2008年10月7日

預金のインフレ抵抗力

PALCOMの海外投資塾: 預金はインフレに弱いのか?というテーマに便乗させていただいて、私の意見を述べます。

まず「預金」といっても、定期預金なら債券、普通預金やMRFなら流動性資産という資産クラスに分類され、両者のインフレ抵抗力はかなり違うような気がします。

結論から言うと、債券はインフレに弱くないが、流動性資産はインフレに弱いのではないかと思います。



この本の中に、資産クラス別の過去200年の実質リターンを表すグラフが出てきます。

長期リターンのグラフ

上から順に、株式、長期債券、短期債券、ゴールド、現金(ドル)です。

過去200年の資本主義の歴史を振り返れば、債券の実質リターンは概ねプラスだったと言って良いでしょう。株式の圧倒的なリターンと比べたらどうしても見劣りしますが。

逆に、現金の価値はインフレで激しく目減りしています。タンス預金など論外だということがよくわかります。普通預金やMRFは債券よりも現金に近いので、インフレ抵抗力が低いと考えます。

ゴールドの実質リターンはほぼゼロですが、インフレに負けているわけではないので、資産運用ではなく資産防衛の手段としては適切なのかもしれません。


債券ならインフレに負けないとわかれば、債券100%のポートフォリオを保有することは基本的に問題なさそうです。ただ、多額の資産を債券ではなく普通預金やMRFのまま長期保有すれば、インフレに負けることは覚悟しておくべきだと思います。

ところが、同じく上記の本に載っているグラフ(検索しても見当たらないため掲載しませんが後日追記するかもしれません)から、運用期間が30年にも達すると、10年程度の運用期間と比較して、株式100%のポートフォリオのリスクが大幅に縮小し、意外にも債券100%のポートフォリオよりもリスクが低くなることがわかっています。つまり、長期間使わないお金を、リスクが高くてリターンが低い債券100%のポートフォリオで運用する意味はないということです。

よって、予想される運用期間の長さに応じて、長期運用のための株式と中期~短期運用のための債券を適度な割合で組み合わせたポートフォリオを保有することが、理にかなっているのではないかと考えています。

2008年10月4日

安楽椅子探偵シリーズ第7弾

「綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状 安楽椅子探偵」第7弾の出題編、いよいよ放送 - GIGAZINE

この記事のおかげで見逃さずに済みました。

昨日の深夜に生で見て、今日録画でポーズかけながら見直しましたが、まだまだ謎は解けません。難しいけど面白い。このワクワク感がいいです。

過去の作品はDVDで出ています。第1回はこちら。



2008年10月3日

『国債は買ってはいけない!』



『偽善エコロジー』の著者が書いた経済の本なんですが、この本はちょっとお勧めしがたいです。リンク貼っておいて言うのもなんですが。(笑)

いかにも過激な「えっ!?」と思わせるような持論で読者の興味を引こうとするやり方は、『偽善エコロジー』と似ています。たとえば、
・100万円の国債を買うと、最終的に205万円の赤字になる。
・時代の変化や加齢による生活レベルの上昇を加味した実質的な物価上昇率は、年率10%である。(だから、貯めておいたお金はすぐに腐る。)
・原油価格が200ドルになると日本の物価は10倍になる。
・年率14%のファンドがあるとすると、そのうちまともな利益は3%ぐらいであり、残りの利益は「もともと他人が受け取るべきお金をかすめ取った」ことになる。
・日本にはお金が余っているので、タヌキしか通らない道路を作るほうがドブに捨てるよりはましである。
・もし日本の会社がすべて無借金会社になったら、銀行は借り手を失い、庶民は預金というものができなくなる。

しかし、これだけ大げさな主張であるにもかかわらず、裏付けとなるデータは少ないしロジックも何だかテキトーな感じです。読めば読むほど頭の中に?マークが増えていきます。すんなり納得できたのは第5章のごく一部、株の話ぐらいです。

結論としては、経済の本に見せかけて実は道徳の本だった、という評価が妥当ではないかと。
・額に汗して稼ぐのが正しい。
・ファンドはいかがわしい商売である。
・投機は「どろぼう」と紙一重である。
・自分の損得は考えずに他人に献身すべきである。
というような、著者の道徳的価値観の記述が随所にちりばめられていて、うんざりしました。

久々に、読んで損したと思った一冊でした。

なお、日本社会に根強く残っていると思われる「額に汗して~」的な価値観については、私は次のブログ記事と同意見ですのでリンクさせていただきます。
FIFTH EDITION: 「額に汗して働く人が報われる社会を!」の不思議

2008年10月2日

人気記事ランキングの不具合

先日設置したばかりの人気記事ランキングというブログパーツですが、本日サーバーからの応答がなく、本ブログ全体の表示にまで支障をきたしていましたので、とりあえず削除しました。

不具合が出ている間にアクセスしていただいた皆様、申し訳ありませんでした。

2008年10月1日

『70円で飛行機に乗る方法』



タイトルには騙されました。70円で飛行機に乗るための具体的な方法を解説する本ではありません。

実は、一見なんの脈絡もない『「ひきこもり国家」日本―なぜ日本はグローバル化の波に乗り遅れたのか (宝島社新書 238)』という本の続編だと知ったのは、「おわりに」まで読み進めたあとでしたが、にもかかわらず何故か爽快な読後感を覚えました。

世界ではLCC(ローコストキャリア)の台頭という航空大革命が起こっているのに、日本の航空業界は寡占による既得権益にしがみつくばかりで世界から取り残され、日本国政府のお粗末な空港行政のせいで、アジアのハブ空港の地位を韓国の仁川空港に奪われる始末。

本当に鎖国時代の日本を見ているような気持ちになります。
だから僕らは「個人開国」をしていこう
 最大のネックは日本脱出にある。宇宙へ飛び立とうとするロケットが重力の抵抗にあうように、僕らは日本から出るところが最大の難関だ。そこを抜ければ、いろいろなものがつながった世界へ行ける。
(中略)
 日本がオープンスカイ協定を受け入れようとしないのなら、まず僕らが進んでオープンスカイの世界に飛び出していくのだ。

 個人開国をする。

 その時がやってきたと、僕は日々実感している。
ということで、日本が開国しないのなら自分が外へ出て行くしかないと説きます。実に単純明快。

読み終えて気付いたのは、「人の移動」を「お金の移動」に、「航空業界」を「金融業界」に置き換えても、まったく同じことが言えるということです。
「海外送金コストが高いので、僕らのお金が日本から出るところが最大の難関。そこを抜ければ、いろいろなものに格安のコストで投資できる世界へ行ける。」

筆者の考え方に賛成です。