イギリスの経済学者2人が書いた『ライフシフト』(東洋経済新報社)で、高齢化時代の資金計画が試算されている。それによると、毎年所得の10%を貯蓄して(けっこう大変だ)、老後の生活資金を最終所得の50%確保しようとするなら(かなりギリギリの生活だ)、平均寿命85歳でも70代前半まで働きつづけなくてはならない。平均寿命が100歳になれば条件はさらに厳しく、80代まで働きつづけるか、それが無理なら引退時の所得の30%という貧困生活に耐えるしかない。ここを読んだ時、かなり違和感がありました。
まず、「毎年所得の10%を貯蓄」することが「けっこう大変」なんですか?
この文脈での「所得」とは税法上のそれではなく年収と同義だと解釈したとしても、たとえば年収400万円なら40万円です。毎年40万円すら使わずに取っておくことが大変だと感じる人は、かなりの浪費体質ではないでしょうか。
以前読んだ本では、現役時代の貯蓄が年収*年齢÷10に満たない人は「蓄財劣等生」と言われています。関連記事:
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次に、「老後の生活資金を最終所得の50%確保」だと「ギリギリの生活」になり、「引退時の所得の30%」だと「貧困生活」になるという、その根拠が不明です。「所得」ではなく「支出」を現役時代の50%や30%に切り詰めるという話ならわかりますよ。しかし橘氏や『ライフシフト』という本が基準にしているのは、なぜか収入の方なんですよね。そんな基準は、収入と支出が綺麗に比例している人でなければ使えないと思うのですが…。
私の考えだと、リタイア後の支出は資産残高と時間残高のバランスで決まるだけです。今後の生存可能年数を計算するのに過去の支出を参考にすることはありますが、過去の収入というパラメーターの出番はどこにもありません。
リタイア直前にどれだけ高所得なAさんでも、生活コストが高すぎて余命の長さの割に蓄えた資産が少なければ、リタイア後の支出はそれに見合ったものに下げる以外にありません。そんな「貧困生活」は嫌だと言うなら橘氏の言うように70代まで、下手をすると死ぬまでリタイアできない人生になるだけのことです。(むしろそういう人生を望んでいる人も少なくないことは知っています。)
対照的に、低所得でも蓄財優等生のBさんなら、リタイアが原因で生活が貧しくなる可能性は低くなります。それどころか、これ以上の蓄財は不要だと判断した時点で早期リタイアできる可能性も見えてきます。私はこちらの人生を望み、実践しています。
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