本書の核心と思われる記述を引用します。
正しい状況下では、集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中でいちばん優秀な個人の知力よりも優れている。優れた集団であるためには特別に優秀な個人がリーダーである必要はない。集団のメンバーの大半があまりものを知らなくても合理的でなくても、集団として賢い判断を下せる。ここで「正しい状況下では」という条件付きであることがポイントで、状況しだいでは全く逆の結果になることもあります。
その条件とは、多様性と独立性です。
集合的にベストな意思決定は意見の相違や異議から生まれるのであって、決して合意や妥協から生まれるのではないから、多様性と独立性は重要だ。認知の問題に直面した賢明な集団は、メンバー全員にとってハッピーな結論に到達するべく、各人に意見を変えるよう求めたりしない。その代わり、市場価格や投票制度などを使って集団のメンバー個人の意見を集約し、集団全体としてみんなの意見を明らかにするよう試みる。逆説的な感じもするが、集団が賢い判断をするためには、個々人ができるだけ独自に考えて、行動することが不可欠である。和を重んじる日本社会では特に、実際に上記のような条件が満たされる場面はほとんどない気がします。私の会社員時代にも、会議で上司に異議を唱えれば嫌な顔をされ、自由にものが言える雰囲気とは程遠かったことを思い出します。
市場による価格形成のメカニズムは、市場参加者の多様性と独立性のおかげで適正価格が保障されていると言えます。たとえば、株価の暴落を防ぐ目的で空売りを規制したりすると、多様性という条件が失われて適正な株価から大きく乖離することがあります。身近なところではライブドア株の狂乱相場などは、まさに空売り規制によって作り出された市場の歪みだったわけです。
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