2009年6月1日

『働くことがイヤな人のための本』



『人生に生きる価値はない』で著者の考え方に興味をもったので読んでみた本です。

私は、一生懸命生きれば人生に成功も失敗もない、という単細胞的きれいごとを言いたいのではない。それは完全なウソである。一生懸命に生きても(いわゆる)失敗に足を絡まれる。ノラクラ生きても(いわゆる)成功は降ってくる。
 多くの人はそう思いたくないばかりに、つい 「成功した人はみんな大変な努力を重ねたのだ」 と言ってしまうが、これは違う。これは、「ありとあらゆる世の中の理不尽を消してしまいたい」 という願望から出た怠惰な言葉なのだ。
それにしても、たいそうおかしいと思うことは、自分の好きな仕事を見いだせない者を蔑視する現代日本の風潮だ。「自分のやりたいことがきっと何か一つあるはずだ」というお説教は、正真正銘のウソだ。ほとんどの人は、目を皿のようにして探してもそんなものは見つからない。真摯に求めないからではない。さまざまな要因が絡み合い、不運が重なり合って、なんの生きがいも感じない仕事、ただ金をもらうだけの仕事に従事しているのである。
こういう冷めた見方は人によって好き嫌いがはっきり分かれそうですが、私は好きですね。
 世の中とはまことに不合理なことに、成功者のみが発言する機会を与えられている。成功者の発言は成功物語である。(略)
 彼らが自分の成功物語を個人的な体験として語るだけなら、まだ無害である。しかし、彼らのうち少なからぬ者は、成功の秘訣を普遍化して語ろうとする。「こうすれば成功できる」という一般論を語ろうとする。じつはたいそうな天分とそれ以上に不思議なほどの偶然に左右されてきたのに、誰でも同じように動けば必然的に成功が待っているはずだと期待させる。それが実現できないものは怠惰なのであり、努力が足りないのであり、適性を誤っているのだと力説する。これは大ウソである。
私は努力主義的な価値観を好まず、人は偶然の要素を過小評価するバイアスがあると思っているので、この意見には大変共感しました。よくある成功法則本の類を信じて疑わない人は、このような意見にも耳を傾けるべきではないでしょうか。(関連記事: 『夢をかなえるゾウ』
 人生を正確に虚心坦懐に見るかぎり、正直者が報われないこともあるが、報われることもある。極悪人がのさばっていることもあるが、自滅の道を歩むこともある。
 私はずっとそう感じてきたし、いまでもそう感じている。微妙な襞に至るまで正確に自他の人生を観察し、けっして荒っぽく「こうだ!」と決めつけないこと、これは、じつはなかなか訓練の要ることだ。思考の「体力」のいることだ。だからこそ貴重なことであり、人生の力になるのだ。
著者のこういうニュートラルな物の見方には、学ぶべきところが多いと思います。

1 件のコメント:

  1. こういうのって「ニュートラル」っていうんですかね。つい最近中島さんの「人生に生きる価値はない」という本を読みました。タイトルには大いに同感したのですが、内容はイマイチ。まぁ、この本が書下ろしではなく、新潮45の連載のまとめだからた゜と思いますが。
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