2009年12月16日

『勝間和代のお金の学校―サブプライムに負けない金融リテラシー』 2時間目

1時間目で引用し忘れた部分が一つ。
竹中 政府に期待してはいけない。私は政府の中にいていちばん感じたのは、政府に期待してはいけないということです。
中にいて感じたのだから余程のことがあったのでしょうね。まあ元から期待していませんけど。政府には、ただ余計なことをしないでくれという淡い期待を抱くのみです。

(時間目の先生はファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子氏です。名前は知っていましたが、彼女の著書は読んだ記憶がありません。
竹川 最近よく聞かれるのが、「分散投資をしていたのに下がっているんですが……」という声です。気持ちはわかりますが、分散投資をしても、下落の幅や上昇の幅が抑えられるだけであって、元本割れしないということではありません。そのあたりを勘違いしている方が多い。
これはかなりひどい部類の勘違いですね。
関連記事:
ホンネの資産運用セミナー | 分散効果を疑え? より。 今回のサブプライム危機では株式、債券、商品が同時に下がったため、分散投資は間違いとするコラムが多く出された。しかし、分散効果は常に異なる動きをするわけではない。もともと異なる値動きをするかどうかは確率的な話でしかない。 し...
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竹川 資産形成という観点で投資信託を購入する場合、ロスカット・ルールは必要ないと考えています。(中略)
基本的に解約してもいいのは、(運用していたお金を)使う時期になったとき。もしくは、1~3年に1回リバランスをするとき。そして、もう一つが、その商品よりももっと低コストでよい商品が出てきたので商品を乗り換えるというときですね。
完璧です。売るタイミングについては、この説明で十分でしょう。
キャッシュが必要になった時に必要な分だけ売る。これほどシンプルかつ合理的なルールはないと思います。

3時間目の先生、ファンドマネージャーの太田忠氏は対照的に、「まず損切りポイントをきちんと決める」と言っています。ファンドマネージャーのように比較的短期でのリターンを求められるプロ投資家の中には、長期投資家にとって不合理な損切りルールや利確ルールを、さも重要なテクニックであるかのように語る人が多いです。プロの発言は、その肩書が立派であればあるほど、個人の長期投資家にはむしろ役に立たない傾向があるような気がします。
関連記事:
資産運用の基本スタンス に 分散投資だと必然的に含み損を抱える銘柄も多くなりますが、下がったから損切りするという発想ほど馬鹿げているものはないと思っています。何%の利益が出たら売るというのも同様です。 と書いた通り、いわゆる「損切り」や「利確」などの小手先のテクニックには合理性の...
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竹川 長期で資産を形成していくための「投資」という概念と、短期で売買をして2倍、3倍にしたいという「投機」の概念を混同していて、区別がついていないという方が多いですね。(中略)
預貯金からいきなり2倍、3倍を狙う方向にいってしまう人が多い。本当はその真ん中があるのに、両極端なんですよね。投資をしない人は全くやらないし、やる人は、いきなりギャンブルのような方向にいってしまう。
これも全く同感です。

本書を読んで竹川氏の株が急上昇したので、最近の著書を読んでみようかと思います。

(3時間目に続く?)

2009年12月15日

『勝間和代のお金の学校―サブプライムに負けない金融リテラシー』 1時間目



アマゾンのレビューはボロボロですが、前半を読む限りではそんなに悪くないと思います。

1時間目「世の中の大きな動きの中で金融をとらえる」の先生は竹中平蔵氏。
2時間目のテーマでもある投資信託の話が出てきます。
勝間 信託報酬の引き下げについては、もっともっと規模の利益が必要になりますので、やはり業界全体としてもう少し努力が必要かと思っています。
竹中 業界の努力というのは確かに必要ですね。以前、内閣府でアンケートをとったことがあるのですが、「あなたは証券会社に行ったことがありますか?」という質問に8割の人が「行ったことがない」と答えています。「これから行く気がありますか?」という問いにも8割の人が「行く気がない」そうです。
勝間 騙されると思ってるんですよ(笑)。
竹中 最近はオフィスもきれいにして、ファイナンシャル・プランナーの方もいて、態勢を整えつつありますが、最初の一歩がなかなか踏み出しにくいというのは、いまもあるのでしょうね。
私も証券会社に足を運んだことは数えるほどしかないです。しかも「これから行く気がない」8割の人に含まれます。もう窓口に用はありません。
竹中さんの言う「努力」って意外に古典的というか、完全にアナログ世代をターゲットにしているのがわかりますね。きれいなオフィスもFPもコストを押し上げる要因ですから、信託報酬の引き下げにつながるとは思えないです。

2時間目にも似たような話が出てくるのでついでに引用。
竹川 口座をつくるときまでは、どうしても自分でホームページにアクセスして、入力をして、しかも郵送しないといけないわけです。若い人の場合は、わりとクリアできるんですが、ご年配の方の場合、そこで挫折してしまう方も結構いますね。
勝間 私の周囲の場合、ご年配じゃなくても挫折してます、みんな(笑)。
結局何をしたらいいかわからないし、投資信託が山のようにあって、わからない。それで窓口に行ったら手数料の高い商品しか勧められないという構造になっているのではないでしょうか。
トホホ…。
日本のネット証券にすら自力で口座を開けないような人は、勧められるままに高い手数料を負担してくださいとしか言えないです。きれいなオフィスやFPは、そんな人たちのために証券会社が高いコストをかけて用意するのですから、手数料を安くしろなんてずうずうしいにも程があります。

似たような話ですが、
竹中 じつはこの間テレビのある討論番組に出演したのですが、同じような思いを強くしました。みんな政府の悪口ばっかり言うのですが、最後に、日本にどんな国になってほしいかっていうと、「スウェーデンみたいな国になってほしい」って言うのですよ。
勝間 大きな政府ですか。
竹中 私はびっくりしました。みんな消費税を1%も上げたら嫌だと言いながら、消費税が25%のスウェーデンみたいな国になればいいと言うのです。
この番組、『日本の、これから』 税金編に違いありません。森永卓郎氏らを相手に筋の通った主張をしていた竹中さんに共感しました。

ただ、
竹中 いま、その社会保障の負担が大きいから増税をするというふうに言いますけれども、社会保障は改革の進め方によって、負担が大きく違ってきます。例えば所得が1000万円以上ある高齢者には、年金を渡さなくてもいいじゃないですか。そういう改革をすれば、数兆円の単位で社会保障のコストを減らすことができるのです。
このような詐欺的な手法にはまったく賛成できないです。その理由は、
吊られた男の投資ブログ (一般人の投資生活) : [JAL]やはり企業年金削減当然論は恐怖 - livedoor Blog(ブログ)
に書かれていることと同じです。

竹中 私は、制度を考える場合の基本中の基本は、民主主義社会において「複雑な制度は悪い制度である」ということだと思います。
これは税制の話の中で出てきた言葉ですが、本当に現在の税制ほど悪い制度はないと思いますね。
社会保障制度も然り。

(2時間目に続く)

2009年12月12日

家計簿の重要性

うさみみさんのブログ
長が~く続けて、ゆとりある暮らし  ストックとフローと家計簿
を読んで、家計簿の重要性について自分なりに考えてみました。
家計簿をつけるべきか?  と聞かれたら、
つける方が良いと答えると思います。
では、なぜあなたは家計簿をつけていないのか?  と聞かれたら、
毎月一定額以上の貯蓄(フロー)があれば、将来の目標資産(ストック)にたどり着くはずである。
であれば、毎月資産チェックを行い、毎月の全体フローを把握できさえすればよい。
現役時代のほとんどは私もこのようなスタイルでした。普通に生活していれば年間収支がプラスになるのは当たり前でしたし、収支を正確に把握することのメリットよりも、手間がかかるデメリットの方が大きいと思っていました。

ところが早期リタイアを志向するようになると、そうも言っていられなくなります。先日の記事に書いたACRを算出するためには、A=資産残高だけでなく、C=年間生活コストというパラメータの値も不可欠です。資産の変動だけを追っていると、その間の(収入ー支出)がいくらなのかを知ることはできても、収入と支出がそれぞれいくらなのかはわかりません。そこで家計簿をつけることによって、年間の総支出額を記録するようになりました。

もちろんリタイア後も家計簿は続けています。
家計簿をつける意義は資産形成が進むにつれて薄れて行くのではないかというのが、現在の考えです。
これは、いろんな考え方があるので一般論ではなく、個人的な考えです。
物価変動などによる支出の変動を見たり、各年齢ごとに必要な資産残高を推定する(これが不明のままだと、たとえば60歳で1億円という目標の妥当性も判断不能)という意味において、その重要性はむしろ歳を重ねるごとに増していくのではないか、というのが私の考えです。

早期リタイア志向でない人でも、自分の生活コストが把握できていなければ、必要以上に節約を重ねて、本来必要のない貯蓄に励むことにもなりかねません。一人平均3500万円を残して死んでいくと言われる今の高齢者には、そういう人が多いのではないかと思います。

2009年12月8日

早期リタイアの判断基準

読者の方から次のような質問のメールをいただきました。
遊民さんは、何歳で、幾らの資産を持って早期リタイアを成し遂げたのですか?また月々の生活費の内訳や一日のタイムスケジュール等、可能でしたら今後の参考にしたいと思いますので、ご教授の程よろしくお願いします。
おそらく他の読者の方も知りたいと思われる事をズバリ聞かれてしまいました。
ご存知の通り、当ブログでは具体的な資産額や生活費の公開はしていませんので、いつかは聞かれるだろうと思っていました。リタイアした年齢についてもはっきり書いたことはありません。その理由は、これらの情報を正確に公開すると、個人を特定されるリスクが高まるからです。万一特定された場合、資産額を公開しているとちょっと怖いからです。
ここは大雑把に、40歳でリタイアしたと考えてもらえれば十分でしょう。他には家族構成なども気になるでしょうが、同様の理由で非公開です。ただ一つ、扶養家族は一人もいないことだけはお伝えしておきます。

さて、早期リタイア志向の人の最大の関心事と思われる「一体いくらあればいいのか?」について。

たとえばこちらの記事では、
素敵なセミリタイア:セミリタイアに必要な貯金はいくら? - livedoor Blog(ブログ)
この年間平均的支出480万円を支出してセミリタイアするにはアラフォー世代では貯蓄いくら必要か?
実は思ったほどお金は必要ではないんですよね。
年間平均利回り5%で6500万円
       4%で6800万円
       3%で7400万円
利回り3%以下はセミリタイア出来ない情報弱者だと斬って捨てますので計算はしませんでした。
つまり、40歳で7000万もあれば普通の生活のセミリタイア出来るのです。
と書かれています。

また、ぬこさんのように33歳5000万円でリタイアを決断した人がいる一方で、乙川さんのブログでは、
乙川乙彦の投資日記: 無職生活を選択する?
5000 万円では、無職生活を選択するには少額すぎると思います。
という意見を書かれています。

一つ言いたいのは、人生観やライフスタイルの異なるであろう他人様が計算した7000万円や5000万円という絶対額が、自分にそのまま当てはまるケースはほとんどないのではないか、ということです。絶対額を基準にする限り、「それで十分」「いや足りない」という意見の応酬になるだけだと思います。

もっと一般化して論じるとすれば、重要なのは資産の絶対額ではなく、資産額と生活コストとの比だと思います。年間生活コストの何倍の資産を持っているかです。PERに倣って、これをACR(Asset Cost Ratio)とでも呼ぶことにしましょうか。

たとえばぬこさんの場合がわかりやすく、資産が5000万円で生活費が100万円なので、ACRは50倍です。
これは何を意味するかというと、資産からのリターンがインフレ率と同じなら、今後50年間の生活費を賄えるということです。
30代という若さを差し引いても、これは十分に高い数字だと私は思います。(それでも低いというのが乙川さんの意見であることは理解しているつもりです)

あくまで私の基準ですが、
(年齢+ACR)>平均寿命
が、リタイア可能かどうか判断する際の目安になると考えます。

私のリタイア当時のACRは41倍で何とか基準は満たしていましたが、昨年の大幅なマイナスリターンで現在はちょっと不安になるレベルまで下がってきています。それでもリターン4%、インフレ率2%でグラフを描くと、95歳までは持つ計算です。

早期リタイアの決断はかなり大変 - 30歳代からの資産運用~よちよち投資家のブログ - 楽天ブログ(Blog)
特に重要で設定の難しいのは「インフレ率」ですね。
一応2%くらいって思うけど、じゃあそれでいいの?って考えるとやっぱ???

つくづくインフレって重いよなって思うのは、インフレ率2%で平均寿命位をみると生活費が設定額の2倍になります。
今の価値で300万円だと、600万円です。

インフレ率を3%にすると、グラフが地下にもぐっちゃう……ので2%にもどす。
あれこれいじってグラフが動くわけだだけど、何度やってもこれってものがない。

いや、これって思うのは実際あります。だけど、やっぱ不安。
この気持ちわかりますねー。
インフレ率3%にすると確かに破綻します。(笑)
で、思うのは。。。早期リタイアした人って結局「決断」なんだろうなって思う。
そんなの甘いんじゃとか、そんなんだったらリタイアしたくないとか。。。いろいろ突っ込みどころがある。。。でも、それはあたりまえなんだよね。

みんなが満足するような金額って膨大な金額になりそうだよね。
だから、どこかで自分が線を引く。。。ちょっと怖いけどリタイアみたいな決断なんだろうか。。。よくわかんないです。
その通りです。自分なりの「決断」がなければ早期リタイアはできません。
恐怖がないと言えば嘘になります。リスク資産で運用する場合は特に。決断力と同時に、不安への耐性がなければやってられないと思います。

2009年12月6日

『死ぬときに後悔すること25―1000人の死を見届けた終末期医療の専門家が書いた』



良書です。
もし自分が終末期を迎えたら、著者のような専門医に見届けてもらいたいと思いました。
単純な話だが、明日死ぬかもしれないと思って生きてきた人間は、後悔が少ない。明日死ぬかもしれないと思う人間は、限られた生の時間を精一杯生きようとする人間であり、一日一日に最善を尽くそうとする人間である。一期一会を思う人間である。
私の場合、明日死ぬかもしれないという可能性については常に頭の片隅には置いていますが、それに対して何か具体的な備えをしているかと問われれば、ほとんど何もしてないですね。そんなことはまだ考えたくないというのが本音です。
でも30代半ばを過ぎた頃から、「限られた生の時間」を明確に意識するようになったのは確かです。ふと気付けば、そろそろ人生の折り返し地点に差し掛かっているじゃないか、と。早期リタイアをイメージし始めたのも、ちょうどその頃でした。
まあ今の自分なら、万が一明日死ぬことがあってもそれほど後悔することはないだろうと思っています。仮に今でも現役会社員として家と会社を往復する毎日を過ごしていたら、決してそうは思わなかったことでしょう。
ある食品や怪しい医療で「がんが治った話」を純粋に聞いていると、簡単に騙される。世の中そんな甘い話はないのだ。
同感です。
患者やその家族の「わらにもすがりたい」気持ちにつけ込む商法には、くれぐれも引っかからないように注意する必要があります。そのような気持ちは、死期が近いという冷徹な事実を真っすぐに受け入れられないことから生じるものだと思います。そうならないためにも、できるだけ後悔を避ける生き方が望ましいのです。
 我慢し続けて良いことなどこれっぽっちもないと思う。もっとも昨今の若者は我慢が一様に足りないと思うので、あくまで読者のみなさんが40代以上の場合である。
自分勝手の自由ではなく、自らよって立ち、何ものにも束縛されない真の自由に生きる人間は本当に強い。心の部屋に清涼な風が吹き込むように、窓をいっぱいに開けて己がしたいように生きるべきだ。
とにかくいまわの際には、自分に嘘をついて生きてきた人間は、必ず後悔することになろう。
賛同します。

著者の友人の
「結局人は塵になるんですよ、宇宙の塵に。僕はどうしてもそう思ってしまう。一切の幻想を許さないんだ。科学者としての冷徹な目で見てしまうんだよ」
という言葉にも共感しました。
関連記事:
いろいろな意味で面白い内容で、私にとっては久々の「当たり」本でした。 Wikipediaによれば著者は「戦う哲学者」だそうで、たとえば こちらのブログ で引用されているような奇特な行動を積極的に行う様子は、強烈に印象に残ります。世間からは「変人」とか「KY」というレッテルを貼られ...
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