ETFを利用した長期分散投資の入門書ですが、ETFにこれほどフォーカスを絞った本は珍しいと思います。難しい投資理論の解説抜きに、具体的なETFの銘柄を挙げてポートフォリオの組み方を指南する、かなり実践的な内容です。
あなたがしなければならないこと、それは、投資のリスクを受け入れ、「今日より明日がよりよい世界」になると信じて、ETFを保有し続けることです。つまり、世界の国々に、我慢強くリスクマネーを供給することなのです(それがあなたの仕事です)。長期投資を実践する上で、この「我慢強く」という言葉がかなり重要なポイントですね。
あなたの投資を、リスクを抑えたシンプルなものにしたいのなら、投資の道具はすべてファンド(パック商品)で統一しましょう。要するに、ETFというシンプルかつローコストな道具が手に入る今となっては、もはや個別銘柄という道具を使う必要はないということです。
具体的なモデルポートフォリオとしては、まず
安全資産:リスク資産=3:7~6:4
に決めたあと、リスク資産の内訳を
アメリカ株式:アメリカ以外の先進国株式:新興国株式:外国債券=1:1:2:2
が基本形、これに商品や不動産を少し混ぜるのが派生形です。
ここで特徴的なのは、先進国株式と新興国株式の比率が1:1になっている点でしょうね。世界全体の経済成長の平均値に追随するという当初の目的から考えると、時価総額比と同じ9:1が妥当と思われますが、新興国の高い経済成長に賭けたいという著者の思い入れが伝わってきます。著者自身の「ポートフォリオとはあなたの作品です」という言葉の意味がよくわかるポートフォリオに仕上がっていると思います。
なお、本書で紹介されているETFのほとんどは、日本の証券会社で購入できるものです。そのような条件付きだとどうしても選択の幅が狭くなり、コスト的にまだまだ最適であるとは言えません。本書の次はこのあたりの本を参考に、より良いETFを選別してみてはいかがでしょうか。
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