人生戦略会議さんの著書を読んだのは、『35歳からのお金のリアル』以来2冊目です。
前作同様、ブログネタ的には美味しい内容を含んではいるものの、共感できるところはほとんどありません。正直、読んでいてつまらなくなったので途中からは斜め読みでした。
たとえば序盤の40歳定年制の話のところでは、
40歳でいったん定年退職してリスタートし、60歳で2度目の定年退職をして75歳まで働けば、人生を3度、楽しめることになるわけです。などということが、さらりと書かれています。
そんな死ぬ直前の年齢まで働くことや、働きながら死んでいくことが人生の楽しみであり、それが可能であれば誰もがそうするものだという暗黙の前提に立っているように思われます。この時点でもう違和感ありまくりです。
「いままで通りの暮らし方」を変えよう悪くないポイントを突いていると思います。
では、どうすれば中流崩壊の社会を生き抜くことができるのでしょうか。
(中略)
「ウチは中流なんだ」という意識が、家を買い、車を買い、子どもを名門校に進学させて、悠々自適な老後を送るという人生計画につながるからです。
(中略)
個人がいまやるべきことは、環境に文句を言うことでもまわりに期待することでもなく、変化に柔軟に対応できるように暮らし方を変えることだけです。
生き残るためにどのくらい変われるか。でも、ここで指摘されているような暮らし方を変えるには、40代になってからでは遅すぎるでしょう。その意味で本書は、中流意識を捨て切れなかった現在の40代を反面教師にして、現在の20代30代が生き方を考えるための本じゃないでしょうか。
それがいま40歳のみなさんに問われているのです。
たしかに、現状を見れば年金だけでは暮らしていくことは非常に困難です。データで見ても、60歳以上で無職の夫婦世帯では、22万円弱の収入に対して、27万円の支出があり、毎月5万円の赤字が出ています。この数字をベースに65歳から80歳まで15年間生活していくと想定すると、赤字額は約1000万円になります。こういう話は老後不安を煽る商売の人たちが流布しているので見聞きすることが多いと思いますが、以前からなんとも言えない違和感がありました。
考えるまでもなく、仕事をリタイアしたあとの収支が赤字になるのはむしろ当たり前じゃないですか?
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死ぬ直前まで収支が黒字あるいはプラマイゼロだったら、積み上げた資産がそのまま残ってしまいます。貯めたものは少しずつ使っていくという至極当然の消費行動をとっているだけで、むしろ毎月の赤字額が大きい世帯ほど資産の余裕が大きいと見るべきでしょう。実際、私の親やその兄弟たちの世代を見ていると、お金の心配よりも人生の残り時間の心配をしたほうがいい人が多く、彼らの収支は毎月かなりの赤字になっていると思われます。
つまりこのデータからわかるのは、現在の年金世代の人たちは平均毎月5万円ずつ取崩せるだけの余裕資産を持っている、という話にすぎないのであって、「年金だけで暮らしていくことは非常に困難」などという結論を導く根拠にはなりません。ましてや、このような数字を根拠に「65歳の時点で必要な貯蓄額は1000万円」と言う人がいたら信用しないほうがいいでしょう。
老後不安を煽る人は、自分の発言が過剰貯蓄を生んで、まわりまわって自分の所得が減るということを理解していない人だと思います。
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