2009年1月30日

『すべての経済はバブルに通じる』



著者は個人投資家として積極的に投資し続ける経済学者とのことですが、本書の内容から察するに、彼が長期投資家ということは無いと思われます。

まえがきで、次のように説きます。
 ねずみ講、これが、お金が殖える理由であり、経済成長がプラスを持続するメカニズムであり、資本主義の本質なのです。
確かに似ているところがあるとはいえ、「本質」と言い切ってしまうには極端すぎる例えだなあと思いました。
 ねずみ講において、出資金が殖えるメカニズムは単純で、次に入会した人の出資金が回ってくるだけのことです。(中略)
株式投資もある意味同じです。ソニー株に投資した人にとっては値上がりすることが重要で、経営がうまくいって収益が伸びるのはいい情報ですが、直接には関係ありません。収益が伸びても、株式市場が悲観一色なら、間違いなく株価は下がっていきます。これでは困ります。全ては、買った値段よりも高く売れるかどうかにかかっています。
ソニーという株式会社の株主には、企業活動が生み出した収益の一部も分配されるという、ねずみ講にはないメリットを受けます。なので、「経営がうまくいって収益が伸びる」のは、関係なくないです。むしろ非常に重要なことです。この観点を無視して、「買った値段よりも高く売れるかどうか」だけを見るあたりも、著者はおそらく短期トレーダーに違いないと思わせる理由のひとつです。

「リスクテイクバブル」のメカニズムや、21世紀型の「キャンサーキャピタリズム」の話には、なるほどと思わせる部分もありました。今後も、増殖した金融資本が少ない投資機会に殺到したり、自ら実体の伴わない投資機会を作り出すことによって、激しいバブルの発生と崩壊が繰り返されるだろうという予測です。まあ、そのような予測が的中したところで、長期投資家としての心構えというのは、今後も大きく変わることはないだろうと思いますが。

4章~6章は、2007年2月の世界同時株安から2008年3月の金融危機の間に起こったことの後講釈で、ほとんど役に立つとは思えないので、お急ぎの読者は読まないほうがいいでしょう。
そして、2008年3月に恐怖の頂点を迎えたのである。
(笑)
バブルも恐慌も、頂点が判明するのは後になってからということですね。

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