2008年10月17日

『フリーズする脳』



脳神経外科専門医の著者が、高次脳機能外来で何千人ものボケていく脳を診てきた経験から、次のことを確信したそうです。
・「脳はボケるようにできている」
・「脳は環境によってつくられている」

現代社会には、年齢を問わず「ボケの予備軍」と言える状態にある人が増えているようで、本当に色々な職業の患者さんの事例が出てきます。

・商談の最中に不意に言葉が出なくなる、人前で話すのが怖くなった証券マン(32歳)
・よく知っているはずの名前が思い出せない、思考がちぎれていく大学教授(58歳)
・PCの前で頻繁に自失する、空回りし、疲弊していくシステムエンジニア(30歳)
・ネット依存的な生活を送っているうちに、物忘れが激しくなった総務部主任(42歳)
・会話の相手が複数になると、話しが聞き取れなくなる、頭に入らなくなる営業マン(29歳)
・転職先の企業で度々思考停止状態に陥るようになったエリートビジネスマン(31歳)
・文章が思い浮かばなくなり、偏執的に見直しを繰り返すフリーライター(37歳)
・上司になった途端、考える力が衰え、仕事ができなくなった元「優秀な部下」(31歳)
・すぐ感情に支配され、頭の中が真っ白になる、元「冷静なキャリアウーマン」(46歳)
・集中力が続かず、空白の時間が増えていく、「勝ち組」志向の司法浪人生(28歳)

若い人の事例が多いのは意外性を強調したいからかもしれませんが、普通に定年退職した60代の人の事例も一件ぐらいは知りたかったです。

リタイア組としてドキっとしたのは、司法浪人生の事例に出てきた次のような指摘です。
人がボケていくときの典型的なパターン
 会社を辞めたということは、やる気の発生源を消してしまっただけでなく、自分を歯車として回転させる環境を失ったことも意味しています。
(中略)
そのうちに意志的・計画的に行動する力が決定的に弱くなってしまい、一日中「好きな音楽を聴いたり、本を読んだり」して過ごすという、感情系の奴隷のような人になっていきます。
「一日中好きなことをして過ごす=感情系の奴隷」という定義だと、私にも当てはまってしまいます(汗)。自覚症状がなかっただけにショックです(苦笑)。

また、次のような指摘もリタイア組がボケないためのヒントになりそうです。
活動はマルチにしておかなければいけない
 脳を上手く使うには、活動をある程度マルチにしておくことが必要です。仕事と趣味を両方熱心にやってきた人が、仕事を辞めて趣味に専念できる環境をつくったら、その趣味に以前ほど魅力を感じなくなってしまったということがあるように、活動をシンプルにすると、その方向に向かうベクトルがどんどん小さくなってしまうということが起こります。
なぜ「仕事は忙しい人に頼め」なのか
(略)
 脳には「基本回転数」とでも呼ぶべきものがあります。単純に頭の回転の速さと解釈していただいてもかまいませんが、この基本回転数を決めているのは、基本的に本人の意志ではなく環境です。環境に忙しさがないと、基本回転数は上がらないと私は考えています。


2 件のコメント:

  1. 三匹のこぶた2008年10月18日 8:04

    はじめまして。遊民さんが紹介する本は興味深い物が多いですが、今回の本は実際に買って読みたいと思いました。
    投資のことから離れて、脳のために実生活を見直す事も大切かも。将来せっかく資産が増えても、ボケて有効に使えなかったら意味がないので…。

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  2. 三匹のこぶたさん、コメントありがとうございます♪お役に立てれば幸いです。
    その通りですね~。私もこの本を読んで、ボケって他人事じゃないんだな、気をつけようって思いました。

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