2010年10月6日

『希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学』 池田 信夫 (著)



著者本人の紹介記事はこちら。
池田信夫 blog : 『希望を捨てる勇気』発売 - ライブドアブログ

池田信夫blogの読者にとっては、あまり目新しいことは書かれていないと思いますが、そうでない人には是非読んでもらいたい本です。

タイトルの意味するところは次の通り。
明日は今日よりよくなるという希望を捨てる勇気をもち、足るを知れば、長期停滞も意外に住みよいかもしれない。幸か不幸か、若者はそれを学び始めているようにみえる。

その一方で、ブログでは次のように書かれています。
池田信夫 blog : 老人支配の構造 - ライブドアブログ
最後まで読んでいただけばわかるが、これは「古い経済システムを延命すれば何とかなるという希望」を捨てないかぎり、長期停滞を抜け出すことはできないという意味である。
一見正反対の意味のようで実はどちらも正しいという、絶妙なタイトルだと思います。

以下に共感した部分を抜粋します。
問題は所得格差ではなく、企業に守られている正社員と労働市場からはじき出された非正社員の身分格差が固定されていることなのである。
いいかえれば現在の雇用規制は、経営者と労働組合の既得権を守るために非正規労働者を身分差別する制度だといえよう。
(中略)
その責任は第一義的には家父長的な労働行政と労使の結託にあるが、目先の温情主義で正社員だけを保護し、非正社員を差別してきた司法の責任も重い。
ワイドショーのコメンテイターが「こういう人々を救済するために派遣労働を禁止しろ」というと、多くの人々の共感を得る。しかしこのようなワイドショー的な正義が、結果的には弱者をさらに弱い立場に追い込むのだ。
経済学は、複数の目的のトレードオフの中から何が相対的に重要かを判断する学問である。(中略)
世の中にはトレードオフを無視して特定の目的が絶対的に優先すると主張し、他の目的との比較を許さない人が多い。
村上ファンド事件の一審判決は「被告の『安ければ買うし、高ければ売る』という徹底した利益至上主義に慄然とする」と糾弾した。このように市場経済を嫌悪するのは、日本の司法に広く行き渡った病気だ。


中高年の「ノンワーキング・リッチ」について。
私のNHK時代の同期は、今は地方局の局長ぐらいだが、話を聞くと「死ぬほど退屈」だそうだ。(中略)
「あと5年は消化試合だよ」という彼の年収は2000万円近い。
こんな事例を見たら、受信料払うのがアホらしくなりません?

要するに、政策立案に政治家はほとんど噛んでいないのだ。
本来の内閣を中心とする指揮系統とは別のルートで政策が実質的に決まる「官僚内閣制」の解説はたいへん勉強になりました。

事業仕分けで話題になっていたスパコンの件について。
要するに京速計算機は、「世界一速いコンピュータ」の座を奪回したいという国威発揚のために、1150億円もの巨費を投じてつくられるのだ。(中略)
しかも1150億円というのは、現段階の建設費だけの見積にすぎない。(中略)
2000台近くのラックの消費電力は40MWで、年間維持管理費は80億円強。建設予定地には関西電力の専用発電所の建設まで決まったというから、総経費はさらに莫大になる。(中略)
そして、このように巨額のプロジェクトが随意契約でITゼネコン3社の共同受注となった。スパコンは国際競争入札を行うのが常識であり、そうすれば国産より2桁安い海外メーカーが落札しただろう。この非常識なコストを負担するのは納税者である。
(中略)
要するに、これはスパコンの名を借りた公共事業であり、世界市場で敗退したITゼネコンが税金を食い物にして生き延びるためのプロジェクトなのだ。
やはり、無駄遣いの見本のような最悪の公共事業だったのですね。
ネット上の意見を見ていると仕分け人の蓮舫氏を悪者にしたい人が多いようなのですが、なぜこんな無駄遣いを擁護しようとするのか理解不能です。

昨今のインフルエンザをめぐる過剰反応や薬のネット販売の規制など、社会全体が「安心・安全」を理由にして過剰規制の方向に流れ、既得権を護持する動きが強まっている。こういうなかで諮問会議がそれに迎合し、活力を無視して安心だけを強調し、日本経済を「リスク最小・リターン最小」の特異解にミスリードすると、それによる長期停滞のコストは国民全体が負担する結果になるのである。
ほんと、無意味な規制強化で余計なコストを押し付けられるのは勘弁して欲しいものです。関連記事:
楽天からのメールより: 厚生労働省は、省令により、一般用医薬品の67%を占める第1類医薬品 及び第2類医薬品のネット販売を2009年6月から禁止する意向です。 この販売禁止には合理的な理由は見当たらず、高齢者、障害をお持ちの方、 外出が困難な方、地方等のため医薬品を販売している実...
yumin4.blogspot.jp
400ページを超える大作ですが、その割には読みやすい本です。 日本人の集団知が衰退しているという話は、私も普段から何となく感じていたことで、  この郵政選挙で指摘されたのが「B層」と言われる人々の存在だった。これは自民党の言葉で説明すると「具体的なことは何もわからないが、人気やム...
yumin4.blogspot.jp

参考記事:
希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学作者: 池田信夫出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2009/10/09メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 492回この商品を含むブログ (53件) を見る「よい国をつくるには」「みんなが幸福になるには」というような人間的な要素を考慮せずに、日本経済の停滞の原因を冷徹に分析し経済の効率のみを追求しながら、日本再生への道筋を展望する。「規制緩和が所得格差を生んだ」「終身雇用は、日本の伝統だ」といった常識が本当はウソであること指摘しているところは興味深く読んだ。なかで印象に残ったのは雇用問題である。経済再生のためには、正社員の解雇条件を緩和して…
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希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学作者: 池田 信夫出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2009/10/09メディア: 単行本 上尾市図書館で借りました。 同じくらいの時期に、友人のTakashi さんも読まれてい..
acertainlight.blog.so-net.ne.jp
希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学、池田信夫池田先生が本を出しました。この本は氏がブログで主張してきた内容をまとめたものです。日本経済の問題点がとても分かりやすく網羅されています。僕も池田先生や城氏と同様に、日本の終身雇用と年功序列の硬直し
blog.livedoor.jp


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