示しているかとは関係ありません。たとえばTOPIX ETFだと時価は円建てで表示されますが、中身は株式であって通貨ではないので、ホームカントリーバイアスがかからない程度の割合(10%以下)で保有することに何の問題もありません。

同様にVTの時価はドル建てで表示されますが中身は世界中の株式なので、ドルという通貨が持つ性質とは無関係です。どの通貨ベースなのかではなく、中身を見ることが重要です。

(つづく?)

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