果てしない経済成長が人々に幸福をもたらすとは限らないという事実、ピークオイルや気候変動により経済成長が物理的限界にぶつかるであろうという事実を示し、効率最優先のグローバル経済から地産地消型の「地域経済」への転換が必要であると説きます。
一般的に一人当たりの収入がおよそ一万ドルまでなら、一貫して幸福は金で買うことができるが、それを超えると相関関係はなくなるという研究者の報告がある。1万ドル≒110万円ですから物価の高い日本ではもう少し閾値が高くなりそうですが、世界的にはこの程度の閾値を超えるとお金の効用が急激に下がるということは想像できます。
ピークオイルとは、石油産出量がピークに達して減少に転じることです。その時期については2005年だったという説もあれば、2020年以降という楽観的な予測もあります。いずれにしても遠い将来の問題ではなさそうです。化石燃料は長い時間をかけて蓄積された奇跡の産物であり、ハイテク技術に支えられたバイオ燃料でさえ、そのエネルギー収支比は化石燃料の足元にも及ばないことから、
化石燃料の世界からバイオマスの世界へ移動するということは、エデンの園から塀の外へ出て行くようなものだろう。額に汗して暮らさなければならないはずだ。
化石燃料は法則に対する例外で、成長という一度きりの浮かれ騒ぎを引き受ける一度きりの恵みだ、というほうがふさわしいように思える。と表現しています。
つまり、あらゆるモノが長い距離を移動して消費者に届く現在のグローバル経済は、化石燃料のような奇跡的に安価なエネルギー資源に恵まれたおかげで成り立っているとも言えます。その奇跡の終焉に備えて、地域経済を再生する方向に少しずつでも舵を切っておく必要があるという主張が本書の核心なのですが、なかなか説得力があると思います。その結果として生産性が下がり経済成長にブレーキがかかることは避けられませんが、それは決して不幸なことではなく、むしろ地域との絆が人々を幸福にするという楽観的な見方をしています。
アマゾンのレビューに書かれている通り、翻訳の品質が今ひとつなのが残念です。
経済成長は持続するという前提を信じるインデックス投資家としては、精神衛生に良くない一冊かもしれません(笑)。