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日本はなぜ貧しい人が多いのか―「意外な事実」の経済学― - 選書・編集者のことば
第2章「格差の何が問題なのか」では、最初に出てきたグラフが興味深かったです。
紀元1年から2006年までの国別の一人当たり実質GDP(購買力平価)の変化を示しているのですが、1000年の時点ではほとんど差がなく、1820年でも最大3.6倍だったのが、2006年で12倍まで拡大しました。
要するに、1700年ごろまで、世界はほとんど一様に貧しかった。ところが、その後の300年で、世界のある国は豊かになり、他の国は貧しいままだった。これは、豊かな国が豊かなのは、他の国を貧しくしたからではないことを示唆する。格差とは相対的なものなので、豊かな国がより豊かになるだけで格差は拡大します。ところが、より貧しくなった国はなく、世界全体で見ても豊かになっているわけです。素晴らしいことです。
国だけでなく個人の豊かさについても同様で、所得格差の拡大を好ましくないことだとする考え方は、豊かな人の足を引っ張る制度に結びつきやすいので注意が必要です。
この後
豊かな国が豊かなのは、他の国を貧しくしたからではないということは、現在、話題になっている個人間の所得格差を縮小する方策にも示唆を与える。と続くのですが、そもそもなぜ個人間の所得格差を縮小する必要があるのだろうか?と思ってしまいます。
たとえば豊かな人の所得(購買力)が3倍になっても、貧しい人の所得が2倍になれば、格差は拡大しますが誰も不幸にはなっていません。所得格差の縮小を目指すこと自体がナンセンスな気がします。
ある人の所得が低すぎて、日本国憲法の保障する生存権を満たせないとき、どうすれば良いだろうか。仕事を与えるのは良いことに違いないが、その仕事が、自動車の走らない道路、船の来ない港湾、飛行機の飛ばない空港を作ることだったら、格差の縮小はとてつもないコストがかかる。ということで、負の所得税を「気の利いた方法」として提案しています。
(中略)
それよりも、生存権を満たすためのお金を直接配ってしまった方が安上がりなのではないだろうか。ヨーロッパ諸国はそうしている。アメリカですら、日本よりもそうしている。
上記のような公共工事などに限らず、直接配ったほうが安上がりになるほど「とてつもないコスト」がかかる仕事というのは、意外に身近なところにも存在しています。関連記事:
著者本人の紹介記事はこちら。 社会保障の不都合な真実 - 学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学) - Yahoo!ブログ 前著の 『だまされないための年金・医療・介護入門』 よりも幅広く社会保障問題の真実を解説する本です。とりあえず年金問題だけを知りたいのであれば...
長くなりそうなので続きは記事を分けます。
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