2008年9月21日

『「世逃げ」のすすめ』



世間は狂った物差しで人の価値を測っている、だから精神的にそこから逃げ出すことをすすめ、そのためのコツを教えてくれます。けっこう極端なことも言うので、読む人によって好き嫌いがはっきり分かれそうな本です。たとえば、次のような部分は反感を買いやすいと思います。
思うがままにならないことを思うがままにしようとすれば、あなたは他人の失脚を願う品性下劣な人間になってしまいます。見てごらんなさい、あなたの周囲を。全部が全部とは言いませんが、努力して成功した人間に品性下劣な者が多いでしょう。あまり努力しないで、自分の実力か親の七光りで出世した人のほうが、人間性が豊かなようです。努力主義者はどうしてもけち臭くなります。
それでも、私は著者の考え方に概ね共感できました。
世間なんてものは幽霊と同じで、気にする人には世間はあるし、気にしない者には世間なんて実体はないのです。世間を気にすると、われわれは世間に束縛され、奴隷にされてしまいます。
仰る通りです。しかし、このあと
 でも、そうは言っても、わたしたちはどうしても世間が気になります。世間を気にしないためには、相当に強靭な精神が必要です。そんな強靭な精神を持たないわれわれはどうすればよいのでしょうか?
 わたしは、宗教に援軍を求めるべきだと思います。
と来たときは、正直ズッコケそうになりました。いかにも胡散臭いじゃないですか。

でも最後まで読むと、宗教徒になることを勧めているのではないことがわかりました。世間を超越したものの一例として例えば仏の物差しという、もうひとつの物差しを持てと説いているのだけなのです。ここで言う仏の物差しは目盛りのない物差しであり、物を測れない、いや測ってはいけないのです。

このように随所に仏教の話が出てきますが、宗教アレルギーの人でも十分に理解できる内容だと思います。

1 件のコメント:

  1. 楽しく拝読することもあるにはあるんですが、あなたの執筆は著作権法に違反すれすれです。

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