2020年1月30日

財産税による財政再建こそ「最悪」のシナリオ

前回の続きです。
日本経済は、政府の狙い通り着々とインフレへと向かっています。マイナンバーによって国民の財産を把握したあと、「財産税」によって富裕層の財産を没収…。
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税負担が重い富裕層にとっても「財産税」の方がマシ
この結論とそれに至るロジックの組み立てがかなり怪しいので指摘しておきたいと思います。

前提として、この人が想定する財産税とは、たとえば保有資産4千万円以上の(準)富裕層のみをターゲットにするもので、それ未満の庶民は非課税です。

財産税課税というのは究極的には「まだマシ」な施策なのです。というのも、ハイパーインフレになってしまえば、個人の保有資産の実質的な価値は「何百分の1」とか「何万分の1」とかになってしまう可能性があるのですが、財産税課税をされても資産は「何分の1」か、最悪でも「10分の1」くらいにしかなりません。
まずこの比較が現実的ではありません。

最大90%もの財産税の対象にされるほどの大金持ちが、ハイパーインフレになると購買力が「何百分の1」とか「何万分の1」になってしまうようなポートフォリオを組んでいると思いますか? そんなわけなくて、もっとインフレ抵抗力の高いポートフォリオになっているはずです。最悪今の時点では円預金しか持ってない富裕層がいたとして、本格的なインフレが始まれば直ちに対策を打つこともできます。

インフレ対策済みのポートフォリオを保有する富裕層なら、たとえハイパーインフレになろうとも、購買力が1%以下まで激減することはまずありません。せいぜい資産の売却時にインフレ税を20%ほど持っていかれるだけで済みます。財産税と違って課税繰延効果まで付いてきます。

財産税率90%どころか、彼が仮定する最低税率25%であっても、そんなに高額の財産税を一気に持っていかれるよりは、繰延ができて定率のインフレ税の方が遥かにマシなんですよ。(準)富裕層にとっては。

要するに、庶民には無関係で富裕層や超富裕層には厳しい課税になるということが想定されるのです。
その通りで、だから民主的に実行可能だという目論見はわかります。

しかし、あくまでも多数派による少数派への不当な暴力であることは自覚してもらいたいと思います。

こんな大規模な強盗を計画している奴らがいて、そのためのマイナンバーだとバレバレなのに、狙われている富裕層が無抵抗に盗られるだけの呑気な人たちだと思いますか?

あらゆる手を使って抵抗してくるだろうとは考えませんか?

自分が実行していない方法も含めて、マイナンバー対策ならけっこう簡単に思いつきます。古典的な方法としてはゴールドに替えて金庫に保管するとか。暗号資産もある時代ですし、戦後の財産税のときより資産の持ち方が遥かに多様化しているため対策しやすいと思います。

この財産税課税が行なわれると、1,800兆円といわれる国民の金融資産総額のうちの大雑把に半分は国が徴収することになるのではないかと推定できます。かなり大雑把な推定ですが、まあ、だいたいそのくらいでしょう。つまり、900兆円くらいは国が国民から没収できるということです。
というわけで、富裕層にばっちり対策をされてしまって、そんなには盗れないでしょう。こんな楽観的予測に基づいた「財産税によるインフレの沈静化」など、机上の空論じゃないですかね。

万が一、財産税による資産の収奪がうまくいき、大したインフレも起こらずに
(1)国家財政が一気に健全化する
これが実現してしまったときこそ、「最悪」だと思います。

「放漫財政によってこんなに膨大な債務を積み上げても、最後は金持ちに払わせたら何とかなった」という負の実績ができてしまうわけですよ。

政府はますます調子に乗って歳出拡大路線を継続し、国民負担が際限なく増え続ける未来が待っています。こんな世界を地獄と呼ばずして何と呼びましょうか。

この最悪の事態を回避するためにも、富裕層の皆さんには是非、ぬかりなく財産税対策をしていただきたいと思います。これ以上モンスターに餌を与えないでください。

参考ツイート:

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2020年1月25日

国家の財政破綻は「最悪」の事態ではない

幻冬舎の記事より。
日本経済は、政府の狙い通り着々とインフレへと向かっています。マイナンバーによって国民の財産を把握したあと、「財産税」によって富裕層の財産を没収…。財政赤字の圧縮を目論む政府が描いているシナリオは、まさにこれではないでしょうか。
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なぜ日銀は異次元の金融緩和を実行して、国債を買いまくるのか。それはひとえに、インフレを起こさせて「政府の債務を実質的に目減りさせたいから」です。
ここまでは良いとして、

そして、それは最終的には国民にとっては「よいこと」なのです。国家が財政破綻してもらっては困るからです。「最悪(=国家財政破綻)よりはマシなのがインフレ政策」というわけで、最悪の事態になるよりはよい、という意味で最終的には国民にとっては「よいこと」なのです。
これは違います。財政破綻は「最悪」ではありません。

「国民にとっては~」と大きな主語で語っていますが、国民にも2種類の人間がいます。

インフレ税をたっぷり支払ってもなお国家財政を救う方が利益になる人って、自らの生活を国家財政に依存している国民だけです。具体的にはまず公務員。生活保護受給者。公営保険制度に莫大な税金が注ぎ込まれている医療や介護業界の人たち。そして公営年金制度に依存して生きている(将来生きようとする)人々など。

しかし、それ以外のカタギな国民は国家財政が破綻しても何も困りません。税金にたかるのではなく民間経済で生計を立てている人々は、国家財政にぶら下がって生きようとする人々を強制的に扶養させられているだけなので、財政破綻によってタックスイーターの数が減ることは大歓迎です。タックスイーターの生活を守るためにさらなる重税を課されるなんて、盗人に追い銭、踏んだり蹴ったりです。

タックスイーターにとって死活問題だからといって、一般市民まで巻き込むインフレ政策を正当化するのはやめていただきたいと思います。

生活実感はどうであれ、もうすでに日本経済はインフレに突入しているのです。政府と日銀がこのままの政策を採り続ける限り、インフレ基調はどんどん鮮明になっていくでしょう。
(中略)
そして、インフレのときには何をしなければならないのかというと、現金を持つのではなく、現金を現金以外の資産に替えておかなければならないのです。
正しいと思います。

さて、日本経済はインフレになっているわけですが、政府が政策の舵取りを誤ってしまうと、インフレが度を超えて、ハイパーインフレになってしまうことが懸念されます。そして、そうなる確率はかなり高いように思います。2013年4月以来、日銀は出口の見えないジャブジャブの金融緩和を続けているからです。前にも書きましたが、「中央銀行による国債の実質的な引き受け」を大規模に行なった国で、ハイパーインフレにならなかった例は稀なのです。
これも的確な指摘で、むしろこれだけ大規模な財政ファイナンスを実行しつつ、未だに通貨の信用が毀損せず、高率インフレが発生していない事の方が奇跡だと思います。

そこで次に、これからの日本で起こることの2番目として、「財産税課税」についてみていきます。
ここからが本題のようですが、長くなりそうなので次回へ。

参考ツイート:

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2020年1月20日

負担を押し付ける政府、逃げ惑う企業

ツイッターより。

内戦と言うよりは、政府による一方的な企業いじめですね。なので、企業から見て政府は敵ですが、政府から見て企業は奴隷か、良くて召使いでしょう。

雇用延長や派遣の5年ルールなどは政府が一方的に企業の自由を奪い、雇用契約を強制するものです。企業にとってのメリットは何一つありません。企業側にもメリットがある雇用延長や正社員化なら、いちいち政府が干渉しなくても、雇いたい企業と雇われたい労働者の間で任意の契約が成立するはずだからです。

本来なら契約当事者同士の合意に任せていればよいものを、なぜ政府が横からしゃしゃり出て権力で雇用を強制してくるのか、その理由は一つしかありません。一人でも多くの人に、年金受給開始を遅らせてほしいからです。そうしないと制度がもたないからです。無事65歳を迎えた会社員たちに、どうにかしてあと5年は会社員のままでいてもらいたい。年金ではなく会社の金で生活してもらいたい。これが政府の狙いです。

そうして多くの会社員が70歳まで働く社会にした後に、年金支給開始年齢をしれっと65歳から70歳へ引き上げるつもりなのでしょう。今まで通り65歳から年金を受給したい人は繰り上げ受給となり、盛大に減額されることになるでしょう。

雇われる側が希望すれば(雇う側が嫌がっていても)70歳まで働ける制度とは結局、「政府が年金制度の失敗によって生み出した莫大な負債を企業に押し付ける」ために作られているのです。押し付けられる企業からすると、65歳でも十分きついのに70歳まで雇用を義務付けられたのでは堪りません。そりゃ、リストラや派遣切りなどあらゆる手を使って全力で逃げようとするのは、営利企業として当然の話です。

これと同じ構図の利害対立を観察したときに、強制されている側が素直に従わずに抵抗するからそうなるんだ、みたいなことを言う人が跡を絶ちませんが、そういう物の見方は倒錯しています。対立の原因は常に、誰かに何かを強制する側が作っていることを忘れてはなりません。

「対立しない改善策」は唯一、政府が企業に課しているあらゆる縛りをやめること、それ以外には無いと思います。

参考ツイート:

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ツイッターより。 独身層が「知らん奴の子供のために出産育児の負担を独身者も背負うなんて冗談じゃない!」って思ってるのと同じようにファミリー層が「知らん独身の奴の老後のためにうちの子が未来に負担を背負うなんて冗談じゃない!」という考えがあるらしく、これはもう戦争ですよ。 — ピン...
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ツイッターより。 彼らが年金保険の世代間格差の指標としてきた給付負担倍率って、公的年金が私的な親の扶養を公的に切り替えていった歴史や、年金が保険であることを知らなかった人たちが計算しては、世代間格差だと騒いでいたバカバカしい指標ですよ。彼らのキーワードは、いつも「対立」。なんか...
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2020年1月15日

「国民年金は信用できるから払った方が良い」とアドバイスするお節介な人

ツイッターより。

これ「余計なお世話」の典型です。

以前動画で見た「年金は繰下げ受給した方がいい」みたいな話がおかしいのと同様に、年金を免除するかどうかなんて本人以外の誰にも判断できることじゃないでしょう。

「国民年金は信用できる」と思うなら、あなたが払えばよいだけの話です。「信用してない」と明言している他人を説得して払わせると何か良いことでもあるんでしょうか?

どうせ本人の為を思ってとか言うんでしょうけど、そういう善意に基づくお節介ほどたちが悪いので注意が必要です。

私も勿論、国民年金など信用してないし払っていません。当ブログやツイッターでもなぜ自分はそう思うのか再三書いてますが、他人に向かって「払わない方が良いよ(^^)」などとアドバイスしたことは無いつもりです。もし私の記事を読んでそう感じた人がいれば、決してそういう意味ではないことを、この機会に強調しておきたいと思います。

参考ツイート:

2020年1月10日

世界で最も成功した社会主義国の国民は平等に貧しくなっている

J-CASTニュースより。
「日本人は貧しくなっている。貧富の差も広がっている」――。こういう話をよく耳にする。確かに、国税庁の民間給与実態調査によれば、日本の2018年の平均年収は441万円で、2007年の437万円からほとんど増えていない。世界の多くの国で所得が大きく伸びてきた中で、日本の不振は明らかだ。
www.j-cast.com
とりたてて資産のない年収400万円の30歳サラリーマンよりも、自宅とそれなりの金融資産があり、年金生活をしている65歳の元正社員のほうが豊かであろう。

今の年収よりも、どれだけ蓄えがあるかのほうが重要なのである。
多くの人が貧富を収入で判断しがちなところ、資産にも着目すべきとの指摘はその通りです。

ただ、「今の年収」から支出を差し引いた分が「蓄え」(資産)として積み上がっていくわけですから、両者を区別して扱う理由も特に無いと思います。どちらも同程度に貧富の指標になるのであって、「~のほうが重要」みたいにどちらか一方を強調すべきものではなさそうです。

この記事の趣旨は、過去に積み上げた資産がまだたっぷり残っているから日本人は十分に豊かだと言いたいのでしょう。

現時点でのスナップショットを撮れば確かにその通りです。でもそれだと「日本人は貧しい」の反証でしかなく、「日本人は貧しくなっている」という変化を反証したことにはなりません。

高齢者を中心とするリタイア世代は今後どんどん積み上げた資産を取り崩していくでしょうから、増税(社会保険料爆上げを含む)やインフレで実質可処分所得が減っている中で、日本人の資産を減らさずに豊かさをキープしろと言うのは無理な注文だと思います。

ということで、「日本人は貧しくなっている」という傾向は残念ながら事実だと私は思います。

日本は米中独英に比べて、富が平等に分配されている
(中略)
日本は世界のほとんどの国がうらやむような富の分配が実現した国だといえよう。
その「分配」とは権力による強制そのものですから、決して褒められるような事ではありません。他国と比較して権力がより激しく経済に介入した結果として実現された「平等」です。それを誇らしげに語ってしまう経済アナリストの存在に、大きな違和感があります。

世界で最も成功した「社会主義国家」と言われるゆえんである。(小田切尚登)
これを皮肉や揶揄の意味を込めて言うのではなく、ガチで称賛する目的で言ってる人を初めて見ました。

最初に言った人が誰か調べてみたのですが、旧ソ連のゴルバチョフ書記長が訪日時に漏らした感想だという説が出てきました。これが本当なら、小田切氏は原典に忠実に使っただけですね…。

そして、社会主義の本場の政治家が羨むほどに、30年も前から既に日本の社会主義体制が確立していたのかと思うと、やるせない気持ちになります。88歳になったゴルバチョフさん見てください。あれから30年経って日本はさらに社会主義体制に磨きがかかってしまいました。ソ連のようにこの体制を「崩壊」させる方法を是非教えて下さい。

参考ツイート:

2020年1月5日

富裕層にとってインフレは嬉しいのか?

ツイッターより。

私が「富裕層」に含まれるかどうかわかりませんが、インフレで名目資産残高が増えても特に嬉しいとは思わないですけどね。法定通貨というモノサシの方が勝手に縮んだから数字が増えただけのことで、実質価値(購買力)は全く増えていなかったりするわけで。

いや俺の資産は実質でも増えてるぞ!と言う人がいるかもしれませんが、それはあなたがリスク資産へ投資した見返りであって、インフレのおかげではありません。

資産の売却時には、名目で増えた金額を所得とみなして課税されるものだから、インフレ率が高ければ高いほど支払うインフレ税も高くなり、その分だけ資産の購買力は目減りすることになります。資産持ちにとってもインフレは損であることに変わりはありません。

つまり、「富裕層にとってインフレって何も困らない」とは、余裕資産が多ければ多いほど、多額のインフレ税を払ってもなお十分な資産が残るので致命傷にはならない、という意味でしかありません。決して、富裕層だからインフレで得をするという話ではないのです。



参考ツイート:
関連記事:
ツイッターより。 貧乏人にとってマイルドなインフレって、金を持ってるやつが強いという非対称性を、通貨の価値を下げて緩和するっていう大事な役割があると思うんだけど、貧乏人のほうが多いはずの世の中で皆がインフレを恐れてるように見えるのはなんで — kazutomi (@kazuto...
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橘玲さんのツイートより。 インフレ税で財政赤字を処理するのは、経済学的には最適解なのでしょうが、外貨(Bitcoin)の保有などで富裕層はかんたんに回避できるので、経済格差をさらに広げることなると個人的には思います。 — 橘 玲 (@ak_tch) 2017年7月10日 天文学...
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