2017年12月30日

2017年末の資産残高推移

年末恒例の資産残高集計を済ませました。

資産残高推移2017.png

JPYベース(青線)でプラス11.1%、USDベース(赤線)でプラス15.3%となりました。ドルベースのほうがリターンが高いということは、つまり今年も円高でした。(2年連続)

年間支出の方は38%も増えていました。思い切って財布の紐を緩めた成果が出ています。これだけ支出を増やしても資産が減るどころか11%も増えるなんて、どうなってるんでしょうね。順風満帆とは、今年の株式市場のためにあるような言葉だと思います。

リタイアした年である2007年からのデータを並べてみましょう。
2007年: +6.8%
2008年: -37.4%
2009年: +17.3%
2010年: -4.7% 年齢+ACR=77
2011年: -13.7% 年齢+ACR=76
2012年: +19.2% 年齢+ACR=89
2013年: +31.5% 年齢+ACR=106
2014年: +15.4% 年齢+ACR=120
2015年: -1.0% 年齢+ACR=126
2016年: -1.7% 年齢+ACR=118
2017年: +11.1% 年齢+ACR=105

一年前のコピペになりますが、私の余命をやや多めに40年と見積もった場合でも、人生の時間残高はこの1年でマイナス2.5%のリターンでした。この数字は常にマイナスであることと、10年後には3.3%、20年後には5%と、減少ペースが次第に加速していくのが特徴です。資産が減るより速いペースで人生の残り時間が減少していることを実感せずにはいられません。

一年前の記事。
年に一度の資産残高集計を済ませました。 2016年の資産残高の変動は、JPYベース(青線)でマイナス1.7%、USDベース(赤線)でプラス1.1%となりました。株価も為替もそこそこ変動があったようですが、終わってみれば私の名目資産残高はほとんど変わらず。至って平穏な1年だったと言...
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2017年12月25日

巨大な政府を養うために貧しくなる人々

ユキノシバリさんのブログより。
コンビニでパンを買うときに、いったいどれだけの税金がかかっているだろうか? 小麦を仕入れれば関税で3.5倍にな … 続きを読む 人はパンのみにて生くるにあらず
shibari.wpblog.jp
所得税や住民税を課税されない低所得の人だって沢山の税金を間接的に払うのである。図のように単純化したモデルでさえ、食費の7~8割が税金になっているという話になる。

人が生きていくのに最低限必要な食料品の末端価格には、負担を明確に自覚できる消費税だけでなく、間接的に多額の税金が上乗せされているという話です。それを知らない日本人が多いのは、政府が巧みに迷彩を施しているからですね。

関連記事:
最近ブログ更新をサボリ気味なのと対照的に、ほぼ毎日何かしらリンクを貼っているツイッターで、やや多めの反応があったのがこちら。 賛成 "お米も、価格は 2160円 (消費税 160円、米農家への利益転嫁額 1200円)って書いてあるとか。こうしたら皆、TPP に反対か賛成か判断しや...
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食費の7~8割が税金なら、商品そのものの価値は額面の1/5~1/3程度ということになります。この事実を知るだけでも、やはり日本は決して「コスパの良い不思議の国」などではないことを確信します。本来の価値が30円の商品を手に入れるのに100円払わなきゃいけないなんて、コスパ悪すぎと言うしかないでしょう。

本来なら、はるかに少ない労働時間で楽に生きられるはずなのに、沢山の負担をさせられることで生活が割高になっているのである。

同意。
上乗せされた税コストを払うために、本来なら余暇であったはずの時間まで労働に割り当てて金を余分に稼がないといけない、これが現実だと思います。私の場合、税コストの上乗せがなければ40歳どころか30歳でもリタイアできていたかもしれません。現役最後の10年は税負担のためだけに働いていたとなると、なんとも言えない空虚な気持ちになります。

参考ツイート:

政府の介入のない自由な市場であれば、自給自足するより市場を介して分業したほうが何桁も割安にモノやサービスを手に入れて生きることができるはずなのである。

だが実際のところ、分業したほうが割高になりそうな水準まで税金を上乗せされている。他人と分業するだけで、とたんに政府に多くをピンはねされてしまうのである。

巨大な政府を養うという前提がなければ、外食のほうが自炊よりうんと安くて当たり前なのだと言ったら、現状がどれくらい異常なのか分かるだろうか?

巨大な政府の存在が当たり前だと思っている先進国の人々にとっては、あまりピンとこない話かもしれませんね。

たとえば日本では、ワンルームマンションでさえ専用のキッチンがあって、食費を抑えるために自炊しているなんて、とても不思議な光景です。本来なら一人で一人分の食事を専用キッチンで調理するよりも、誰かがどこか別の場所でまとめて調理したほうが遥かに生産性が高い(=安くつく)はずなのに。

東南アジアのような物価の安い国に行ってみるとわかりますが、自炊なんてしているのは金持ちだけで、庶民の住居にキッチンがないのは当たり前です。そんな生産性の低いことをしていたら高くつくからです。いたるところにコスパの良い店があります。政府が巨大化していない新興国では、「自給自足するより市場を介して分業したほうが何桁も割安にモノやサービスを手に入れて生きることができる」を実践する人々の姿を見ることができます。

分業と市場のメリットを最大限に享受する彼らと比べると、本来よりも遥かに高い値段がついている外食費を削るために、わざわざ生産性の低い自炊を選ばざるを得ない日本人の方がよっぽど貧しい暮らしをしているように見えてしまいます。

参考ツイート:



2017年12月20日

「枠組みのない自由」は地獄?

ツイッターに流れてきた面白いツイート。

TRPGとはテーブルトーク形式のロールプレイングゲームのことだそうです。プレイしたことはないのですが、PCゲームだとオープンワールド系のものをイメージすれば近いのかな。

この気持ち、ゲームの中の話なら私にもわかります。何の攻略目標も与えられず、何でも自由にやってみてよと言われても、かえって何もする気が起きなくなり、遅かれ早かれ飽きてプレイをやめてしまうだろうなと。

リアルの世界でも同じような意見をちらほら見かけます。自由すぎるよりも、ある程度の制約がある方がいいみたいな。

この一コマを
「リタイア生活には無限の自由があると信じた無職が、自由を満喫して何していいか分からなくなって叫んだ内容がこちらになります。」
と紹介しても、違和感ない人もいるかもしれません。

でも、「枠組みのない自由」を「地獄のような荒野」とみなすのは、ちょっと違うのではないかと思います。本当に枠組みがないのなら、何もしない自由もあるはずです。何していいか分からない状態を地獄だと感じるのは、何かしなければならないという義務感のようなものに駆り立てられているからでは? 自由にそのような条件が付いているのなら、最早それは「枠組みのない自由」ではありません。

それは自主的に決めた枠組みにすぎないので、取り外すのもまた本人の自由なんですが、自由が地獄だと言う人はなぜかそれに気付かない傾向があるような気がします。

俺は「自由」より「犬の首輪」がほしいと言うのなら、それを与えてくれる誰か(何か)を探すのもまた自由です。忠犬契約でも何でも、当事者同士で好きに合意すればよいだけです。自由なんだから誰にも依存せずに自立しなければならない、とは一言も言ってないわけです。これが本当の「枠組みのない自由」という概念だと思います。

関連記事:
p.198  ある程度の貯金があってこそ、隠居も屈託なく楽しめるってもんです。  基本的には明日死んでもいいように生きるけど、死ななかったときのためにもしっかり蓄えておきたいところ。 「ある程度の貯金」とは、半年分の生活費のようです。(p.197より) 私の場合のそれは半世紀分の...
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2017年12月15日

ソニー銀行に口座開設してみて気付いたこと。Sony Bank WALLET は意外と使えるかも

今までメインバンクとして使ってきた住信SBIネット銀行の劣化が激しく、乗り換え候補としてソニー銀行に口座を開設してみました。口座維持手数料の類はありませんので、円口座だけでなく利用可能なすべての外貨口座を開設してあります。

キャッシュカードがSony Bank WALLET(以下SBWと略します)という名前のデビットカードを兼ねているのですが、これが意外に使えそうです。

まず国内ショッピングですが、平ステータスだと還元率は0.5%なのでP-oneカードには負けます(100円未満の小額決済に限ってSBWのほうが有利)。シルバー(総残高300万円以上)のステータスを維持すれば還元率は1%となり、P-oneカードよりやや有利になります。(P-oneカードは決済ごとに1%割引を計算して端数を切り捨てるため、月間総額から1%キャッシュバックするSBWが有利)

次に海外ショッピングですが、為替手数料はドルやユーロだと0.13%~0.14%程度(来年の3月末まではこれが無料になるキャンペーン中)で済み、クレジットカードの為替手数料よりも遥かに有利です。クレジットカードでキャッシングして現金払いする場合と比較しても、数日分の利息と繰り上げ返済の手間がかかることを考えるといい勝負になっていると思いますし、為替手数料無料キャンペーン中ならSBWの圧勝です。ただしソニー銀行が扱っていない通貨で決済すると1.76%もの事務処理経費が上乗せされる罠があるので、マイナー通貨で使う場合は注意が必要です。

最後に海外ATMでのキャッシングですが、これは上記の事務処理経費に加えて海外ATM利用料と現地ATM設置機関利用手数料が上乗せされるので、論外です。現金が必要なときは素直にクレジットカードでキャッシングして繰り上げ返済しましょう。

関連記事:
NewSphereの記事より。 経済学者式の考え方で、次の海外旅行はお得にいこう 2016年、海外旅行や出張者の数は過去最高記録を更新し、今年はすでにそれを上回るペースで進んでいる。海外を旅するのに、パスポート以外で絶対に必要なもの、といえば、ヨーロッパならユーロ、日本なら円、ロ...
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2017年12月10日

千葉市長の「大した権力ですね」という自己紹介

千葉市長熊谷俊人氏のツイートより。
詳しくは追っていませんが、コンビニにエロ本を裸のまま陳列するなという千葉市の「提案」についての発言のようです。

???

履き違えているのは一体どっちなんでしょう。市長や議会が公権力を行使して、私企業の営業の自由を侵害しようとしている構図にしかみえないのですが…。

「大した権力ですね」というセリフは、多数派の支持さえ取りつければ私人の自由を侵害できるなどと考えている千葉市長自身に向けられるべきものです。

行政の介入を批判している人たちは、そのような権力に対抗しているだけで、自らは何の権力も行使していません。

そもそも権力とは何でしょうか。
ja.wikipedia.org
権力(けんりょく)とは一般にある主体が相手に望まない行動を強制する能力である[1]。
「強制」する能力、というのが重要なポイントです。

その能力を持っているのは政府や自治体であり、私人や私企業にそんな能力はありません。つまり権力とはすべて「公権力」のことです。「私権力」というものはありません。大企業や金持ちを権力者とみなして公権力と混同する人もいますが間違いです。

市長のような権力を行使する側にいる人間が、権力について無知なのは恐ろしいことだと思います。

2017年12月5日

早期リタイア後も資産のほとんどを株式ETFで保有する理由

プリウス51系さんのブログより。
最初にお断りしておきますが、私は他人の人生設計にイチャモンつける気は毛頭ありませんし、その方の人生がどうなろうが知ったことではありません。私より若くしてすでにセミリタイアをしている方々に対しては資産の大小問わず尊敬・敬愛しております。なぜこ
freedom3.asia
●ケースその1

年齢:40代(独身)
資産:2億円
年間生活費:100万~120万(超ドケチ)
(中略)
万が一、リーマンショック並みの大暴落が来れば、2億円の資産が3分の1になる可能性もゼロではありません。逆にアベノミクス並みの大相場になれば4億も可能ですが・・・
でもねぇ、2億でさえもはや意味の無い金額なのに4億になったところで何が変わるのか?
●ケースその2

年齢:40代(独身)
資産:2億円
年間生活費:300万~400万(推定)
(中略)
こんな恵まれている人ですが、やはりほとんどの資産を株式に投資しております。
ケース1の方ほど極端ではありませんが、2億円あればもう増やさなくても一生お金に困ることは無いのにです。

早期リタイアした人にもそれぞれ考えがあってのことなので、個別のケースについてのコメントは控えます。

彼らとは資産総額こそ違いますが、私もほとんどの資産を株式(ETF)で保有しているのは同じなので、このネタに便乗してその理由を整理しておきます。

「資産の時価がA円、年間生活費がC円とすると、あとA/C年分の生活費が賄えるはずだ」というルールは非常に簡便で、私も早期リタイアの判断基準としてこれを採用しました。

ただし、このルールには大事な前提があります。それは資産から得られるリターンが今後のインフレ率以上であること、言い換えれば資産の実質リターンが0%以上であることです。早期リタイア後の長い無職生活に備えるのに、インフレリスクを無視するわけにはいかないからです。

「現在の時価でA円の資産があれば一生お金に困ることは無い」とは言っても、もしその資産がインフレリスクを厚めに取る構成になっていれば、そうとも言えなくなってくると思うのですよ。もちろん、残りの人生の長さにもよりますが。たとえば全額を円定期預金で保有している場合など、インフレが進めばその購買力がいつのまにか半分になってしまうようなことも、歴史を振り返ればあり得ないことではありません。

つまり私がリタイア後も株式の保有を続けているのは、もっと資産を増やしたいという意図ではなく、インフレリスクをできるだけヘッジして資産の購買力を長期的に維持したい、という資産防衛の意図があってのことです。インフレヘッジのためのローコストな選択肢が今のところは株式インデックス以外に無いという消極的な理由なので、たとえば暗号通貨がもっと普及してその購買力が今よりずっと安定するような時代が来たら、そちらに乗り換えてもいいと思っています。

資産防衛するにしてもフルインベストメントする必要はなくて、7割程度でもよいのでは? という疑問は確かにその通りかもしれません。私の場合は、インフレ税の支払いが特別に許せないものであるという政府への私怨(笑)が、無リスク資産の必要以上の保有を全力で避ける動機になっています。

関連記事:
橘玲さんのツイートより。 インフレ税で財政赤字を処理するのは、経済学的には最適解なのでしょうが、外貨(Bitcoin)の保有などで富裕層はかんたんに回避できるので、経済格差をさらに広げることなると個人的には思います。 — 橘 玲 (@ak_tch) 2017年7月10日 天文学的...
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NightWalkerさんのブログより。 リスク資産比率はどの程度取るべきなの? - NightWalker's Investment Blog 前回のエントリーで、基本事項として、ローコスト投資、分散投資、 キャッシュポジシ... nightwalker.cocolog-nif...
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2017年11月30日

「PCは知人から借りられる」判決への批判が的外れな件

ツイッターより。
これがたまたま目に入ったのですがほんの一例で、類似の批判ツイートはいくらでも見つかります。

では判決を伝えるニュース記事を見てみましょう。
 生活保護受給者のパソコン購入費は「自立更生の出費」と言えるのか――。自治体による生活保護費の返還請求をめぐる訴訟で、東京地裁は「パソコンは知人に借りることができる」として、自立更生の費用とは認めない…
www.asahi.com
判決によると、原告は東京都東村山市で一人暮らしをしている女性で、2011年11月に甲状腺の手術を受けた後、仕事のあてがなくなり12年2月に生活保護の受給決定を受けた。同年5月~13年5月まで、計122万円を受給した。

 だが、女性が12年3月から半年あまり派遣会社で働き、収入を得たことが判明。同市は約73万円について返還を求めた。女性側はパソコンの購入費は「自立更生の出費」にあたると主張。「求職活動や収入申告に必要だった」として返還は不要と訴えた。
記事の中身をちゃんと読めば、返還請求を受けた73万円は、収入があったのに申告せずに不正受給した分であることがわかります。本来なら全額返すのは当然の事例で、原告側がせめてPC代(たとえば10万円とする)だけは除外して63万円返還で勘弁してくれとゴネている訴訟なわけです。

この状況で原告勝訴ってあり得ないでしょう。東京地裁の裁判官は何ら間違った判断をしていないと思います。

訴訟の内容をろくに読まずに、記事の見出しだけ見て誤解している人が相当数いると推測します。少なくともこのツイート主は「生活保護費でPC購入したらその金を返還させた」と書いているので、生活保護費でPCを買うことを禁じるルールがあるとでも勘違いしていることは間違いなさそうです。

朝日新聞も、この内容の記事に「PCは人から借りられる」発言を殊更強調する見出しを付けてしまうあたり、なんとも残念なバイアスがかかったメディアだと思います。9月の判決を今頃記事にしているのも不自然ですし、何か胡散臭いものを感じます。

2017年11月25日

『無敵の思考』 ひろゆき (著)



こちらのブログで紹介されていた本です。彼の人生観に共感したので読んでみました。

その「できるだけ楽しく暮らす」ためのルールが21個列挙された本なのですが、正直、個別に共感できるものはそんなに多くはなかったです。そのうちの一つを挙げるとすればここでしょうか。

p.69
自分が快楽を得るためにお金が必要な人は、人生のランニングコストが非常に高くなります。
(中略)
 そこの欲と向き合うことをせずに、ただ欲のままにそれを満たし続けるのは、不幸な結末しか待っていません。
つまり「足るを知る」ことができるか否かですよね。有限な人生の中で無限の欲望を満たすことはできませんから、どこかに線を引いて諦めることになります。他人から見てランニングコストが高くても、自分が引いた線の内側に収まっていればそれでいいと思います。

p.149
今の時代は、「ここまでお金を貯めたら労働者としての生活は卒業して、ゆっくり生活できる」というラインが見えなくなります。
そのラインがはっきり見えていた時代の方が例外だったのだと思います。私の親世代はその例外にあたり、叔父たちも含め、きっちり60歳で定年退職して年金と資産を使いながらゆっくり生活している人が多いですね。

しかし今の時代でも、人間の寿命と自分の生活コストからするとだいたいこのへんにラインがありそうだなというのは計算できるので、ある程度稼いだらさっさとリタイアする人生も不可能ではありません。

暗い話になりましたが、安心できるまでお金を稼ぐことより、今の生活で満足できるように考え方をシフトするほうが手っ取り早いということがわかっていただけたのではないかと思います。
早期リタイアを志向するような人からすると常識とも言える考え方です。何よりも「安心」が第一と考える人は、早期リタイアなんて生き方は選択しないほうがいいでしょう。

p.206
先進国で生まれた人は、だんだん経済的に息苦しくなることが、おいらから見ると自明なので、「経済と自分の幸せを切り離せるか?」ってのが、大事なのかなぁ……、と思っています。
本当に経済と切り離してしまったら現代人は生きることさえ困難になりますよ。経済と自分の幸せが密接につながっていること自体は問題ではありません。ひろゆき氏が言いたかったのは、できるだけお金を多く稼いで多く使うライフスタイルに幸福を見出す人は不利だ、って事じゃないかと思います。

なぜそうなるかと言うと、お金を稼げば稼ぐほど、使えば使うほどに罰金が重くなるシステムだからです。参考ツイート:

こんな世の中だと、少なく稼いで少なく使うライフスタイルで十分幸せだと思える人のほうが有利です。

p.207
とはいえ、この本は編集者の種岡健さんに、過去に書いたことや話したことをまとめていただいただけなので、ちゃんと自分で書いたのは、「おわりに」だけなんですけどね。
なんと!
まさに副題どおりの「コスパ最強」な出版方法を実践したことになりますね…。

2017年11月20日

『預金封鎖に備えよ』 小黒一正 (著)



刺激的なタイトルとは裏腹に、凡庸な内容の本でした。

日本政府の財政破綻は最早避けられない前提のもとで、個人としてはどういった資産防衛策が有効かという話に興味があったのに、政府や日銀目線の金融政策の話が本書の大部分を占めており、期待外れに終わりました。

最後の最後に「資産防衛の決め手は『仮想通貨』か」という見出しのセクションがあり、わずか14ページの中でそれらしい事に触れてはいたものの、ごくありふれた内容でした。

結局、著者は個人レベルでできる資産防衛なんかにはほとんど興味がなくて、マクロな視点で国家の財政再建の方法論を語りたい人なんだと思います。財務省にも勤務した経験のある経済学者だからそういう視点になるのはやむを得ませんが、だったらこんな思わせぶりなタイトルは付けないでほしかったですね。

p.242-243
富裕層ではない多くの若者世代や子育て世代にとって、資産防衛を考えることはあまり意味がありません。しかしながら、今後、いざ財政危機に直面したとき、もっとも被害を受けるのは彼らです。
では座して死を待つしかないのかと言えば、そうでもないのです。今のうちに備えるべきことは、大きく分けて二つあります。
一つは、自分に投資をして能力を高めておくこと。(中略)
そしてもう一つは、しっかり財政再建できるような方向にコミットすることです。社会保障は厚いほうがいいし、税金は安いほうがいい。しかしそれでは、財政が破綻するのは明らかです。そして破綻に至れば、資産も人生設計も大きく毀損するだけです。早くそのことに気づいて、国の選択を注視する必要があります。
語り口は丁寧ですが、要するに「資産防衛なんて無意味な抵抗はせず、みんなで痛みを分かち合って政府の財政再建に協力しましょう」と言ってるだけに見えます。冗談じゃないですね。本書のタイトル『預金封鎖に備えよ』とは、「預金封鎖(を一例とする政府の財政再建策)の痛みを覚悟せよ」という意味だったのかと、ここまで読んでやっとわかった気がします。

財政が「破綻に至れば、資産も人生設計も大きく毀損するだけ」と脅していますが、それは政府に強く依存するポートフォリオや人生設計を選択してきたからそうなるのであって、政府への依存度を十分に下げることができれば、無傷とは言いませんが「大きく毀損」することは避けられるはずです。
参考ツイート:

p.244
限りなく絶望的ではありますが、まだ財政再建の道があるとするならば、それを放棄する手はありません。
著者本人も絶望的だと認識しているのに、まだ望みはあるから覚悟せよとは、酷すぎる話ではありませんか。財政を死守するために終わりの見えない増税に苦しんだ先に、一体どんな希望があると言うのでしょう。このような精神論が蔓延っている状況は終戦直前の日本とそっくりに見えます。

「限りなく絶望的」なら、財政再建など潔く放棄してさっさと破産処理してしまいましょう。

関連記事:
以前から不思議に思っていることの一つが、自らドケチを名乗るmushoku2006さんが消費税増税を支持していること。ドケチにあるまじき行為。(笑) 資産課税のような後出しジャンケンが許されないことについては意見が一致するんですけどね。 過去の行為についての税金は勘弁して欲しい 2...
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マネーボイスの記事より。 衰退国家の日本で最後に生き残るのは「一握りの投資家」だけと知れ=鈴木傾城 | マネーボイス 日本は手遅れだ。どんな名政治家が出てきても、どんな提言が為されても、どんな少子化対策が実行されても「遅すぎる」ということに気付かなければならない。 www.mag...
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その3 の続きです。 p.190 日本という国は、税金で集めた額のほぼ倍の金を使っている。 (中略) こういう話をすると、「税金の無駄遣いをなくせ」という話になるが、倍ですよ、倍。無駄遣いとか節約どうこうという額ではない。公務員を減らすとか、そういう額では全然ないのだ。 たしか...
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2017年11月15日

『ブロックチェーン・レボリューション』 ドン・タプスコット, アレックス・タプスコット(著), 高橋 璃子(翻訳) その2



『WIRED』日本版編集長、若林恵さんによる巻末の解説より。

p.362-363
ブロックチェーンって、どっちかというと、というか日本では完全にフィンテックの文脈に乗っちゃってて、なんとなくつまんないなあ、って思ってたんですよ。「ブロックチェーンって、そういうことなんだっけ」っていう疑問がありまして。
同感。
フィンテックはファイナンス・テクノロジーの略なので、その守備範囲は金融に限定されますが、ブロックチェーンは金融以外にも広く使える技術です。あと、フィンテックの中にはブロックチェーンと無関係のものも多くあります。たとえば国際送金サービスを提供する TransferWise は代表的なフィンテック企業ですが、彼らの送金システムは今のところブロックチェーンを使っていません。

p.366
いずれにせよ、「お金の民主化」というのは、普通に考えて、近代世界の構成上あるまじき事態であって、インターネットがそれを可能にしてしまうのが明らかである以上、ぼくらは、近代世界を形作ってきたシステムそのものがひっくり返り得る、その歴史的転換のとば口に立っているのかも、ということが、まあその特集を通じて、見えてきちゃったんですね。
お金の民主化は「近代世界の構成上あるまじき事態」とおっしゃいますが、トップダウンに為政者目線で捉えると不都合だという話でしかなく、近代世界を形作っているのは国家というシステムよりも前に、まず最小単位である人間です。人間一人ひとりがフラットな視点で眺めるならば、お金の民主化は大変好ましいことだと思います。

p.368
──ビットコインはあまり面白くないっていうのはどうしてなんですかね。

うーん。ここは説明しようとすると若干矛盾がありそうで難しいところなんですけど、ビットコイン信奉者にありがちな極端なリバタリアニズムは問題提起としては面白いんですけど、やっぱりちょっと現実離れしているところがあって、気分的には若干苦手なんですね。
いや、暗号通貨の何が面白いかって、ガチガチの中央集権制である国家管理通貨を使わざるを得ない現状から、人々を解放しようとしている事が一番でしょう。その最大の利点を抜きにして暗号通貨を語っても、何も面白くありません。

とはいえ、ビジネス界隈でフィンテックの名のもとで語られるビットコインやブロックチェーンの話は、それはそれで、なんというか利便と利得の話でしかないように見えて、そっちはそっちでもっとつまらないなあ、と。
これは同感。
利便と利得の追求自体が悪いわけではないのですが、特に日本国内では金融機関の既得権温存が前提になっていて、利用者の利便そっちのけのサービスしか出てこないのではないかと危惧しています。

関連記事:
現代ビジネスの記事より。 満員の「仮想通貨セミナー」で明かされたビットコインの光と闇(伊藤 博敏) 仮想通貨のトレンドは急速に右肩上がりだ。9月2日には過去最高値の1ビットコイン54万円を突破した。今年1月に10万円前後だったので5倍強。ビットコイン長者が続出している。 gend...
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p.9 飛行機が革命であったように、そしてインターネットが革命であったように、ブロックチェーンも革命だ。それはパラダイムの変革をもたらす。つまり、世の中をひっくり返す。 飛行機やインターネットに匹敵するかどうかはわかりませんが、 ブロックチェーン の発明は今後の世の中を大きく変え...
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2017年11月10日

『ブロックチェーン・レボリューション』 ドン・タプスコット, アレックス・タプスコット(著), 高橋 璃子(翻訳) その1



最近読んだ本です。
副題は『ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか』。

以前読んだ『ブロックチェーン革命』と同様、楽観的な未来予想図を描いています。

p.195
ピケティは資本主義を問題にしているけれど、悪いのは資本主義そのものではない。資本主義のしくみは、うまく使えば、富と豊かさを生むためのすばらしい道具になる。問題は、つぎはぎだらけの金融システムのせいで、そのメリットにふれることすらできない人が多すぎるということだ。
同意。

銀行を中心とする既存の金融システムがお粗末過ぎるのです。なぜそんなお粗末なものが21世紀まで生き残っているのかと言えば、各国政府が金融業をガチガチに規制、統制してきたせいでサービス提供の自由が著しく制約される上に、参入障壁も高くてまともな競争が生まれなかったからです。

参考ツイート:

p.197
「アフリカの多くの国では固定電話が整備されていませんでしたが、携帯電話がこれを解決しました。一足飛びに携帯の時代になったんです。ブロックチェーンはこれと同じ効果を金融の世界にもたらすでしょう」
既存の金融システムが深く根を下ろしている先進国よりも、銀行口座すら持てない人々が溢れている金融後進国の方が未来を先取りする可能性も見えてきますね。先進国でも今後、規制の上にあぐらをかいて現状維持しか考えていない金融機関は、どんどん先細りになっていくと思います。

参考ツイート:

(つづく)

2017年11月5日

リタイア後の支出レベルと現役時代の所得は無関係

橘玲公式サイトより。
イギリスの経済学者2人が書いた『ライフシフト』(東洋経済新報社)で、高齢化時代の資金計画が試算されている。それによると、毎年所得の10%を貯蓄して(けっこう大変だ)、老後の生活資金を最終所得の50%確保しようとするなら(かなりギリギリの生活だ)、平均寿命85歳でも70代前半まで働きつづけなくてはならない。平均寿命が100歳になれば条件はさらに厳しく、80代まで働きつづけるか、それが無理なら引退時の所得の30%という貧困生活に耐えるしかない。
ここを読んだ時、かなり違和感がありました。

まず、「毎年所得の10%を貯蓄」することが「けっこう大変」なんですか?
この文脈での「所得」とは税法上のそれではなく年収と同義だと解釈したとしても、たとえば年収400万円なら40万円です。毎年40万円すら使わずに取っておくことが大変だと感じる人は、かなりの浪費体質ではないでしょうか。

以前読んだ本では、現役時代の貯蓄が年収*年齢÷10に満たない人は「蓄財劣等生」と言われています。関連記事:
アメリカのミリオネアのほとんどは、高級住宅街には住んでなくて、高級車にも乗ってなくて、高価なスーツや腕時計も身に着けていない、ごく普通の人たちであるという事実を、アンケート調査などで明らかにしています。 なるほどと思った部分を抜粋してみます。 金持ちの特徴を三つの言葉で言い表せば...
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たとえば22歳から42歳までの20年間毎年400万円の収入がある人の場合、1680万円の貯蓄が目標になります。橘氏が「けっこう大変」と言う10%ルールだと20年間で800万円。こんなヌルい目標では完全に蓄財劣等生になってしまいます。


次に、「老後の生活資金を最終所得の50%確保」だと「ギリギリの生活」になり、「引退時の所得の30%」だと「貧困生活」になるという、その根拠が不明です。「所得」ではなく「支出」を現役時代の50%や30%に切り詰めるという話ならわかりますよ。しかし橘氏や『ライフシフト』という本が基準にしているのは、なぜか収入の方なんですよね。そんな基準は、収入と支出が綺麗に比例している人でなければ使えないと思うのですが…。

私の考えだと、リタイア後の支出は資産残高と時間残高のバランスで決まるだけです。今後の生存可能年数を計算するのに過去の支出を参考にすることはありますが、過去の収入というパラメーターの出番はどこにもありません。

リタイア直前にどれだけ高所得なAさんでも、生活コストが高すぎて余命の長さの割に蓄えた資産が少なければ、リタイア後の支出はそれに見合ったものに下げる以外にありません。そんな「貧困生活」は嫌だと言うなら橘氏の言うように70代まで、下手をすると死ぬまでリタイアできない人生になるだけのことです。(むしろそういう人生を望んでいる人も少なくないことは知っています。)

対照的に、低所得でも蓄財優等生のBさんなら、リタイアが原因で生活が貧しくなる可能性は低くなります。それどころか、これ以上の蓄財は不要だと判断した時点で早期リタイアできる可能性も見えてきます。私はこちらの人生を望み、実践しています。

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