2014年8月7日

「銀と金」のセリフから考えたことと、「○○で生活する」という縛りプレイ

当ブログへのアクセスランキングに新しくランクインしていたブログに、次のような記事がありました。

金利で食うのは庶民の夢か?│ひとり配当金生活(予定)
もう20年ぐらい前の作品ですが、福本伸行の怪作漫画「銀と金」の作中に、金利で食うのは庶民の夢、っていうくだりがあるんですよ。で、仕手本尊の梅谷の答えがこれ。今でも印象に残っています。

「ぼうず……それは死人の考えや……。
血の通った人間が金持ったら、そうは考えん。
(0人中、9人は考えなくなる……損を承知で人は生きられんのや。
それほど銀行金利は低い……あの低さはサギやからな。
サギ師に騙されながら生きるのも気分が悪い。」

作中での銀行金利は6パーセントくらいあった時代の話です。
無リスク資産(インフレの懸念はありますが)で6パーセントの利回りは今では考えられませんが、当時はそれでも銀行に預けるのは馬鹿だと思っていたんですね。
この作品はまったく知りませんが、このセリフに込められた意味を勝手に想像してみるに、なかなか興味深いテーマを含んでいるような気がして、引用させてもらいました。

銀行金利が6%も付くのに、その金利で生活するのが「死人の考え」というのはどういう意味なのでしょうか。もしかしたら、私が以前「金利で生活すればお金は減らない」という錯覚に書いたように、銀行預金の金利のみを引き出して元本を維持してもインフレで購買力は目減りするんだよ、と暗に指摘しているのではないかと思うのですがどうでしょうか。

銀行金利≒インフレ率という前提に立てば、「それほど銀行金利は低い」というのは、金利が6%の時代にも0.1%の時代にも等価な意味をもつ言葉です。銀行預金のような、金利込みでぎりぎり購買力を維持できそうだけど、税引き後には下手したら実質リターンがマイナスになる金融商品ではなく、超過リターンが期待できるものに投資するのが血の通った人間の考える事だと言いたいのかなと、私なりに想像してみました。


ところで、「金利で食う」に代表される、不労所得だけで生活するスタイルが金持ちの象徴と思われているというか、庶民からは一種の憧れの対象とされているようなフシがあります。早期リタイアを志向する方のブログにも「○○で生活する」系のものがとても多い印象です。○○に入るものは配当金、分配金、スワップ収入、家賃収入など色々あるようです。

そういうスタイルを見聞きするたびに思うのは、「○○で生活する」のはゲーム用語の「縛りプレイ」とよく似ているということです。

縛りプレイとは (シバリプレイとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
ゲームをプレイする際、本来ゲーム側からは設定されていない制限(縛り)を自ら科す事によって、より難易度の高いゲームをプレイする事。

普通にクリアできる難易度のゲームでも、たとえば強い武器を使わないというような制約を自主的に課してプレイすると、たちまち難易度が上がります。オンラインFPSなどでは、火器を一切使用しないナイフ縛りの対戦で盛り上がることもあるようです。

「○○で生活する」というのもそれと同じ自主的な制約じゃないでしょうか。生活に必要なお金をどこから持ってくるかについては、本来何の制約も無いはずです。もちろん、金利や配当がダメだと言ってるのではありませんが、そういった特定の種類のお金に限定する必要はありません。普通に銀行預金をおろしてもいいし、株式やETFを売って現金にしてもいいでしょう。どういう方法にするかは、その都度自由に決めればいいはずです。

ゲームなら難易度が上がってかえって面白くなることもあるでしょうが、リアルライフではわざわざ自らに縛りを課して難易度を上げてもあまりいいことは無いと思います。

3 件のコメント:

  1.  はじめまして。
     当方の駄ブログの駄文が引用されていて驚いたのでコメントさせてもらいました。
     この梅谷というキャラクターの言うことは極論(というかこの作者は極論が好き)ですので、その点は割引いて下さい。考察内容については非常に論理的で、なるほど!そういう意味だったのかと、当の私が思いました。
     縛りプレイについては、重火器で武装すれば強いでしょうが、当の私がナイフしかもっていないだけのことですね。人生が縛りプレイのようなものです。
     長文失礼しました。

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  2. 賃貸収入縛りプレイの私ですが、、、
    個人的なところで言いますと、
    そもそも2度のうつ病&再発リスクという、
    強制縛りプレイでして、、、
    その縛りでも生きていける方法を
    模索したうえでの賃貸収入縛りという感じです。

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  3. 福本ファン2014年8月12日 9:28

    はじめまして
    「銀と金」は福本伸行の最高傑作であり
    漫画史に残る作品です。
    まだバブル期の熱の残る時期に描かれた闇社会の勝負師を描いた作品なので、件のセリフは
    「安い金利でごまかされて生きるよりは勝負をかけて生きる」という意味だと思います。
    管理人さんの信条とは相反するものかもしれませんね。
    あまり漫画とか読まれる習慣は持っていらっしゃらないとお見受けしますが
    機会があればぜひとも御一読をお勧めします!!

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