2014年9月4日

『諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉』 為末 大 (著) その2



その1の続きです。

 僕の感覚では、日本人は人生の選択をし始めるのが非常に遅い。大学を卒業する前後の21,2歳ぐらいからやり始めるかどうかも怪しいと思う。それはちょっと遅すぎやしないか。
(中略)
大の大人に「僕はどうして今この会社にいるんでしょう」と真顔で相談されたことがあった。小学生と変わらない世界観のまま、社会人になってしまっているのだ。
私の場合、さすがに大学卒業前には就職先を自分で選択しましたが、一歩間違えればこの相談をした若者のようになっていたかもしれません。何も考えずに選んだ会社が偶然自分に合っていただけのことですから。

なぜこういう傾向があるのかはよくわかりませんが、日本に自己責任論がなかなか根付かないことと無関係ではないような気がします。

日本人は、金メダルやノーベル賞といった既存のランキングを非常に好む。これは他者評価を重んじる、日本人の気質をよく表していると思う。それはそれで目指してもいいとは思うけれど、多くの日本人は、あまりにも人から選ばれようとしずぎてはいないか。人に受け入れてほしいと思いすぎていないか。
同感です。
これが幸福の基準を外に持つ例ですね。良くないことだと思います。
乗り越えるべきハードルの高さが評価者や競争相手次第で変動するのですから、勝つための作戦も複雑になります。一つの評価を手に入れたら、また何か別の他者評価がほしくなったりして、永久に満たされることがないかもしれません。

 本当は欲しかったものがあって、一生懸命がんばったけど手に入らなかった。挫折からうまく立ち直れなかった人が嫉妬に染まる。自分が持っていないものを他人が持っているだけで恨めしい。とにかく幸せそうな他人が羨ましい。でも羨ましいと素直に言えるほど本心をさらけ出す勇気がないものだから、攻撃することで人を引きずり下ろそうとする。
こうした人の根幹には「人と自分が同じである」「同じでないといけない」という平等願望があるのだと思う。犠牲と成果はバランスするという世界観から抜け出られていない。世の中というものが不平等で、不条理だということが受け入れられない。
嫉妬という厄介な感情の発生原因が、見事に表現されていると思います。
やっぱり根幹にある平等主義という考え方からしてロクなもんじゃありません。いつまでもそんな幻想に支配されているから、おかしな感情に突き動かされるんだと思います。

他のどんな感情よりも優先してコントロールすべきもの、それが嫉妬です。

「何も諦めたくない」という姿勢で生きている人たちは、どこか悲愴である。
仕事も諦めない、家庭も諦めない、自分らしさも諦めない。なぜなら幸せになりたいから。でも、こうしたスタンスがかえって幸せを遠ざける原因に見えてしまう。むしろ、何か一つだけ諦めないことをしっかりと決めて、残りのことはどっちでもいいやと割り切ったほうが、幸福感が実現できるような気がする。
同意します。
仕事も家庭もどっちも諦めないというのは、それができたとしても全然幸福そうには見えないですね確かに。背負うものが多すぎて身動き取れないというか。
仕事と家庭の両立なんて、目指すのやめたらどう? - Chikirinの日記に書いてある通りだと思います。

 現代は生き方、働き方にも多様な選択肢がある時代だ。それはとてもいいことだが、すべてを選べるということではない。
そうなんですよね。
で、選ばなかったものについてはきっぱりと諦めるか、やっぱり未練があるから優先順位を変更して選びなおしてみるのか、はっきりしたほうがいいでしょうね。いつまでも未練タラタラなのが一番良くない。

いくら好きなことでも、ノルマが課せられると楽しくなくなる。
(中略)
ご褒美がもらえなくても面白いからやっていたことが、義務として強制された瞬間につまらなくなってしまう。
分かります。
内容の如何に関わらず、義務としてやる会社の仕事のつまらなさときたら…。
アスリートの場合も同じなんですね。

「それをやったら何の得になるんですか」
最近の若い人はよくこんな問いかけをしてくる。
(中略)
「得にならなくても楽しいからやりたいな」という感覚をたくさん味わうことが、自分の軸をつくっていくことにつながる。
これも分かります。
なぜそれをやるのか? に対する答えは「楽しいから」で十分なんですよね。他にも何か理由が必要だとしたら、それ本当は自分にとって楽いことじゃないのかもと疑ってみたほうがいいでしょう。

この本に書いてあった池田清彦さんの言葉を思い出しました。
「私はカミキリムシ集めという趣味をもっているが、最もよくされる質問は『何のために集めているんですか』である。答えは楽しいから集めているに決まっているが、虫集めの趣味のない人にとって、この答えはそもそも理解ができないのである。」

(つづく)

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