著者が主張したかったことのひとつは、
「貧困は自己責任とは限らないので、貧困者を救済するセーフティネットの増強が必要である。」
だと思いますが、本書で取り上げている事例の多くはどう見ても自己責任と思われるものであり、著者の主張を補強するどころか逆に脆弱にしていると感じました。
様々な自称貧困者の証言の一部を抜粋します。
31歳までは都内の工場で正社員として働いていたのですが、パチンコに通うという悪い趣味があり、家賃を滞納して家を追い出されたことをキッカケに会社も辞め、地元に帰りました。
(中略)
もともと金銭感覚がないんですよ。パチンコで勝っても、結局は、そのお金を遊びに使ってしまうんです。だって、毎日仕事ばかりだとやりきれないじゃないですか? だからパチンコに行ったり、スナックに飲みにいったり、仕事がない日はブックオフで買った本を持って、一日ファミレスのドリンクバーで過ごしたり・・・・・・。手元にお金が残ることなんて、結局はなかったですよ。(36歳男性)
就職で大阪に来たんですけど、中古車販売会社の仕事で、ほんま面白くなかったし、たった8人の会社なんです。出会いもないし、給料も安いし・・・・・・手取りは12万円くらいでした。地元の友達で大阪の大学に来てるコがいたんですけど、そのコら見たらほんま、アホらしくなりました。「なんでみんな遊びまくってるのに、自分だけセカセカ働いてんねん」って。結局、1年で辞めましたね。(24歳女性)
偽装離婚したのは、離婚した友人が、結婚していたときより裕福な生活をしているのを見たから。夫婦で相談し、役所に離婚届を出しました。母子家庭になると、母子家庭手当てや児童手当、児童扶養手当など毎月合計7万円くらいもらえる。そのほか、母子寡婦福祉貸付金や、保育料や税金の一部減免、医療費の一部免除などの優遇措置を合わせると、結婚していたときよりも15万円以上、得している計算になる。(35歳女性)
クレジットカードを作ったのがよくなかった。ついショッピング枠を使いすぎ、それを払えないからキャッシング枠から借りて返す、といったことのくり返し。(32歳男性)
同じ大学を出ているのに、こんなに差があるのは情けない。でも、情けない姿を見せたくないから、つい見栄を張ってしまう。みんなと同じようにお金を使えば、給料日までお金がもちません。だから信販会社から借りて、みんなと同じように遊ぶんです。今では3社から借りて、そのツケが120万円。いつ返せるのか、想像もつきません。(26歳男性)このように、呆れてものが言えなくなる事例のオンパレードです。
こんなどうしようもない人たちまでも、現に「貧困」なのだから税金で救済すべきであるという考え方には、私はどうしても賛成することができません。
ワーキングプアや所得格差の問題が盛んにマスコミで報じられているにもかかわらず、日本では、貧困は自己責任だという論調が相変わらず根強い。マスコミの報道に煽られて、著者が主張するような論調が簡単に支持を集めるとしたら、むしろ気味の悪いことだと思います。私は本書を読んだ結果、「貧困は自己責任だ」という思いがいっそう強くなりました。
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いつも読ませていただいております。
返信削除確かにこのエントリーを読んで呆れてものが言えません。これらの事例で貧困は自己責任じゃないと言える著者の神経が理解できません。