2011年8月20日

『35歳からのお金のリアル』 人生戦略会議 (著)  その2



『35歳からのお金のリアル』 人生戦略会議 (著)  その1の続きです。

第5章「健康と年金」では、長生きをした場合に少しでも得をするために、受け取る年金額を増やす方法を色々紹介しています。
たとえば、国民年金には、定額の年金保険料に「付加年金」を加えて納めることで、65歳からもらう年金を少しばかり増やせるという制度があります。
(中略)
単純計算でみれば、65歳から年金を受給する場合、67歳になるまでの2年間生きれば、元が取れます。
要するに、自分が67歳よりも長生きすることに総額12万円を賭ける(今のところは有利な)ギャンブルと言えます。

ただ、このような制度に敢えて加入するのは、長生きする自信のある健康自慢の人たちばかりでしょうから、ほとんどの人が67歳以上生きて「元を取る」ことになり、やがて収支が合わなくなるのは目に見えています。たまたま現在の人口ピラミッドに都合の良い賦課方式だからこそ、損益分岐点が若くても何とかなっているだけで、30年後には80歳以上生きないと元が取れない制度になっていてもおかしくないと思います。

さらに国民年金基金についても紹介していますが、これも任意加入の制度である以上、付加年金と同様に、原理的には「元を取る」ためのハードルが強制加入の年金制度よりも高くなってしまうこと、途中解約ができないこと、さらには、
最大のデメリットで、もしかしたら損失につながるかもしれないのは、「物価スライド形式でない」ということです。
これは致命的です。
30年後に毎年360万円もらえると言われても、その購買力がどの程度なのかは、今後30年間のインフレ率によって大きく変動しますからね。
要するに、国民年金基金はインフレリスク丸抱えの金融商品なのです。

最後には民間保険会社の「個人年金保険」まで紹介して4階建てに挑戦、などと書いているのは、さすがにやりすぎでしょう。そこまで不利な金融商品に手を出さないと老後の年金不安が拭えない人は、あらゆる不安ビジネスの餌食になりかねないと思いますよ。

「なーんだ、結局マジメに払うのがもっとも得なのか」
じつは、そうなのです。公的な制度というものは、正直ものがバカをみないように設計されているのです。
日本年金機構(旧社会保険庁)のプロモーションビデオを見ているようで、思わず笑ってしまいました。

正直者がバカをみる設計になっている公的制度は、世の中にいくらでもあり、むしろ競争のない「公的」制度だからこそ、そういうおかしな設計になりやすいと言えます。賦課方式による世代間格差、第3号被保険者のフリーライドを許す公的年金制度なんて、その最たるものでしょう。

頭の良い人たちが設計したからといって、フェアな制度になるわけでもなく、国の定めた制度なんて、時の権力者たちによっていつどのように改悪されてもおかしくありません。ここまで国を信頼できる無邪気さは、いったいどこから出てくるのだろうと思いました。

参考記事: お金学 35歳からのお金のリアル(人生戦略会議編)

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