2017年3月14日

国民年金はすべての世代で払い損はない、って本当?

日経の記事より。
 20歳になると年金制度の対象になりますが、国民年金保険料の納付率は6割強にとどまります。厚生労働省の「国民年金被保険者実態調査」によると、滞納理由で多いのは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」という回答です。保険料は年間で20万円に迫り…
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厚生労働省は14年の財政検証に基づき、年金の世代間の給付と負担の差を試算しています。様々な経済状況下で各年齢の人が平均余命まで生きたと仮定し、満額払った保険料に対して受け取る年金の総額を出しました。「国民年金はすべての世代で保険料の払い損はないという結果でした。半分が税金で支払われているからです」とみずほ総合研究所の堀江奈保子上席主任研究員は指摘しています。
厚生年金は労使折半だからお得という誤解とよく似た話で、加入者が直接負担する保険料しか計算に入れていないことが誤りなのです。「半分が税金で支払われているから」その分は計算に入れなくていいのですか? そんなわけないでしょう。その税金は誰が払っているのでしょうか…。

さらに国民年金の場合は国庫負担のうちのざっくり半分は国債で将来世代へ先送りしているので、先行世代がその分だけ得をするのは当たり前とも言えます。もし仮に税負担も含めて試算した結果が「すべての世代で払い損はない」だったとしても、ここで言う「すべての世代」とは、先送りされた借金を負担せずに逃げ切れる世代だけを指しています。「将来世代も含めて払い損になることはない」とは一言も言っていないわけです。逃げ切りラインがどこになるかの予想は難しく、自分が将来世代の方に含まれない保証などどこにもありません。

このように、負担を見えにくくして先送りする一方で受益は見えやすく強調することで、誰もが得をするような錯覚へ誘導するのは、公営制度設計における常套手段です。厚労省の試算が結論ありきなのは当然として、民間企業の「上席主任研究員」ともあろうお方がそれを知らないはずはなく、何らかの意図があって全力で年金制度をヨイショしているようにしか見えません。

将来世代をも巻き込む莫大な税負担がなければ支えきれないような欠陥制度を、何とかして擁護しようと必死で屁理屈をこねくり回すのは、そろそろやめにしましょう。

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1 件のコメント:

  1. 個人が払い込んだ分より受け取りが多い、だからお得だ。
    という理屈が成り立つのならば、直接の払い込み額を極限まで減らせばいいと思います。
    いっそ月額1円にすればいいのです。
    1円の投下に対して、リターンが数万倍~十数万倍という、夢のような投資話になります。
    そのぶん給料が減り税金が増えるに決まっていますが、気にしない人が多いようですし。

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