参考記事: 保有期間によるリスクとリターンの変化
しかし次のような正反対の意見も見かけることがあるため、実はちょっと混乱していて自分の考えに確信が持てません。
投資の名著の意外な誤り : 山崎流マネーここに注目 : トレンド : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞):
マルキールのデータを使って、簡単な計算をやってみよう。(中略)
投資した結果の資産額のバラツキが時間と共に拡大していることは明らかだ。
投資家にとって最終的に問題なのは「資産額(の評価の差)」であり、期間を通じて平均した「年率リターンの上下のぶれ」ではない。「投資期間が長期化するとリスクは縮小する」というよくある話の間違いを指摘するには、「2008年のリターン」などという野暮なデータを持ち出す必要はない。
長期で運用するとリスクは増大する、っていう「リスク」とは何だ? - SHINOBY'S WORLD:
リスクが時間と共に増大するというのは、教科書的には正しいことで、資産運用の教科書に出てくるのは、正規分布を前提にすると5年後の資産の変動は1年後のルート5倍に増加するというものです。
それぞれ言わんとすることはわかるのですが、ここで言っている「リスク」とは「全運用期間の累積リスク」のことですから、運用期間が長いほど大きくなるのは当然ですよね? 「リスク」をそのような意味で使うのであれば、そこに異論を挟む人はいないと思われます。この場合、「期間の長さによってどの程度リスクが増大していくか」を見なければ意味が無いような気がします。
一方、Porcoさんの記事では、次のように結論づけています。
Porco Rosso Financial Weblog: 長期運用でリスクは増大しない:
「N年後の標準偏差は年率標準偏差に√年数をかける為にリスクが増大するのではないか?」 と考えてしまいがちですが、これは投資と言う観点からは間違っています。
実は中心極限定理からN年後の通期リターンの標準偏差は√年数で割るのが正解なのです。
ともあれ長期運用でリスクは増大しない。通期での年率リスクは減少するので長期運用が正しい。
すくなくとも長期投資でリスクが増大すると言う時のリスクは年率標準偏差の事ではありません。つまり、「リスク=年率標準偏差」と定義する限り「長期運用でリスクは減少する」は正しいと理解しました。
こちらのグラフでも、運用期間が長くなるにつれて累積リスクの増え方が緩やかになっていることがわかります。もし運用期間に関わらず年率標準偏差が減少しないのであれば、これらの折れ線は直線になるはずです。
こうして見ると、意見の相違(に見えるもの)は前提となる用語の定義の違いから生まれただけで、互いに否定しあっているわけではないという気がしてきました。まだ何かスッキリしませんが。
その他の参考記事:
長期投資、マルキールは間違っているのか? - タニボンの「なんでもアナリスト」
長期投資のリスクとリターン - 車輪を再発見する人のブログ
asahi.com:時間を味方につけて投資効果高める 長期投資の優位性 - オープン投資信託 - ビジネス
はじめまして。経済・投資好きの若造サラリーマンです。一方的で恐縮ですが、いつも楽しく読ませていただいております。突然コメントを投稿するご無礼をお許しください。
返信削除さて、この問題については、私は以下のように解釈しています。
①長期の運用は、短期の運用に比べて、結果のばらつき=リスクが大きい。
②但し、同じリターンを獲得するために背負わなければならないリスク(つまり、リターン1単位当たりのリスク)は、長期の運用の方が短期の運用より小さい。
【①について】
記事の中で取り上げられているグラフでも1年後のリスクが10%であるのに対し、10年後のリスクは31.6%となっており、長期の運用の方がリスクが大きいのが分かります。ちなみにこれは、単に「10年間の運用の結果としてとりうる値の幅が広い」ということではなく、確率を加味して考えても(10年間ずっと上がり続ける、もしくは下がり続ける可能性は極めて低いが、その点を考慮しても)リスクは増大しているということです。
【②について】
「年率のリスク」という考え方は、あまり意味がないように思います。10年間運用すると、累積のリターンは10倍になるが、リスクはルート10倍にしかならない、よって、リターン1単位当たりのリスクが小さくなる、というのが正確なところではないでしょうか。長期の運用=「投資」、短期の運用=「投機」というのは、まさにこのリターン1単位に対して負うべきリスクの大きさから来ているのではないかと思います。
私は以上のように考えているのですが、いかがでしょうか。①を重視するか、②を重視するかによって、長期投資の有用性についての意見が分かれてくるのかと思います。