本書の要約として最適な記述が後書きの中にあります。
ほんとうに、こういう生活は合理的なのか、理性的で文化的なのであるか、果たしてどこか間違っているところはないのか、自分の身の丈にあった生活をしているのか、無駄なことに無用の力や金を使っていないのか。そういうふうに無限に自省し、直視し、そして宜しからざるところあらば、悪しきは廃するに躊躇せず、宜しく改むるに逡巡せず、それが言ってみれば節約の王道である。直視したならば、そこからは、応戦しなくてはいけないということである。すなわち節約は、ちょこちょこチマチマとしたノウハウの謂ではなくて、もっと生活全体、あるいは生き方そのものについての自省的思惟でなくてはならぬ。つまり、著者が実践している節約の手法を紹介しながら、自分自身の価値観や人生観を語るという構成になっています。そうとは知らずに読んでしまい、個々のやり方が自分の役に立たないとか、著者の価値観など聞きたくないと感じた人が、アマゾンのレビューで低評価をつけているんじゃないかと思います。
その意味で、この本は、節約を説く本ではあるけれど、形而下的なノウハウを説く本ではない。
まず、共感したポイントを抜粋します。
私は「見栄を張るためにお金を使う」というのが大嫌いです。
私がお金と同時に節約すべきだと思うのは時間です。
お金は「天下の回りもの」で循環するものですが、人生は有限。お金はいつか取り返せることがあっても、時間の浪費は二度と取り戻すことはできません。
プレゼントはしない・もらわない
派手な儀式ほど愚かなものはない
男も女も関係なく、一人の人間としてきちんと自立しているべきだ
洋服は流行に関係のないものを着る。これがもっとも聡明にして被服費の無駄を省けるやりかただと思います。
お金の使い方で、もっとも大切なのは自分の身の丈を知るということです
何にどれだけお金を使うかは、その人の収入や価値観、人生観によって変わってきます。家計のハウツー本などを見ると、娯楽費や食費など諸費用の割合とその額をあらかじめきっちりと決めておいて、その範囲内に収めるというやりかたが載っていますが、私はそういう考えは持ちません。
次は同意できなかったポイントとその理由です。
家計簿はつけない自分の生活コストを把握するために必要です。
小銭入れは持ち歩かない節約派の読者からは、「そもそもコンビニで買い物をしてはいけない!」というツッコミが入る箇所でしょうね。
(中略)
例えば、コンビニで買い物をして8円のおつりをもらったとします。そうしたら、そういうごく少額の半端なコインは、みんなレジのそばに置いてあるユニセフなどの募金箱に入れてしまうのです。大体、50円玉以下のものは、そういうものにすべて入れてしまって、ポケットの中は常に100円玉と500円玉だけにしておく。
そこは置いといて、10円未満ならともかく、100円未満切り捨てとはかなりの太っ腹です。私は1円のお釣りでも募金などせず財布に入れます。財布の中に存在する1円玉が4枚以下になるように、端数の支払いを工夫すれば、財布の中が小銭だらけになることはありません。
人間とは愚かなもので、10万、20万と手元にお金があると、ついつい衝動買いをして使ってしまいます。そういう人は元から金銭感覚がおかしいだけでしょう。
どういうわけか不思議なもので、一度一万円札を崩してしまうと、あとはもう、あっという間に使ってしまう。いえ、そんなことはありません。
一万円札1枚と、千円札10枚の価値が違って見えてしまう人は要注意です。あらゆる場面で色々と非合理的な意思決定をやらかしているおそれがあります。
私は投資の類というのは一切やらないと決めています。このようなポリシーで貯金のみの運用だそうです。
(中略)
そもそもお金の管理で大切なのは、いかに確実に運用するかということだと思っているので、常に安全で確かなことしかやるつもりはありません。
でも、貯金が本当に「常に安全で確かなこと」なのでしょうか?
リスクの程度が違うだけで、貯金も投資の一種であることに変わりはなく、貯金のみの運用は、すべての卵をひとつの籠に盛っている状態にほかなりません。その籠は他の籠よりも大きくて安定しており、相対的に安全性が高いというだけのことで。
保険料は節約しないうーん、よりによって一番要らない保険を推奨しちゃってますね。
(中略)
必ず医療保険なり生命保険なりを十分に掛けておくべきだと思います。
著者ほどのお金持ちであればなおさら不要のはずですが。
「車は安全じゃないでしょう」と言う人がいるかもしれませんが、自分で運転している限りは、自分でコントロールしていくらでも安全に行くことができます。私はすこぶる安全運転なので何の問題もありません。これ、典型的な「安全」と「安心」の混同です。こんなにわかりやすい例は初めて見ました。
そこへいくと、飛行機というのは一か八かです。自分では気をつけようがない。墜落する確率はほぼゼロに近いなどと言いますが、それでも、飛行機に乗るときは誰もが命の危険を感じるはずです。
自分でコントロールできるか否かとは関係なく、飛行機のほうが車の何十倍も安全です。
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ところで、著者はかなりの高所得者のようです。
1年半落ち以内の中古車という条件で
ベンツのCクラスのC200、C240などが年収の一ヶ月相当で買えるという記述から、ざっと年収4000万円は下らないと推定できます。庶民の年収とは文字通り桁が違いますね。