現在40代以下の世代が将来必要とする老後資金と公的年金から得られるであろう資金との差、いわゆる「年金ギャップ」を埋めるための「私的年金ファンド」のススメとその具体的運用法について解説しています。
上記世代に該当する方で老後が不安な方には一読に値する良書だと思います。
読んでいて気になった点を少し。
「経済的にゆとりのある老後を送るためには、夫婦で月38万円必要」→不思議とよく目にする数字ですが、そんなに何に使うの?といつも思います。夫婦二人だけで家賃15万円ぐらいの賃貸住宅にでも住むという前提なのでしょうか。
将来の運用結果が正確にはわからない---これは資産運用や投資にはつきものの宿命です。「ほぼ確実」とまで言い切っていいのかどうか・・・どの程度の確からしさであるかを具体的に示してほしかったです。
しかし、大切なことは、これらの「4資産」で運用することにより、インフレ率を上回る収益が得られることはほぼ確実である、ということです。
日本の国営・投資ファンドである「政府年金投資ファンド(GPIF)」は、このオルタナティブ投資をまったく行っていないのに対し、カルパースをはじめとする欧米の主要年金基金は、十数%から30%程度を4資産以外のアセットに投資しています。
実は、ポートフォリオの組み方には、黄金律とも言える至高の手法があります。せっかくここまで読んで期待が高まったのに、オルタナティブ投資の有無によってリスクとリターンにどの程度の違いが生じるのか、具体的な数字が出てこなかったのが残念です。
それは、「値動きが相互に関係しないアセット(資産)クラスを組み合わせる」ということです。
この考え方に従って、世界の有力年金基金やアメリカの知性を代表する有名大学は、「オルタナティブ(代替的)投資」を行っています。
(中略)
このため、これらの「オルタナティブ投資」をポートフォリオに加えることで、分散効果----リスクを抑え、リターンを上げる効果----が得られるのです。
このように、私たち普通の市民は、単純に1万円ずつ購入するということ「定時定額投資法」を実践することで、仕入れを安くし、利益を確実に手にすることができるのです。「確実に」は明らかに言い過ぎです。また、ここで登場する2000年1月~2007年7月のTOPIXのチャートは、ドルコスト平均法が最も有利になる条件に見事に一致しています。自説に都合の良いデータだけを抜き出したと言われても仕方がないと思います。
世界全体の市場に追随するという考え方からすれば、「国内株式」を日本の株式時価総額が世界に占める割合である15%とし、残りを「外国株式」で運用するということも考えられます。ポートフォリオ理論から市場全体を買うことが最適だと論じているのに、ここにきて急にアバウトな展開になってしまうのがもったいない・・・。と不思議に思いつつ読み進めると、最後のほうにちゃんと理由が書かれていました。
しかし本書では分かりやすさと運用の簡易さを重視して、『私的年金』を「国内株式」と「海外株式」を50%ずつで運用するものとします。
『私的年金』の資産配分を「国内株式」と「海外株式」を50%ずつとしたのも、日本経済の発展を私たち普通の市民の投資で応援したい、という筆者の思いが込められています。気持ちはわからなくもないですが、これは蛇足ですね。アセットアロケーションは感情ではなく理論に基づいて決定したいものです。
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