2018年1月10日

『専業主婦は2億円損をする』 橘玲(著)



無料だったので読んでみましたが、読まずに批判している人たちを黙らせるような内容ではありません。読めば批判がより具体的になるだけだと思います。

いつからか「生涯現役」を呪文のように唱える人になってしまった感のある橘玲氏ですが、本書はその呪文を女性向けに焼き直しただけの内容です。あとがきに書いてあるように、日本の若い女性の3割が専業主婦志向である現実が「ぜったいおかしい」と考える(この発想自体が全体主義的だと私は思いますが)編集者のオファーに乗っただけの企画で、ベースとなる文章は別の女性ライターが書き起こしたというのですから、つまらないのも当然でしょう。女性著者が専業主婦をディスるとただの僻みに思われて都合が悪いと考えた出版社が、橘氏の名義を借りただけのようにも見えます。
関連ツイート。


橘玲公式ブログの紹介記事より。
専業主婦は20代後半、あるいは30代前半でこの人的資本を放棄してしまいます。大卒女性の平均的な生涯収入は2億円ですから、彼女たちは(そして妻に専業主婦を望む夫たちも)2億円をドブに捨てていることになります。

やはりここですね、引っかかるのは。
専業主婦だけでなく早期リタイアの場合も、人的資本を放棄すると今後得られるはずの労働収入を「ドブに捨てる」ことになると表現していますが、違いますよね。彼らはその金銭と引き換えに、労働に消費されるはずだった多大な時間を獲得しています。言い換えれば、人的資本で時間を購入していることになります。ドブには捨てていません。

要するに、人的資本から得られる金銭と時間はトレードオフの関係にあり、時間を失うことなく金銭のみを獲得することはできません。人的資本のみが持つこの特性を完全スルーしている点が、橘玲氏が唱える人的資本論の致命的欠陥だと思います。

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