2008年12月20日

『株式投資 ~長期投資で成功するための完全ガイド』 読書録 その6

『株式投資 ~長期投資で成功するための完全ガイド』 読書録 その5 の続きです。

 バートン・マルキールは、テクニカル分析を明確に批判した。ベストセラーとなった著書『ウォール街のランダム・ウォーカー』の中で、マルキールは次のように主張した。
テクニカル分析は、20世紀初頭まで遡って、2つの主要取引所の株価データを使って徹底的に検証された。その結果、過去の株価の変動を、将来の値動きを予測するために使うことはできないということが明らかになった。株式市場には記憶はない。テクニカル分析の中心となる命題は完璧に誤っており、その教えに従う投資家は、彼らが支払う仲介手数料が大幅に増えること以上に、何かを成し遂げることはないであろう。
 しかし、かつて学会でほとんど満場一致で支持されたこの主張は崩壊している。最近の計量経済学の研究は、200日移動平均のような単純な売買ルールが、投資利回りを改善する場合があることを示している。
 アカデミックな論争は続いているが、テクニカル分析とトレンド分析は、ウォール街の専門家や経験豊富な投資家からかなりの支持を得ている。本章の分析は、売買コストが高すぎない限り、移動平均を基本とした戦略に対して、慎重ではあるが肯定的である。
このように、本書は長期投資家のための本でありながら、バイ&ホールド以外の戦略についても頭ごなしに否定することなく、バックテストによって有効性を検証してみるという、中立的な姿勢を貫いているのが特徴です。

私が「テクニカル分析」や「トレンド分析」という言葉の響きから感じていた胡散臭さや偏見が、本書によってかなり和らいだことは確かです。

しかし、
 本書を通して繰り返し述べてきたように、過去を利用しようとする投資家の行動は、将来の利回りに変化をもたらす。
バックテストで有効性が検証されたルールも、それを利用しようとする人が増えると有効でなくなるというパラドックスを抱えています。有名なアノマリーの多くが最近はあまり見られなくなっているという事実が、これを物語っています。

さらに、アノマリーの存在を無視する効率的市場仮説でさえも、それを信じて行動する人が多くなりすぎると有効でなくなるというパラドックスを抱えていることに変わりはないわけです。

今後も投資家の悩みが尽きることはなさそうです。

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