2008年8月14日

『臆病者のための株入門』



2年ほど前に読んだので今更な気もしますが、これだけの良書のレビューを書かないわけにはいかないのでもう一度借りてきました。

資産運用の初期段階で、情報の洪水の中から本書のような良書に出会えるか出会えないかで、その後の運命がまったく違ってくると言っても過言ではないと思います。

ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理』はインデックス投資のバイブルと言われていますが、分厚くて読破するのがなかなか大変な翻訳本であることも事実です。

その点、本書は日本人が日本語で、インデックス派から見れば異教徒であるデイトレードや、バフェット流の個別株長期投資にも幅広く言及した上で、インデックス投資の経済学的合理性をわずか229ページの中にまとめています。

以下、印象に残った記述を引用しておきます。
株式投資はギャンブルである。でもそれは、たんなる賭け事ではない。素人でも大きな果実を手にすることができる、世界でもっとも魅力的なギャンブルなのだ。
テクニカル投資というのは、簡単にいえば、株価チャートから未来の株価を占う技法である。私は、広い世の中にそうした秘儀が存在する可能性を否定しないが、次のことだけは断言できる。
チャートで儲ける方法が無料の株式セミナーで教えられていたり、近所の書店で売っている株の入門書に書いてあることはぜったいにない。
バフェットがアナリストを嫌う理由は、彼らが投資家に損をさせているからである。なぜなら、彼らの予測はぜんぜん当たらないのだ。
自分自身に投資家としての適性があるかどうかを、簡便な方法で知ることができる。
宝くじを買って億万長者になろうと夢見ていたり、競馬や競輪で生活しようと考えているのであれば投資はやめたほうがいい(ゲームとして楽しむのならこのかぎりではない)。投資用にワンルームマンションを買っているひともかなりあぶない(高額所得者が税金対策と割り切るなら別)。こういうひとは、ギャンブルでいちばん大事な期待値の計算ができていないからだ。
私はべつに、毎月分配型ファンドが金融商品として問題があるといっているわけではない。現在の日本の税制に照らせば、元本部分を取り崩して分配するファンドは、投資家が自らすすんで余分に税金を支払うためにのみ存在する、という事実を指摘しているだけだ。
金融市場は人生を豊かにする機会を私たちに与えてくれる。リタイアすれば、ひとはだれでも一人の投資家として生きていくほかない。
そのとき、まずはじめに知っておくべきことがある。
投資は偶然性に左右されるゲームであり、確実に儲かる方法などどこにも存在しない。だが、確実に損をする方法ならいくらでもある。
金融リテラシーは、投資家が身を守るための唯一にして最大の武器なのである。


1 件のコメント:

  1. 本書で橘玲は最後に「投資をするのがどんなに合理的だとしても、人にはそれに従わない自由がある」みたいなことをいって、ドンデン返しをしていたのが、私的には印象深かったです(もし別の本でしたら、ごめんなさい)

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