税負担が重い富裕層にとっても「財産税」の方がマシこの結論とそれに至るロジックの組み立てがかなり怪しいので指摘しておきたいと思います。
前提として、この人が想定する財産税とは、たとえば保有資産4千万円以上の(準)富裕層のみをターゲットにするもので、それ未満の庶民は非課税です。
財産税課税というのは究極的には「まだマシ」な施策なのです。というのも、ハイパーインフレになってしまえば、個人の保有資産の実質的な価値は「何百分の1」とか「何万分の1」とかになってしまう可能性があるのですが、財産税課税をされても資産は「何分の1」か、最悪でも「10分の1」くらいにしかなりません。まずこの比較が現実的ではありません。
最大90%もの財産税の対象にされるほどの大金持ちが、ハイパーインフレになると購買力が「何百分の1」とか「何万分の1」になってしまうようなポートフォリオを組んでいると思いますか? そんなわけなくて、もっとインフレ抵抗力の高いポートフォリオになっているはずです。最悪今の時点では円預金しか持ってない富裕層がいたとして、本格的なインフレが始まれば直ちに対策を打つこともできます。
インフレ対策済みのポートフォリオを保有する富裕層なら、たとえハイパーインフレになろうとも、購買力が1%以下まで激減することはまずありません。せいぜい資産の売却時にインフレ税を20%ほど持っていかれるだけで済みます。財産税と違って課税繰延効果まで付いてきます。
財産税率90%どころか、彼が仮定する最低税率25%であっても、そんなに高額の財産税を一気に持っていかれるよりは、繰延ができて定率のインフレ税の方が遥かにマシなんですよ。(準)富裕層にとっては。
要するに、庶民には無関係で富裕層や超富裕層には厳しい課税になるということが想定されるのです。その通りで、だから民主的に実行可能だという目論見はわかります。
しかし、あくまでも多数派による少数派への不当な暴力であることは自覚してもらいたいと思います。
こんな大規模な強盗を計画している奴らがいて、そのためのマイナンバーだとバレバレなのに、狙われている富裕層が無抵抗に盗られるだけの呑気な人たちだと思いますか?
あらゆる手を使って抵抗してくるだろうとは考えませんか?
自分が実行していない方法も含めて、マイナンバー対策ならけっこう簡単に思いつきます。古典的な方法としてはゴールドに替えて金庫に保管するとか。暗号資産もある時代ですし、戦後の財産税のときより資産の持ち方が遥かに多様化しているため対策しやすいと思います。
この財産税課税が行なわれると、1,800兆円といわれる国民の金融資産総額のうちの大雑把に半分は国が徴収することになるのではないかと推定できます。かなり大雑把な推定ですが、まあ、だいたいそのくらいでしょう。つまり、900兆円くらいは国が国民から没収できるということです。というわけで、富裕層にばっちり対策をされてしまって、そんなには盗れないでしょう。こんな楽観的予測に基づいた「財産税によるインフレの沈静化」など、机上の空論じゃないですかね。
万が一、財産税による資産の収奪がうまくいき、大したインフレも起こらずに
(1)国家財政が一気に健全化するこれが実現してしまったときこそ、「最悪」だと思います。
「放漫財政によってこんなに膨大な債務を積み上げても、最後は金持ちに払わせたら何とかなった」という負の実績ができてしまうわけですよ。
政府はますます調子に乗って歳出拡大路線を継続し、国民負担が際限なく増え続ける未来が待っています。こんな世界を地獄と呼ばずして何と呼びましょうか。
この最悪の事態を回避するためにも、富裕層の皆さんには是非、ぬかりなく財産税対策をしていただきたいと思います。これ以上モンスターに餌を与えないでください。
参考ツイート:
全ての増税に反対することが大事。歳出改革は入りを絞ることによって初めて実現される。増税を繰り返すと出が緩い状態が継続するだけ。既存の詰んだ日本政府の仕組みをゼロからやり直すための厳しい歳入改革こそが真の改革。
— ワタセユウヤ (@yuyawatase) October 17, 2019
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