2010年3月27日

『ヘッテルとフエーテル 本当に残酷なマネー版グリム童話』



見返し部分にはこう書いてあります。
お金、仕事、友人、自由、幸せ……とは?
騙しの罠、国家のウソ、経済・社会の構造を暴く衝撃の書
偽りとまでは言えないものの、かなり大げさと言わざるを得ません。
とにかく内容が薄いです。何か新しい知識を獲得しようと思って読むと後悔するでしょう。
30分で読み終わる本なのに、中古品でもまだ600円以上するというのが信じられないです。

第2章「カネヘルンの笛吹き」は世のカツマーたちへの強烈な皮肉です。勝間本の読みすぎで熱くなった頭を冷やすのにちょうどいいんじゃないでしょうか。
流行に乗って何かをすれば、まわりの人間も同じことをやっているから、結局成果は出ないんじゃ。みんながカネヘルン・ミセス・インディを真似して自己啓発を始めたら、そんな人が集まるばかりで、儲かるのは、それを提供している会社だけじゃ。
流行に乗った自己啓発がよろしくない理由は、『貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する』にも書いてありました。

流行に乗る、つまり人と同じ時期に同じことをするのは大抵の場合、合理的な行動ではないですね。
株の売り買いから連休の過ごし方まで、我々の日常に深く関わっている法則なので、覚えておいて損はないと思います。

2010年3月7日

『年収200万円からの貯金生活宣言』



けっこうな人気本のようですが、
資産がマイナスかもしくはゼロに近い状況にあり、このままではいけないと感じている「お金の問題児」である(かもしれない)あなたといっしょになって家計を立て直し、貯金をするための実践的なアドバイスをお伝えしたいのです。
と書かれているように、「お金の問題児」ではない人にとっては既に知っている当たり前の話や、使う機会のなさそうなノウハウがほとんどだと思います。
 お金を貯めるには、絶対に揺らがない理論上のゴールデンルール(絶対法則)があります。入ってきたものをなるべく多く残す。つまり「稼いだお金は極力使わない」という単純なルールです。
その通りで、本書ではここに焦点を絞っている点は良いと思います。

当ブログ的に「早期リタイアのためにお金を貯める」という観点で付け加えるなら、資産を増やすための方法としてよく出てくる、収入を増やすことや運用利回りを上げることに比べて、支出を抑えることは地味ながら最も重要なことなのです。というのは、支出が少なければ少ないほど、お金が貯まる速度が速くなる上に、リタイアに必要な資産額も少なくて済む(関連記事:早期リタイアの判断基準)という二重の効果があるからです。一石二鳥とはまさにこのことです。

早期リタイアを志向するなら、副業や資産運用のことを考えるよりも、支出の少ない生活を心がけることが最優先です。
上手に貯められるのは「大らかで何でも楽しめる人」。
・自分なりの目的を持って、無理をしない。
・淡々として、激しく落ち込んだりしない。
・節約を楽しんでいる。
・うまくいかなくても言い訳しない。
これ、けっこう当たっているような気がしますね。
『超簡単 お金の運用術』の「大らかな合理主義」と似ているところがあるかもしれません。
貯められる仕組みづくりが大切なのです。
苦労をしなくても自動的に、結果に一喜一憂せず、淡々と。気がついたら、着実に貯まっている。
だから、どんな性格の人でも貯められる、それが仕組みの威力です。
という流れで「90日プログラム」なるものが紹介されているわけですが、こんな面倒な仕組みに従うなら十分「苦労」しているうちに入るんじゃないかな、というのが正直な感想です。元々貯められる性格の人なら人為的に仕組みを作り込まなくても自然に貯まるんですよね。鋭敏な金銭感覚そのものが天然の仕組みとして無意識に働いているからだと思います。

たとえば、
 最近の家計では、携帯電話代が、手取り収入の1割近くを占めている人が少なくありません。たとえば家族3人で3台所有、総額2万5000円。1人で1台所有、1万7000円など。
などの例を見ても、元をたどれば結局は「金銭感覚が鈍い」の一言で一蹴されるレベルの話ですよ。金銭感覚というのは後天的に形成されるものだと思いますが、一度鈍くなってしまった感覚を鋭敏にせよと言っても、なかなかできるものではないという気がします。

本書で明らかに間違っているのはクレジットカードについてのアドバイス。
まず冒頭の「貯金力チェックテスト」項目の一つに
□クレジットカードが使える場面では、現金は使わず迷わずカード払い。
があり、チェックを入れると減点されます…。さらに、
最近は、ポイントが貯まるから、支払い手数料(金利)がかからないからと、現金があってもクレジットカードで払う人が増えました。しかし、使わないことによるおトクさのほうが総合的に見て必ずや上回ります。損得でいうと、断然勝ちです。
などと書いてあります。
いえいえ、そんなことはありません。逆です。現金主義は損をします。

店側が負担するクレジットカード手数料は価格に転嫁されて実質的には消費者が負担しているので、その負担がない「現金決済のみで安い店」で買うと得をする、という話ならわかるんですけどね。本書で得だと言っているのは「クレジットカードが使える店なのに敢えて現金で払う」ことなので、これは明らかに誤りです。現金で払っても還元率はゼロ、おまけに他人のカード決済で発生する手数料の一部まで負担していることになりますから。
スーパーに食品を買いに行ったBさん。お財布を見ると手持ちが3000円しかありません。でもクレジットカードはあります。カードがなければ2000円ぐらいですますのですが、カードがあるので結局4500円も買い物をしてしまいました。
という例も一見ありそうな話ではありますが、私にはかなり奇妙に見えます。どの食品を買う必要があるか判断するのに、クレジットカードを持っているかどうかは関係ないはずでは?
決済手段が何であれ、必要なものを必要なときに買うのが正しい行動であることに違いはありません。決済手段が変わると必要なものの範囲が変わる、などということはあり得ないです。

本当は4500円分の食品を買う必要があったのにカードがないからといって2000円分しか買わないのも、本当は2000円分しか必要でなかったのにカードを持っているからといって4500円分買うのも、どちらもまったく合理的な行動ではありません。Bさんは、有利な決済手段の選択というレベルよりもはるかに重要な、経済合理的に行動するということができない悪い見本のような人だと思います。

2010年3月5日

SBIの国際送金サービス

待ちくたびれた末にやっと来たかという思いです。
外国人労働者から母国への仕送りが便利になるとかいう視点で見る人もいますが、最も恩恵を受けるのは日本の個人投資家だと思いますね。海外口座へのハードルが大きく下がりそうなので。

日本初となるインターネットを主要チャネルとする国際送金サービス事業への参入について(SBIホールディングス)|ニュースリリース|SBIホールディングス
今後、新会社「SBIレミット株式会社(仮称)」(当社100%出資を予定、以下「SBIレミット」)において、2010年夏頃のサービス開始を目処として準備を進めてまいります。
2. 「国際送金サービス」の概要
  SBIレミットにおける国際送金サービスでは、送金依頼人がパソコンや携帯電話から24時間送金申込みを行うことができ、送金手続完了後10分程度で送金受取人は、世界のマネーグラム社代理店で送金を受け取れるようになります。また、海外のマネーグラム社代理店から日本への送金の受け取りも可能となる予定です。
特徴1. 安価な手数料
インターネットを主要チャネルとし、送金処理をシステム化することにより効率的な運用を行い、安価な手数料でサービスを提供
特徴2. サービスの多言語対応
日本語や英語に不慣れな外国人労働者も利用しやすいように、ウェブサイト及びコールセンターにおいて利用者のニーズの高い複数言語で対応
特徴3. 24時間運営で迅速な送金
送金手続きはウェブサイトにて24時間可能。受け取りは送金依頼から10分程度で可能
特徴4. 世界中に広がる送金ネットワーク
送金受取りはマネーグラム社の190カ国約18万拠点の代理店ネットワークで可能
特徴5. マネー・ロンダリング防止に対応
利用登録時の本人確認や、フィルタリング・ソフト導入等によりマネー・ロンダリング防止のための高いセキュリティレベルを実現
今のインターネット時代にこの程度のサービスに参入することさえ許されなかった現実が、規制大国ニッポンを象徴していますね。

と思ったのですが、以前ブックマークした次の記事によると、金融先進国のはずのアメリカでも状況は大差ないようです。
音楽産業とマスメディアの次にインターネットが破壊するのは金融業界だ–ついに
今でもまだ、インターネットにとってアンタッチャブルな業界があるのだ。その一つが金融(finance)だ。初期にはeTrade、 Ameritrade、Scottradeなどがあったが、不透明と混乱と政府の規制を基本資質とする古典的な金融業界は、今も昔のままだ。
(中略)
金融業界はあまりにも長らく、反イノベーション的で反消費者的だったのだから、革命的オンライン企業たちは最初から完璧を目指す必要はない。そしてそこに、利益機会がある。たとえばすでにオンラインの金融サービスを2社も作って売った経験を持つCasaresによれば、デジタルの送金コストはかぎりなくゼロに近いのに、銀行は知らん顔をして高額な手数料を取っている。従来の電話会社の態度も同じだ。モバイルが価格破壊をやる前は、別の州にかける電話はべらぼーに高かったのだ。
いやほんと、今の日本の国際送金サービスはソフトバンクが参入する前の携帯電話サービスみたいなもんでしょう。あんなバカ高い料金払う人がいたなんて今となっては信じられません。

消費者のニーズを無視して規制の上にあぐらをかいてきた銀行などは、これから競争に敗れてどんどん淘汰されていけばいいと思います。そのためには我々消費者が金融機関を選別する目を養わなければなりません。たとえば銀行選びの場合、次の記事が参考になります。
オススメの銀行口座 2009 late – GUCCI1210 go further away
では、何を重視するのかというと手数料が低いこと(できれば無料)、そして出し入れの利便性です。どこかに資金を移動したり、入出金のたびに手数料をとられていたのでは目も当てられません。出金の度に手数料105円、振込のたびに210円などとられていては減る一方です。ケチケチするなと言われそうですが、そんな台詞を言う人には貯めることは無理です。
本当にその通りだと思います。
もちろん私のメインバンクは住信SBIネット銀行です。

2010年3月4日

『空気を読むな、本を読め。 小飼弾の頭が強くなる読書法』



御本人の紹介記事はこちら
404 Blog Not Found:#空気本_ - 紹介 - 「空気を読むな、本を読め。」
ああ、恥ずかしい。

全裸より恥ずかしい。
わかります(笑)。でもこのTシャツは欲しいですね。

以前読んだ
404 Blog Not Found で有名な小飼弾氏の本です。 切れ味鋭いブログ記事と比べて、かなりマイルドな印象です。その点がやや物足りない気もしますが、彼のブログを面白いと思える人なら読んでみて損はないでしょう。 共著者のITジャーナリスト山路達也氏のことは存じませんでし...
yumin4.blogspot.jp
または
御本人の紹介記事はこちら 404 Blog Not Found:紹介 - 「決弾 」、3月23日発売です 私の感想は、前著の 『弾言』 と比較すると、共感する部分が少なく物足りない印象の本でした。 共感した部分。 最適な決断は、感情がニュートラルな状態、平静な気持ちの時に初めて行...
yumin4.blogspot.jp
で読んだ覚えがあることも書いてあったので、内容が薄く感じられました。
 ノンフィクションを読むというのは、自分の知らない事柄を拾っていく作業です。だから、「これは知っている」という箇所は読み飛ばせるわけです。
と書いてある通り、同じ一冊の本でも読者が持っている知識の量によって内容の濃さが違ってくるということです。本書を含めた3冊のうち、私の中では最初に読んだ『弾言』が一番良かった気がするのは、おそらく知らない事柄を最も多く拾ったからなんでしょう。
はっきり言います。空気なんか読んでいたら確実にバカになります。
この歯切れの良さが小飼さんらしくて好きですね~。
 ルールや規範から解き放ち、自由な発想をもたらしてくれるのがホンモノの読書。
(中略)
マスコミが喧伝するような価値観なんて、いとも簡単に崩れてしまう。世間様や会社や学校の常識など、朝令暮改は当たり前です。
そのときあわてず自分で考え、行動していく人が生き残っていきます。「他人の尺度でなく、自分の尺度で生きる」人が、本当の勝ち組なんです。
賛同します。「勝ち組」という表現は好きじゃないですけど。
「仕事」と「遊び」の違いとは、仕事は「~しなければならない」ことだけど、遊びは「~できればいい」という感覚のもの。仕事は「~しなければならない」ことなので、続けるのがつまらなくなってしまう。モノによっては遊んでいたほうが、良い結果が出せる場合だってあるのです。
わかりますねー。私も学生時代に面白いと思っていたことを仕事に選んだつもりでしたが、それが「義務」になったとたんにつまらないものに変わるという経験をしました。それで仕事というのは基本的につまらないものだという割り切った考えに至った次第です。
学生時代にはあまり興味がなかった読書も、「遊び」でやるとなるとこんなに楽しいのですから不思議なものです。
 テレビにしろ新聞にしろ「プッシュ型」のメディアの情報、つまり相手が一方的に押し付けてくる情報はすべて捨ててしまいましょう。自分から必要な情報を取りにいくのが大事なのです。
これは『弾言』にも書いてありました。何度も反復して書くのはそれだけ重要だからでしょう。それなのに実践している人はまだ少ない気がします。
 たいてい日本の大企業の創立者なり社長なりは、自伝などの本を書きます。そして、それは従業員を洗脳する道具として使われる。
私もいろいろな創立者の著作を読みましたし、得るものもありましたが、鵜呑みにしてよいものは1冊もありませんでした。自分の頭で考えられない人にとって、本はむしろ毒なのかもしれない。それをいちばん実感しやすいのが、社長本かもしれません。
ということで社長本には気をつけましょう。
と言いつつ、私にも自社の社長本を読んでいた時代がありました。つまらなかったせいか、内容はおろか読みきったかどうかさえ既に記憶にないのは、むしろ健全な証拠でしょうか。
提案したいのが、自分の意見と真っ向から対立する本を読むこと。
(中略)
つまり、自分の意見と対立する本を読むことは、自分の意見を強化する手だてになる。もし、その意見を受け入れられないと思ったら、なぜ自分は受け入れられないのかを自分に対して説明しなければいけないから、思考力も鍛えられる。
ノンフィクションはケチをつけながら読むといい。論理力を鍛えられるし、「自分を読む」ことにもつながります。
なるほど。
私もブログという読書ノートを書くようになってから、ツッコミを入れながら、あるいはどう反論するか考えながら読む、ということを無意識にやるようになった気がします。
本ほど値段と内容の相関係数が弱いものはない。純粋に安い本のほうが読む側にとってはありがたいに決まっています。
同感です。
勝間和代氏の本に「良い本は高い」みたいなことが書かれていた記憶がありますけど、そんな相関関係はないのです。もちろん安い方が良いということでもなく、ほぼ無相関と考えておけば良いでしょう。